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Endless KILL  作者: ユズリ
Memento mori メメント・モリ
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Life and death 13




結局"マヤ"についての情報や手掛かりは一切掴めないまま、これ以上酒場にいては帰るのが遅くなるという理由で、ミルフィーユとリオはローヴェと別れて酒場を後にした。



「……ざ、残念でしたね。これといって情報、手に入らなくて」


「ん?」


宿屋へ向かう帰路の途中、不意にリオが顔を上げて声をかけてくる。

どうも気を使っている印象を持つ彼女の表情に、ミルフィーユは苦笑いを返して首を横に振った。


「仕方ないさ。それに、そうすぐ有力な情報が手に入るとは思ってないしな」


「そう……ですか」


「あぁ。だから大丈夫だ。……ありがとう」


気を使ってくれたことに対してさりげなく礼を述べると、リオは一瞬驚きの顔をしたあと、すぐに嬉しそうに笑って「いえ」と呟く。

彼女のその笑顔に、ミルフィーユも思わず口元を緩めた。


「……それにしても、さっきの人……ローヴェさん、と言ったか」


「はい、確かそんなお名前でしたね」


相槌を打つリオに、ミルフィーユは前方を見つめたまま言葉を続ける。


「驚いたな。なんだかとても穏やかでいいひとなのに、まさかパンドラを探していて、その目的が『永遠の命が欲しい』だなんてな。……何て言うか、欲とは無縁そうな人だと思ったのに、人は見かけによらないな」


「……そう、ですね」


先程酒場で出会った旅人の話を思い出し、ミルフィーユは些か驚いた表情を浮かべて呟きを漏らす。

彼のその呟きに、リオはどこか冴えない表情で頷いた。


「永遠の命か……そんなの手に入れてどうするんだろうな」


こればかりは考え方や価値観の違いなのだろうが、しかしミルフィーユにはローヴェの言う『永遠の命が欲しい』という願いがどうも理解出来なかった。


記憶喪失のミルフィーユにも、人の命が限りあるものだということはわかる。

それが自然の摂理で、当たり前のことなのだ。

いや、人だけじゃない。命ある生き物は全て、いつの日か必ず死を迎える。

死は必然の行為だから。



「……ミルフィーユさんは、死ぬのが怖くないんですか?」


「え?」


突然リオの口から問いが発せられる。

ミルフィーユが視線を向けると、リオは俯き表情を隠したまま、もう一度口を開いた。


「あの人言ってましたよね、『死ぬのが怖いから永遠の命が欲しい』って。ミルフィーユさんは、死ぬのが怖くないんですか?」


「……」


再び問われ、ミルフィーユは黙したまま考える。


死ぬことなんて、深く考えたことがなかった。

人は自分も含めていつか死ぬということは知っていても、死そのものがどんなものなのか自分にはわからない。

死ぬとは果たして、具体的にどういうことなのか。


「……わからないな」


ミルフィーユが今の自分の考えを素直に口にすると、リオは顔を上げる。


「わからない、ですか?」


「あぁ。……でも、永遠の命が欲しいとは思わないな」


「どうして……」


間を置かずして問われたリオの言葉に、ミルフィーユは歩みを進めながらゆっくりと答えを語る。


「だって、命は限りあるからこそ輝いて意味を持つものだと思うから」


永遠なんて手に入れても、きっと自分は嬉しくない。

人の命は限られているからこそ、一生懸命生きようと思えるんだ。


「永遠を手に入れても、俺は嬉しくない。俺は限りある命を、精一杯生きたいと思うな」


「……」


「それに本で読んだが、人の命は死を迎えても転生というものを果たすんだろう? 死んでもまた、新しい命として蘇るんだって……それはそれで、とても素晴らしいことだと俺は思うしさ。また新しい自分として生まれ変われるのなら、俺はそれでいいよ」


ミルフィーユは自分を真っすぐ見上げるリオを見返して、少し笑って答える。

するとリオはどこか泣きそうに歪む笑顔を見せ、「ミルフィーユさんは強いね」と呟いた。それを聞き、ミルフィーユは眼差しに疑問を宿す。


「リオは、死ぬのが怖いのか?」


「……怖い、かもね。ううん、死そのものよりもボクは、死んだら大切な人と別れてしまうってことが怖いです」


リオは再び顔を伏せ、小さな声でそう答えた。


「大切な人が死んでも、自分が死んでも……そのどちらも、ボクは怖い。ボクは、大切な人と別れるのが怖いんです」


「リオ……」


リオは顔を伏せたまま、静かに恐怖を口にする。彼女の恐怖に、ミルフィーユはかける言葉が見つからず沈黙した。



(大切な人との別れ……確かにそれも一つの、死に対する恐怖だな)


だけど、それでもミルフィーユは"永遠"を手にしたいとは思えなかった。


世界の理に背いてでも、生きたいと自分は思えない。確かに別れは辛いが、それでも……




『私は、私が生きた証を刻みたい。いつか死んでも、私はこんなにも精一杯生きたってこと、この世界に記憶させたい。永遠なんていらないから、ただ私は"生きた"ってことをこの世界に残して死にたいな……』




「……」



今のは、一体誰の言葉だろう。


不意に頭に蘇った、少女の願う言葉。君は、誰?



「……ミルフィーユさん?」


ボーッとしていて、いつの間にかミルフィーユの足は止まっていたらしい。

リオに声をかけられて、立ち止まっていたミルフィーユは我に返った。


「あ、わ、悪い」


「ううん。ボクが変なこと聞いたから、考えていたんでしょう?」


「……」


ミルフィーユが頷くべきかを迷っていると、リオは微苦笑を漏らして「ごめんなさい」と呟く。


「さっきの言葉は気にしないでください。……それより、早く宿屋に戻りましょう」


「あ、あぁ……」


リオに促され、ミルフィーユは動揺を隠して再び歩きだす。

しかし頭の中ではまだ、先程感じた奇妙な記憶についてをひたすらに考えていた。



(……あの子は、一体……)




永遠を望まないと言った彼女は、一体誰なのだろう。






【To Be Continued】

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