Life and death 01
『ねぇ、ミルフィーユは"パンドラ"の話を知ってる?』
『パンドラ?』
『そう。なんでもね、願い事を叶えてくれるお宝、なんだって』
『……そんなもの、本当にあるとは思えないなぁ』
『ふふ、ミルフィーユらしいね。でもさ、もし本当にそんなお宝があったのなら、あなたは何を望む?』
『え? ……そうだな、もしそんなものが本当にあったとしたら、俺は……』
俺は一体、何を望むのだろう。
彼女は一体、何を望んだのだろう。
人は一体、何を望むのだろう。
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アサド大陸・エルペターナの街
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「あーぁ、結局なーんも収穫なしかー。ちぇー」
「アツシさん、またそればっかり言って……もういい加減諦めてくださいよ」
遺跡からエルペターナの街へ戻ってきたミルフィーユたち一行。
ミルフィーユ、アツシ、リコリスに加えて、遺跡内で出会ったリオとソフィルアの二人で総勢5人となった一行は、それぞれ疲労したような表情を浮かべながら、夕暮れ時となった街の中を歩いていた。
「だいたい、あんな散々な目にあったんですよ! 生きてるだけでも喜ばないと……」
何故か笑顔でぼやき続けるアツシに、ミルフィーユは少し怒ったような表情を向ける。
ミルフィーユにしてみれば自分は死にかけ、しかし一方であの遺跡に行こうと言い出した張本人であるアツシはほぼ無傷で……何かが非常に納得いかない。
「なのにアツシさんは怪我もなく……なにかおかしい……」
「あはは、そう呪いの目で熱くオレ様を見ないでくれよミルフィーユ君。いやね、それに関してはちょっぴり責任感じて、悪ぃなぁーと思ってる。マジで」
「本当ですかぁ……?」
「本当も本当、超本当よぉ!」
アツシはどう見ても反省しているようには見えない爽やかな笑顔で、ミルフィーユへ「悪いなぁ」と謝罪する。しかしアツシを基本的に信用しないと決めたミルフィーユは、疑念と怨念の混じり合った視線を彼へ返した。
「それにしても、リオちゃんたちも災難だったなー」
アツシはミルフィーユの恨めしそうな視線を無視して、先の遺跡で出会ったばかりの少女・リオへ視線を向ける。
リオはアツシの声に反応して顔を上げ、「そ、そうですね」と言って苦笑いを浮かべた。
「まさかあんなすごい化け物がいるなんて思ってなかったから、驚きました」
「あ、オレもオレも! もーすっげー驚いたぜー。まぁでも、考えてみりゃああんな化け物になんてそうそう出会えねぇよな。そう考えたら、アレもある意味いい経験になったっつーか……」
「……どんだけプラス思考なんですか」
脳天気に笑うアツシに、ミルフィーユは小声で突っ込みを入れる。そうして彼は思い出したように、リオと彼女の隣を歩くソフィルアへ視線を移して口を開いた。
「そういえば、リオたちはこのあとどうするんだ?」
ミルフィーユの問いに、リオは少し考える仕種を見せる。それから「それなんだけど……」と口を開き、彼女はミルフィーユを見返した。
「もう時間も時間ですし、今日は一日この街で泊まろうと思ってるんです。ミルフィーユさんたちは?」
リオが笑顔を見せながら問うと、ミルフィーユよりも先にアツシが口を開く。
「あ、オレたちもその予定。じゃあさ、早速全員で宿屋行こうぜ」
「ちょ、アツシさんまたそんな勝手に……!」
呆れた表情を浮かべたミルフィーユが慌てて口を挟むと、アツシは「いいじゃんか、どうせ今日はもう日が暮れるしオレらも泊まろうぜ」と言って笑った。
「それはいいですけど……ただ、リオたちの意見も聞かずに勝手に話を進めるのはどうかと……」
「あ、ボクらは別にかまわないですよ」
ミルフィーユの言葉を聞いて、リオはそう言ってから隣を歩くソフィルアに「いいよね、ソフィー」と意見を求める。
ソフィルアは仏頂面のまま無言で頷き、それを確認したリオはアツシたちへ、「なんで、こちらこそ宿をご一緒させていただいてもいいですか?」と言って小首を傾げた。
「もちろんオッケーだぜ。いちいち小言が多いミルフィーユ君も、これなら文句ねぇだろ?」
「う……ま、まぁ。……小言が多いとかは、余計なお世話です」




