Life and death 05
するとリオが笑顔で「あ、たしかあっちですよ」と言って、歩いていた通りの端を指差した。
「リオ、この街の酒場がどこにあるのか知っていたのか。……もしかして、この街に来たことあるのか?」
「え! あ、ま、まぁ……ははは」
感心した表情を見せるミルフィーユに、リオは曖昧な笑顔を返す。
(いけない……下手に口すべらしたら、ボクがミルフィーユさんたちの後をつけてきたってことがばれちゃう。気をつけなきゃ)
「? どうしたリオ、なんかボーっとして」
ミルフィーユのやさしい笑顔が視界に入り、リオはハッと顔を上げてあわてて首を横に振る。
「な、なんでもないですよ! それよりさ、早く行きましょう!」
「ん? あ、あぁ、そうだな……」
リオに促され、ミルフィーユは少しだけ首を傾げながらも先へ行こうとする彼女に続いた。
-----------------------------------------
「……それで、俺に一体何のようだ?」
ソフィルアは部屋に入るなり椅子に座ることをすすめられ、さらにリコリスはお茶まで用意して彼をもてなす。
「……?」
この奇妙な展開に一体これからなにが始まるのかさっぱり予想出来ず、ソフィルアは静かに緊張していた。
一方彼の向かいに座るリコリスは落ち着いた表情でお茶を一口啜り、先ほどの彼の疑問に答えるために、彼女は用意した紙とペンに手を伸ばした。
――少しあなたと話をしたいと思った。時間があるなら、付き合ってほしい。
「俺と……話?」
丁寧な字で書かれたリコリスの言葉を読み、ソフィルアは不思議そうに眉をひそめる。
「俺と話したいとは、なぜそんないきなり……」
自分たちは互いに先ほど出会ったばかりだし、それに自分と彼女は今の今までまったくと言っていいほど会話もないような関係だった。それなのに突然彼女から『話がしたい』と言い出す理由がソフィルアには全くわからない。
もしかしたら全く接していなかったから、会話をして相手を知りたいという考えなのかもしれないが、しかしはたからリコリスを見ていた様子では、彼女はそんな積極的な行動をするようなタイプにも見えなかった。
「それに話って言われても、俺は口が上手いほうではない。そう面白い話など出来ないが……?」
もはや困惑を通り越して弱り始めるソフィルアの呟きを聞き、リコリスは小さく首を横に振った後、再び紙にペン先を走らせる。
――おもしろい話を聞きたいわけじゃない。ただ私はあなたたち二人のことを知りたかったから、それを聞きたいだけ。
「俺たちのこと……?」
リコリスのまっすぐな眼差しを受け、ソフィルアは目を細めて考える。
「二人というのは、俺とリオのことか?」
「……」
ソフィルアの言葉にリコリスはこくりと頷く。反射的に「なぜ俺たちのことを?」と問うたソフィルアに、リコリスは再びペン先を走らせ答えた。
――ただの好奇心
「……」
迷いなくそう答えたリコリスの瞳が、どこか暗く鋭い色を宿す。
しかしソフィルアがそれに気づくことはなく、彼はただ「そうか」と頷いただけだった。
全く知らない者同士出会ったのならば、誰しも多少は相手のことを知りたいと思うものだろう。そう考えたソフィルアは、リコリスの言葉の意味を深く考えることはせず、「それで具体的には何を聞きたいんだ?」と問う。
リコリスは少し考えた後、新しい白紙を取り出して、またそこに文字を綴った。
――二人は旅してたの?
「ああ、まぁそんなとこだ」
一体どんな質問をされるのかと少し覚悟していたソフィルアだったが、しかし別にリコリスは特殊な質問をしたいわけではないらしい。
いたって普通の質問をされ、ソフィルアは少々呆気にとられた様子を含めながら頷いた。
「お前たちも旅をしているようだな」
「……」
ソフルアも問うと、リコリスは間を置いた後に肯定の意味で頷く。
続けて「なぜ旅を?」とソフィルアが問うと、リコリスは先ほどよりも考えた後、"探し物"という文字を書き綴った。
「さがしもの?」
――あなたたちは、なぜ旅してるの?
"探し物"については深く説明する気がないらしく、リコリスは続けて質問を紙に記す。
「……俺たちは別に、これといって目的のある旅をしているわけではない。ただリオが旅をしたいと言うので、それに俺がついていっているだけだ」
「……」
ソフィルアはティーカップに口をつけながら、考えつつそう答える。




