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Endless KILL  作者: ユズリ
06.LostEDEN ロストエデン
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A wish 14

ミルフィーユは深く考える様子もなく、普段通りの顔で「魔法って、確か……」と呟く。

そして不可解そうな表情を向けるアツシに、ミルフィーユはさらに驚くべき言葉を口にした。


「えっと……そう、FoRtunEhAPYLoVERHearT……だったかな?」


「!?」



ミルフィーユが今口にした言葉、それは普段彼らが使っている共通語などではない。

それとは明らかに異なるその言葉は、魔法を発動する時必要不可欠となる呪文の言葉――古代呪語アンセント・スペル



「え、なに!? 今のってもしかしてレーゼベーナ?」


ミルフィーユが流暢に発してみせた呪文の言葉に、リオは驚きを通り越して呆然としたような表情を見せる。

するとアツシが「間違いない」と言って、彼は何故か険しい顔付きでミルフィーユを見遣った。


「今のは精霊語の古代呪語。……ミルフィーユ、お前なんでそんなもん知ってんだ?」


「え……?」


鋭い視線を向けられて問われたミルフィーユは、明らかに動揺した様子で「なんでって……」と呟く。


「これって変な事なんですか?」


「あぁ、変だな。言ったろ? 魔法は失われし力、過去の時代のもんだ。その言葉を知る者すら、現代じゃ少ない」


きっぱりと否定するアツシに、ミルフィーユはさらなる困惑の表情を顔に浮かべた。


「そんな……そもそも魔法が過去の力だっていう話も、俺には何がなんだか……だって、魔法は」


「?」



"なにか"を口走りかけるミルフィーユだったが、しかし彼はそこでその言葉を中断させる。

そしてミルフィーユは困惑を一層深めて、「あれ……?」と言いながら頭を抱えた。


「いや、違う、魔法は失われた力だ……魔法は……まほう? 記憶を失ったはずの俺は、そもそも魔法なんて知らないはずだ。じゃあなぜ俺は魔法を知ってるんだ? ……魔法って、なんだ?」


脳内に渦巻く困惑と疑問をそのまま口走るミルフィーユの様子に、アツシは何やら嫌な予感を感じて、深刻な顔付きで呟きを漏らす。


「……まずいな」


アツシは以前船の上であった、ミルフィーユの記憶の混乱のことを思い出す。今の彼の様子は、その時の様子ととてもよく似ている。『このままだとミルフィーユは、またあの時のように重度の混乱に陥るかもしれない』という考えが、アツシの脳裏を過ぎった。


そしてアツシは咄嗟に、暴走を始める彼の思考を止めようと動く。


「魔法は一体、いつ失われた……? 俺は……」


「おい、ミル……」


しかしひどく混乱するミルフィーユを止めたのはアツシではなく、別の白く細い手だった。

その手はアツシの手を押しのけ、ミルフィーユの横から伸びる。そして頭を抱えて譫言を呟く彼の顔に手は向かい、左右の頬を挟んで掴み上げた手は、俯く彼を無理矢理正面へと向かせた。


「っ!」


顔を上げさせられたミルフィーユは、その正面に深紅の瞳を見る。


「リコ……リス……」


「……」


ミルフィーユの頬を両手でしっかり挟んだリコリスは、驚愕する彼に怒ったような困ったような微妙な表情を向けて、彼を強く睨んでいた。

それはおそらく彼女自身も、どんな顔をすべきかよくわかっていないからだろう。


「……」


リコリスはミルフィーユと数秒見つめ合った後、突然彼の頬から手を離して、解放したミルフィーユの肩を軽く押しやる。


「り、リコリス……?」


何がなんだかわからないミルフィーユに、しかしリコリスは何も説明する気がないようで、彼女はそのまま彼へ背を向けてアツシの背の影に隠れてしまった。


「?」


首を傾げて「何なんだ?」と問うミルフィーユに、何も言わないリコリスの代わりか、アツシが軽く笑いながら口を開く。


「はは、リコちゃんはお前の心配したんだろうよ」


「え、心配ですか?」


「そーさぁ。……多分」


アツシは何故か得意げに笑って、背後に隠れるリコリスに「な、そうだろ?」と声をかけた。

しかしやはりリコリスは無反応で、ミルフィーユたちに背を向けたまま動かない。


「……」


「うーん、こりゃリコちゃん照れてんだな。ま、何にせよミルフィーユ、お前今度からあんまり深く考えるの禁止な!」


アツシは強い口調でそう言うと、ミルフィーユをビシッと指差して、呆気にとられた表情をする彼へ「いいな!」と念をおした。


「な、何でですか?」


「何でって……お前は深く悩みすぎると、脳みそどっかにトリップさせるから駄目なんだよ!」


「うっ……」


アツシの言うことはわかる。

ミルフィーユ自身も、自分が時折陥る記憶の混乱が場所を弁えないせいで、周りに迷惑をかけているとは理解しているのだ。

しかしわかってはいるが、目の前のアツシの妙に威張った態度は、どうにかならないのだろうか。


「……わかりましたよ」


何故か偉そうに踏ん反り返るアツシの態度が気に入らないも、ミルフィーユは彼の言葉に素直に頷く。


「ん、よろしい。……まぁ、お前がそうやって深く考えたい気持ちはわからないでもねぇが、けどあんまり焦るのもよくねぇと思うしさ」


「……」


アツシは苦笑いを口元に浮かべて、まるで小さな子供に対して行うように、ミルフィーユの頭を軽く撫でる。


「ちょ……」


アツシの子供扱いにミルフィーユは抵抗を示し、彼は「止めてください」と言ってアツシの手を払う。するとアツシは何故か楽しそうに、「うははははっ!」と豪快に笑った。


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