Remembrance.08
ミルフィーユに突っ込みを入れられ、リオは困ったように頭を掻いた。
「しかしソフィルアも、リオの言っていたとおり強いんだな。武器も無く、体一つであんな大きな魔物を倒すなんて……」
「え?」
ミルフィーユはソフィルアへ顔を向けて、感心しきった様子で彼へ言葉を向ける。それに対してソフィルアは、無表情に「いや……」と曖昧な言葉を返した。
「あはは、ソフィーって照れ屋さんだから、そうやって褒められるとどうしていいのかわかんないんですよ~」
「リ、リオッ!」
慌てるソフィルアとおかしそうに笑うリオ、そんな二人の姿をミルフィーユはほほえましげな表情で見つめた。
何度か砂漠に棲息する魔物との戦闘となり、そのほとんどをミルフィーユとソフィルアの二人で片付けながら、五人は順調に東へ向けて進んでいた。
やがて日が落ちてきたので、砂漠越え初日は近くにオアシスも無いので、アツシの提案で大きな岩場の付近で野宿をすることになる。
日が落ちてだいぶ冷えてきた砂漠の夜、五人は焚いた火を囲む形で、それぞれ毛布を体に巻き付けて体を休めた。
「はぁ、見張りか……」
パチパチと赤く燃える焚火を木の枝で突きながら、ミルフィーユは薄手の毛布に包まり溜息を吐く。
自分以外の四人はそれぞれの形で体を休めているが、ミルフィーユは今夜最初の見張りを頼まれたため、交代の時間まで起きていなくてはならない。一人で火の番と周囲の警戒をするのは少し暇でもあるし、なによりミルフィーユもずっと砂漠を歩いていたために疲れているので、なるべく早く交代の時間にならないかと、彼は燃え盛る炎を見つめながら思った。
(えっと、次の見張りはアツシさんだから……)
ミルフィーユが周囲の気配に気を配りながら炎を眺めていると、ふと隣に身を横たえていたソフィルアが寝返りを打つ。先程から何度も寝返りを打つ彼が気になり、ミルフィーユは思い切って小さな声で話しかけた。
「眠れないのか?」
「……」
ミルフィーユの問いに、ソフィルアが薄く目を開けて彼を見る。薄い桃色の瞳が鋭くこちらに向けられ、ミルフィーユは「寝ておいたほうがいいぞ」とソフィルアへ向けて言った。
「……わかっている」
淡泊な口調で返されたソフィルアの言葉に、ミルフィーユは苦笑しながら「そうだよな」と呟く。そうして彼は少し弱くなった炎の中に、持っていた木の枝を放り込んだ。
「……あ、でも……どうしても寝れないっていうなら、少し話し相手になってくれてもいいんだが……な、なんて」
「は?」
「あ……」
思い付いたようにミルフィーユが言った言葉に、ソフィルアは訝しげな声と視線を彼へ返す。それを受け、ミルフィーユは「あ、いや……冗談です」と弱々しい声で言葉を返した。
「……」
ミルフィーユが黙り込むと、しばらくしてソフィルアは身を起こす。それを見てミルフィーユが疑問の顔を浮かべると、ソフィルアは無表情に「少し眠れなくてな」と答えになっていないような答えを返した。
「……えっと」
「話し、付き合ってやる。暇なんだろう?」
「あ……ど、どうも」
休める時に休んだほうがいいとは思いつつも、ソフィルアが眠れないというならば話し相手になってもらおうと、ミルフィーユは頭を下げた。
「でも、眠れないって……疲れてないのか?」
「……昔から寝付きが悪くてな」
ソフィルアは深く息を吐き、「疲れていないこともないが、眠れないからしかたない」と呟く。それを聞き、ミルフィーユは「そうか」と頷いた。
「まぁ、無理に寝ようと思うと逆に目が冴えてくるしな」
「そう……だな」
ミルフィーユの言葉に、ソフィルアは小さく笑う。それを見て、ミルフィーユも微かに微笑んだ。
そういえばリオとはよく話しをしたが、彼とはあまり話しをしたことがなかったと、ミルフィーユは考える。
普段彼はとても口数が少なく、そして難しい顔をしていることが多いので、ミルフィーユ自身声をかけにくかったのだが、いい機会だしここで色々聞いてみようと、ミルフィーユは質問の為に口を開いた。
「なぁ、ソフィルアっていくつなんだ?」
「……18になったな」
「え!? わ、若いな……」
「そうか?」
雰囲気から何となくもっと年上なのかと思っていたミルフィーユは、ソフィルアの返事に驚く。彼は見た目も正直、自分なんかよりよっぽど大人っぽい……気がする。
「ソフィルアってなんか寡黙で、正直俺やアツシさんなんかよりよっぽど大人っぽく見えたから少し驚いたよ。18なのか」
ミルフィーユが少しへこみながら正直にそう答えると、ソフィルアは複雑な表情を浮かべて「寡黙というか、口下手なだけだがな」と言葉を返した。




