表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Endless KILL  作者: ユズリ
06.LostEDEN ロストエデン
59/253

A wish 12



暗い世界。

明かりの無い、閉鎖された空間。


それがすごく怖いと感じ始めたのはいつだったか。


いや、違う。それが怖いのだと気付き始めたのは、一体いつだったのだろう。


漆黒の闇。その先に続く、一本道。

明かりはあるけれど、でもそれはひどく頼りない小さなもの。

そんなんじゃ、私の不安は拭うことが出来ない。


私は暗闇が嫌いなんだ。

どうしてかわからないけど、先が見えない闇は嫌い。

それが開放された空間じゃないと、余計に怖くなる。


早く地上に出たい。

こんな汚い空気、吸いたくない。

太陽の下で歩きたい。不安になるのは嫌。


この不安の為に、誰か他人に頼るなんて絶対に嫌。

嫌だけど、でも……






「……リコリス?」


「っ!?」


不意に名前を呼ばれ、リコリスは珍しく驚きの表情を浮かべて立ち止まった。

そして驚愕はそのままに、彼女の目は自然と名前を呼んだ人物へ向けられる。


「……」


「あ、いきなり呼んだから驚いたか? いや、悪い……」


声の主は、やはりミルフィーユ。


「なんかぼーっとしてたみたいだから、声をかけたんだ」


アツシたちが先へと進むので、彼らに遅れないよう立ち止まっていた二人も再び歩きだす。

そして会話は途切れることなく続いた。


「また具合でも悪くなったのか?」


「……」


ミルフィーユの声に、リコリスは数秒の間を置いてから首を横に振る。


「そうか……でもここは空気悪いし、気分悪くなっても仕方ないって思うから、そうなったら遠慮せずに言っていいぞ?」


少しだけ無理をした笑みを浮かべ、ミルフィーユはリコリスを気遣うようにそんな言葉を口にする。

しかしリコリスはどう言葉を返せばいいのかわからず、曖昧に首を縦に振るだけだった。

それを少し淋しげな瞳で見つめると、ミルフィーユはもう一度「そうか」と呟く。


「……」


「……それじゃ、アツシさんたちと少し離れてしまったから、ちょっとだけ急いで歩こう」


自分の歩幅にして、10歩程度だろうか。

先頭を歩くアツシと、そしてリオとソフィルアの背中までの距離は、それくらいは開いているとリコリスはぼんやり考えた。

そしてリコリスがそんなことを考えていた直後、ミルフィーユの歩幅が広がり、アツシたちの背中を追って彼は足早に歩きだす。


「!」


自分から急速に離れていくミルフィーユの白い影。

その時リコリスは何故かひどい不安と焦りを感じ、彼女は咄嗟に離れ行くミルフィーユへと左手を伸ばしていた。


「ん?」


右腕を何かに掴まれ、ミルフィーユは驚きながら立ち止まり振り返る。

するとリコリスがいつもの無表情のまま、自分の腕を強く握っていることに彼は気付いた。

その彼女の行動に少なからず驚くも、しかしミルフィーユは優しく問う。


「どうした、リコリス」


「っ……!」


ミルフィーユのその声に反応するかのように、リコリスは深紅の瞳を大きく見開き、そして弾かれたようにミルフィーユの腕から手を放した。


「?」



何故か腕を離して動揺するリコリスの様子に、ミルフィーユはわけがわからず首を傾げる。

しかしすぐに彼は、先程掴まれた右腕を彼女へ差し出し、「ほら、急ごう」と言って優しく笑んだ。

その笑顔に、リコリスは驚いたように目を丸くする。


「暗くて不安なら手繋いでいいからさ、早く行こう」


ミルフィーユの口から自然と零れた言葉は、本当に何気ないもの。

しかしそれと反比例して、その言葉はリコリスの心を大きく揺さ振った。


「……」


先程リオから差し出された右手は、すごく怖かった。

それは自分が、他人をとても恐れて拒絶しているから。


だけど、今差し出された右手は……



「……」


「あぁ、早くしないとアツシさんたちが……」


後ろを振り返りながらミルフィーユが心配そうにぼやくと、その言葉が終わるより先に、リコリスはもう一度彼へと左手を伸ばす。

そして彼女はミルフィーユの手……ではなく、彼の服の裾をしっかりと握りしめた。


「ん?」


「……」


「そこを……掴むのか?」


何だか予想と違ったリコリスの行動に、ミルフィーユは首を傾げながら問う。

するとリコリスは、コクリと頷いた。


「んー……まぁ、いいんだが……」


「おーいっ! 二人共何やってんだ!? 置いてっちまうぞ!」


遠くでアツシの声が聞こえ、ミルフィーユは慌てて振り返り、「今行きますー!」と大声を返す。


「じゃあ行くか。あ、服掴んでてもいいが、破くのだけは勘弁してくれよ」


冗談なのか本気なのかよくわからない笑顔を浮かべながら、ミルフィーユはそう言ってリコリスに「行こう」と促す。


「……」


リコリスは小さく頷きながら、ミルフィーユの服の裾をしっかりと握りしめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ