Life and death 10
「そうか。あ、二人共酒は?」
「え? いえ、俺酒はちょっと……」
「あ、ボクも苦手で……」
ローヴェの言葉に、二人は揃って申し訳なさそうな表情を浮かべる。しかしローヴェは気にせず笑顔を見せ、「なら果実飲料もあるからそれでもどうだい?」と言って近くにいた店主らしき老人に、彼は柑橘系果実の飲料水を注文した。
「あ、ありがとうございます……」
「いいよ。それよりさ、何か聞きたいことがあったんだよね」
ローヴェは店主から二人分の杯を受け取りながら、ミルフィーユへそう問う。
ミルフィーユは彼から杯を受け取り、「はい」と頷いた。
「なんだい? 僕が答えられるものだったらなんでも答えるよ」
「あぁ、はい……実は俺、人を捜してまして」
「人捜し……かい?」
「はい」
ローヴェから受け取った杯に口を付けながら、ミルフィーユはなるべく上手く説明しようと言葉を慎重に紡いでいく。
「女の子を捜しているんです。そのために俺、旅してるっていうか……それで、その子をどこかで見かけたことないか聞きたくて……」
「……女の子……か。どんな子? なにか特徴とかないかな」
ローヴェは一旦酒杯を置き、ミルフィーユを横目で見ながら優しく問う。
ミルフィーユは頷き、少し考えてから再び口を開いた。
自分の記憶の中に残る少女・マヤ。
彼女はいつも決まって、自分に微笑みを向けてくる。そう、どこか淋しさを宿した笑顔を。
「……金髪の、目は清んだ青で……あ、大きい目です。髪型はショートヘア。顔は……何て言うか、可愛い顔立ちで」
「ふぅん……金髪碧眼の女の子、ねぇ……」
「えぇと、あとは……背はそんなに高くないけど、でも低くもなくて……」
「……その娘は君の恋人かなにかかい?」
「こいびと? ……えっ!? いや、ち、違いますっ! そ、そんなんじゃないですって! 全然、全然!」
ローヴェの口から出た疑問に、ミルフィーユは血相を変えて否定しだす。
彼があまりにも必死に否定するので、それを見たローヴェとリオは控え目ながらも可笑しそうに笑った。
「なっ、なんで笑うんですかっ!」
「いや、ごめん! だって君があまりにも一生懸命否定するから、なんか可笑しくなって……」
「うっ……ていうか、リオまで笑うなよ……」
「あははっ……ごめんさい、ミルフィーユさん。つい……ふっ、あはははっ!」
「あ、あのなぁっ……」
二人が肩を震わせて笑う中、ミルフィーユは一人不機嫌そうな表情で「そんなに笑わなくても……」と小声でぼやく。
「あぁ、本当に悪かったね。……いや、元はといえば僕がおかしなことを聞いたからいけないんだよな。ごめんよ、その飲み物は僕の奢りだから許してくれ」
ローヴェは笑いを抑えると、ミルフィーユに向けて申し訳なさそうな表情を見せる。そして彼の「奢り」という言葉を聞き、途端にミルフィーユは表情を驚きに変えて「そんな、いいですよっ!」と言って首を横に振った。
「はは、いいっていいって」
「でも……」
「そんなことより、さっきの女の子の話だけど……僕はこれでも結構長いこと世界中を一人で旅しているわけだが、しかしさすがに手掛かりが金髪碧眼の美少女ってだけじゃあ君の捜している女の子を見たかどうかははっきりとわからないな」
ミルフィーユの言う"マヤ"の特徴は、はっきり言ってボーダ大陸辺りに行けばそれこそ溢れかえるほど条件の当て嵌まる人種がいる。
まぁその中で"美しい少女"と限定すれば多少数は減るだろうが、それでもミルフィーユが捜すたった一人の少女を特定することは難しい。
「だから、もっと詳しい……そう、本当に一瞬で印象に残るほどの特徴でもないと、厳しい話かもしれないが特定はちょっと難しいな……」
「あ……やっぱりそう、ですよね……」
申し訳なさそうに説明するローヴェの言葉を聞き、ミルフィーユ自身もローヴェが指摘する問題を何となく予想していたために、彼は「やっぱり難しいですよね……」と言って深いため息を吐いた。




