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Endless KILL  作者: ユズリ
Memento mori メメント・モリ
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Life and death 08

夜闇の中でもその存在を強く主張する白銀色の小鳥は、木の枝に止まった状態のまま何度か首を忙しなく動かす。そして小鳥は透き通る蒼の瞳でもう一度男を見遣り、小さなくちばしをゆっくりと動かした。


『冗談じゃなく気をつけろよ。だいたい、ただでさえこの世界は俺たちに厳しい』


小鳥はまるで歌うような口ぶりで、そのくちばしから流暢な人語を発してみせる。

その異様な光景に、しかし男は驚く様子もなく再び言葉を返した。


「なんだ、そっちの心配をしているわけか。……まぁ、ヘマはしねぇよ。それはばれないよう、上手くやるつもりだしな」


『……上手くやるっつーよりも、できれば何もしないでいてほしいんだけどな』


「ヘイヘイ、わかったよ」


繰り返される"注意"の言葉に対し、男は最後だけ普段の彼らしい態度と声音で返事を返す。そうして男は小さく溜息を吐くと、深い茶色の瞳を鋭く細めた。


「で、おまえはさっきからオレに文句ばかりを言ってるわけだが、今お前はこうして"使い魔"を送ってきてるよな? これ、力を使ってるって言わないか?」


『……』


男の指摘に小鳥は一瞬沈黙し、すぐに苦々しい様子を窺わせる声音で『ったく……』と呟く。


『人が心配して様子見に来てやったってのに……わかった、じゃあさっさと消えるよ』


小鳥は表情無く、しかしそのくちばしからはあからさまに不機嫌が滲んだ言葉を吐く。

男は「はは、怒るなよ」と言って、苦笑いを浮かべた。

しかし小鳥は気分を害したのか、もうそれ以上男になにかを言うことはなく、ただ一度だけ小さく羽ばたく仕種をしてみせる。その瞬間白銀色を纏った小鳥は、まるで初めからそんな鳥は存在していなかったかのように、唐突に姿を消した。



「……あいつといいオリハといい、オレの周りはどいつもこいつも心配性ばっかりだな」


静かな夜の中に、男の低い笑い声が響き渡る。

肌寒い夜独特の風が周囲の木々の葉を揺らし、ざわめくような葉音が男の笑い声と重なった。


「でもま、一番の心配性はやっぱあの小僧かな」


笑い、男は重低な声音で呟く。その脳裏に思い浮かぶは、現在共に旅をしている一人の青年の姿。

いつもなにかと自分の行動を心配し、さりげなく非難する彼の姿を思い出し、男は思わず口元を緩める。

やがて男はその心配性の彼をまた心配させるといけないなと考え、あまり遅くならないうちに宿へ戻ることにする。


「しかし随分遠くに来ちまったしなぁ~……やっぱり帰りも"裏技"で帰るとすっか」


男は独り言を漏らしながら、人気の全く無い町外れの山林である周囲を見渡し、おもむろに右手を頭上高くへ掲げる。


「わりぃなレイジ、やっぱりオレに"何もするな"っていう注文は無理だわ」


男は反省した様子はなく、むしろ不敵な笑みを浮かべながら、謝罪の言葉を口にする。

そして歪んだ男の唇は、次の瞬間現代が忘れた古き時代の言葉を紡ぎだした。







………………………………………










酒場の戸をくぐって中に足を踏み入れると、意外と室内は暗いようでミルフィーユは些か驚く。店の雰囲気を出すために、照明は必要最低限に抑えているのだろう。

店内に流れるゆったりとしたリズムの背景音楽と、それとは対照的な賑わいをみせる人々とのギャップが、いかにも夜の酒場らしい雰囲気だなとミルフィーユは思った。



「でさ、ミルフィーユさん……どうするんです?」


「え? ……あ、あぁ、そうか。う~ん……」


"酒場"という普段は足を踏み入れない場所の雰囲気に呑まれていたミルフィーユは、リオの声でハッと我に返り悩みだす。


自分は情報収集がしたいわけだから、まずは誰かに話し掛けなくてはならない。


「……」


しかし声をかけようにも、周囲はすでに酒が大量に入って"できあがっている"人達ばかり。それも冒険者が多いらしく、どの人も見ると屈強な者だったり険しい顔をした人だったり、つまりは話し掛けづらい人種ばかりが見事にそろっている。

それにくわえて、ミルフィーユ自身が初対面の人にそう気軽に声をかけられるような性格の人間ではない。


(……さ、最悪だ)


自分の情けない性格を主に恨みつつ、ミルフィーユは困惑した表情で力無くうなだれた。


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