Life and death 06
リコリスは手を止めて、ソフィルアの言葉を考えるように目を伏せた。
そしてしばらく二人の間に静寂が訪れ、ペンを止めてしまったリコリスに対し、ソフィルアはなんとなく気まずいものを感じて眉を顰める。
「……どうした?」
自分はなにか変な返答でもしたのかと心配になったソフィルアは、思い切ってリコリスへ声をかける。するとリコリスはその呼びかけに反応して顔を上げ、あの暗い瞳でソフィルアの顔をじっと見つめた。
「?」
何か意味ありげなリコリスの視線にソフィルアがたじろぐと、彼女はすぐ彼から視線を外して再びペン先を紙の上へ走らせる。
――リオってどんな人?
「リオ……?」
突然質問の方向性が変わり、ソフィルアは困った表情を浮かべる。
「どんなと言われても……難しい……」
自分は口が達者ではないし、特に何かを説明するというのが苦手な方だ。それを自覚しているソフィルアは、リコリスの質問に対し、「そういうことには、俺は上手く答えられん」と正直な意見を答えた。
なにより自分が下手なことを言って、リコリスにリオという人物を誤解させてしまっても困る。
「ただ、悪いやつではない」
「……」
真摯な眼差しを向けるソフィルアに、リコリスは暗い瞳は変えずに小さく頷いた。
――じゃあ、あなたとリオってどんな関係?
「ま、待て、そんなに俺たちのことを聞いて楽しいのか?」
矢継ぎ早に続くリコリスの質問に、ソフィルアは少々参った様子でそう口を挟む。
するとリコリスは目を丸くし、すぐに別の白紙へペンを向けた。
――人のこと知りたいと思うのは変なこと?
「……」
リコリスの窺う視線が、今彼女が紙へ綴った言葉と同じ意味をソフィルアへ問うていた。
ソフィルアは紙に綴られた文字を見つめたまま、「いや、それは多分正しい感覚だと思う」と、囁くような声音で答える。続けて彼は、先の質問の答えを返した。
「リオとは幼馴染だ」
「……?」
ソフィルアの答えに、リコリスは首を傾げる。
「ん? 幼馴染……知らないのか?」
「……」
リコリスは素直に頷き、ソフィルアへ『教えてほしい』といった意味を込めた眼差しを向ける。
ソフィルアは少し考えた後、「子供の頃からずっと一緒にいる……そういう関係だと言えばいいか?」と答えた。
――それをおさななじみって言うの?
「……だと思うのだが」
ソフィルアは自信無さげに頷いてみせる。それを聞きリコリスは、興味深そうに何度も目を瞬かせた。
「……俺からも、少し聞いていいか?」
「……」
リコリスの質問に答えていくうちに、ソフィルアもまた少し彼女たちについて知りたくなっていた。そのため彼は質問が途切れた今のタイミングで、リコリスへ窺うような視線を向けながら、問いかけのための口を開いた。
「あんたはさっきミルフィーユたちと"探し物"をする旅をしているって答えたが……あんたたちは一体どういう関係でそういう旅をしているんだ?」
ソフィルアの問いかけに、リコリスは真っ直ぐ彼を見つめたまま考える。やがて彼女は何度もペン先を無意味にさ迷わせた後、紙へ彼への答えを一文字ずつ綴りだした。
――ミルフィーユとは森で会った。それから旅をしてる
「……?」
微妙に答えとなってないリコリスの返答に、ソフィルアは眉を顰めながら曖昧に「はぁ……」と頷く。
――アツシとはちょっと前に知り合ったばかり。ミルフィーユは彼に振り回されている。彼とミルフィーユはそういう関係
的確ではあるがなかなかシュールな返答をするリコリスに、ソフィルアはどういう反応をすべきか悩んだ様子で「そ、そうか」と呟いた。
「あー……と、じゃあ……さっき"探し物"してると言っていたが、それは具体的には何なんだ?」
「……」
リコリスの手が動き、しかしそれは何か文字を綴る直前で一旦停止する。
「?」
数秒の間の後、リコリスは再びその手を動かした。
――パンドラ
「……パンドラ?」




