Life and death 04
ぼそっとソフィルアが呟くと、リコリスはまるで何か閃いたかのような表情で目を輝かせて、勢いよく何度も頷く。
ソフィルアはよくあの動作でミルフィーユの帽子が連想できたなぁと、自分で自分に感心しつつ、「で、ミルフィーユの帽子がどうしたんだ?」とさらにリコリスへ問うた。
「……」
リコリスはまた少し考えた後、何か指を二本突き立てて、ソフィルアへしきりにその二本の指を見せる。
「?」
今までの話の流れから、リオとミルフィーユが二人で外へ出かけた――そうリコリスが説明していると解釈するのが普通かと、ソフィルアは少し首を傾げながら彼女の行動の意味を理解していく。
「……つまり、リオはミルフィーユと共に出かけた……と」
「……」
ソフィルアの呟きに、リコリスはまたもこくこくと首を縦に振った。
何とかリコリスの説明を理解したソフィルアは、少し難しい顔をしながら小さく溜息を吐く。
「勝手に出かけたというのは少し納得いかないが、しかし一人ではないようだし、なによりミルフィーユがついているならば安心……か?」
独り言のようにそう呟きながら、ソフィルアは腕を組み考え込む。
どうやら彼はミルフィーユのことを、先の一件で相当信頼出来る人物だと判断したらしい。
ソフィルアは結局ミルフィーユの存在を理由に、「まぁいいか……」と呟いて、リオの心配をとりあえずやめることにした。
「あぁ、それじゃ色々と聞いて悪かったな」
「……」
ソフィルアは話が終わると、リコリスに背を向けて再び部屋の中へ入ろうとする。しかしそんな彼をリコリスはじっと見つめながら、不意に彼女は右手を伸ばして、彼の服の裾を掴み止めた。
「なっ……」
驚いて足を止め振り返るソフィルアに、リコリスはまだ何かを言いたそうな視線を送る。
「なんだ? なにか俺に用か?」
困惑しつつもソフィルアがそう問うと、リコリスは無表情に大きく首を縦に振る。するとこれはソフィルアも予想外だったためか、彼は「え!?」と少し裏返った声を発して驚いた。
「な、なんだ……? 用と言われても、俺は……」
動揺するソフィルアに、リコリスは口をパクパクと開閉させて、なにやら喋るジェスチャーを見せる。しかしさすがにソフィルアも、彼女が何を言いたいのかわからない。
「?」
するとリコリスはなにを思ったのか、今度は彼を見つめながら自分にあてがわれた部屋の扉を開ける。そして彼女は手招きし、まるでソフィルアに『中に入れ』とでも言うかのような仕草を見せた。
これにより、ソフィルアの困惑は最大限のものとなる。
「え? え?」
彼は普段の仏頂面からは想像できないほどに動揺し、「な、なんだ? なぜ中に?」と言い、目を白黒させながらリコリスを見つめる。
するとリコリスは何故か少し怒ったような表情で、こちらも負けじとソフィルアをじっと見つめ返した。
「……」
しばらく二人の間で、奇妙な睨み合いが続く。
「……」
「……えっと……なんだ、その……」
だが結局ソフィルアが先に折れ、彼は疑問の表情でリコリスに従い、彼女の部屋へ足を踏み入れた。
…………………………………
「あぁ……そういえばボク、ソフィーに何も言わないまま出てきちゃったなぁ~」
日が落ち、街の街灯が鮮やかに輝く街中を歩きながら、リオはふと思い出したようにそう声をあげる。
すると彼女の隣を歩いていたミルフィーユは、心配そうに表情を歪めて「大丈夫なのか?」と口を開いた。
リオは「う~ん」とうなり、少しだけこまったように眉をひそめる。
「多分……でもああ見えてソフィーって心配性だからなぁ~」
「……ああ見えて……ね」
リオの呟きにミルフィーユは思わず、『どっからどう見ても君に対して重度の心配性だよ』と言いかける。
「なんか宿屋でボク捜して暴れてなきゃいいんだけど……」
「あばれ……っ!?」
「あはは、冗談ですよ。多分大丈夫です。ほら、宿にはリコちゃんがいるから、彼女が事情説明してくれると思いますし」
「う、う~ん……大丈夫かなぁ……」
リオよりも心配になってきたミルフィーユだったが、しかし今から事情を話しに宿へ戻るのも少々手間だったので、リオの「平気だと思いますけど」という言葉を信じることにした。
「それにしても、酒場ってのはどのへんにあるんだろうな……」
初めて来た街ではないが、しかし酒場がどこにあるかは知らないために、ミルフィーユはきょろきょろとしきりに周囲を見渡す。




