Life and death 07
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「そういえばさ、ミルフィーユさんは酒場へなにしに行くの?」
「え?」
リオの先導で酒場へと向かうミルフィーユは、道中リオから酒場へ向かう理由を問われて、「そういえば言ってなかったか」と独り言をもらす。
「えっと……実は俺、人を捜していて……」
「人捜し、ですか?」
「あぁ。それで、その捜してる人の目撃情報とかあったらいいなぁなんて思って、それで酒場に行こうかと……」
「へ~」
問いに答えるミルフィーユは、「まぁ、情報が手に入る確立なんて無いに等しそうではあるがな」と言って、少し自嘲気味に笑う。
リオも曖昧な笑みを見せながら、「一体どんな人をさがしているんですか?」と、彼女は重ねて問うた。
「えぇっと……マヤって言う女の子なんだけど」
「……」
ミルフィーユが視線を斜め上にもっていきながら答えると、リオは瞬時に笑みを消して、意味ありげに「マヤさん……ですか」と呟く。
「そう。金髪碧眼の……お世辞じゃなく可愛い顔をした子で……」
自分の中に唯一存在していた少女の記憶を思い出しながら、ミルフィーユは言葉を続けていく。
リオはどこか暗い面持ちで、そんな彼の言葉に耳を傾け続けた。
「あとは……ん~……どんな人間を捜しているか、いざ説明しようとすると意外と難しいものだな……」
"マヤ"という少女についての手がかりは、自分の頭の中の記憶しかない。
説明下手な自分にはたして、彼女についての説明が的確にできるのか、今になってミルフィーユはひどく不安になってきた。
「……と、とにかく、そういう女の子を捜しているんだ」
ミルフィーユは頭の隅に生まれたいや~な予感を振り払うように、必死な様子でリオへそう言葉を向ける。
しかしリオは相変わらず、どこか暗い表情で目を伏せていた。
「……どうした、リオ」
リオの冴えない表情に気づいたミルフィーユは、心配した様子で彼女の顔を覗き込む。するリオは顔を上げ、少し頼りなさげに微笑みながら「なんでもないです」と返した。
「……ならいいんだが」
「うん……ごめんなさい、少し考え事をしていただけです」
「そうか」
まだ少し元気がないような雰囲気のリオを見て、ミルフィーユは少々腑に落ちない顔をしながらも頷く。
「あ、ミルフィーユさん! ほら、あそこがこの街の酒場ですよ!」
「お?」
リオは突然暗い表情を一変させ、またいつもどおりの明るい表情をしながら、前方のなにやら騒がしい賑わいをみせる一軒の店を指差した。
「あぁ、あそこか」
「うん。やっぱり酒場ってのはこの時間になるとどこも賑わいますね」
「……酒場が昼真っから賑わっていたら、それは大問題だと思うけどな」
「あはは、それはたしかに~」
冗談を交えた会話を続けながらも二人の足は、店名が記された大きな木製看板が目立つ酒場へと向かう。
「そういえばアツシさんもどこかに行ってるんだよな。……案外ここにきてたりして」
「かもしれないですね」
リオは笑顔で、一方のミルフィーユは『アツシさんにあったらなんかまた面倒なことに巻き込まれる気がするから会いたくないな~』という素直な心情丸わかりの表情をしながら、二人は酒場の入り口戸に手をかけた。
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月明かりが途切れる。
薄い雲の膜に覆われ、淡い銀光が地上へ降り注ぐのを遮られたのだ。
「……あぁ、大丈夫だよ。……力を使ったのはほんの少しだ。大して影響はない」
静かな夜闇の中に、虫の鳴き声に混じり聞こえる男の声。
普段は陽気な性格を振舞うその声は、しかし今は厳格な人物を想像させる雰囲気の声音となっていた。
「だから心配するな。大丈夫だから、お前はオリハと上手くやってろ。……ああ、わかってる」
再び、月明かりが地上を明るく照らし出す。その光に照らされ、鮮やかな男の金髪は、さらに美しい光を放って風に揺れた。
「いつかあっちに帰るってのは忘れてねぇ。……お前も、力は温存しとけよ。でなきゃ、いつまでたってもあっちに帰れなくなる」
『……なんていうか、お前にだけはいわれたくねぇ台詞だよそれって』
「はは、そうか」
男は苦い表情を含めて笑う。その視線の先には、白銀色をした一羽の小鳥が、近くの木の枝に止まって男を見返していた。




