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Endless KILL  作者: ユズリ
06.LostEDEN ロストエデン
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A wish 02

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アサド大陸・エルペターナの街

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「えっと、薬関係も買ったし、携帯食料も大丈夫だし……」


もうすっかり祭の賑やかさを無くしていつもの日常風景を取り戻したエルペターナの街中を、ミルフィーユは買い物袋と紙のメモを手にブツブツ呟きを漏らしながら歩いていた。

その僅か斜め後ろでは、いつも通りのポーカーフェイスで、リコリスが彼の後を着いて歩いている。


「アツシさんに頼まれた買い物はこれくらいか?」


ミルフィーユは顔を後方へ向けて、後ろを歩くリコリスに問い掛けた。

するとリコリスは僅かに視線を上に上げて、視線の合ったミルフィーユに小さく頷いてみせる。


「そうか」


リコリスが頷いたのを見て、ミルフィーユは少し頬を緩める。そして彼は微笑み、「それじゃあ少し寄り道してからアツシさんの所へ戻ろう」と彼女へ言った。


「?」


キョトンとした表情で首を傾げるリコリスに、ミルフィーユは微笑んだまま「甘いものって好きか?」と問う。

リコリスは視線を斜め上に向けた後、数秒考えて首を縦に振った。


「そうか。じゃあよかった」


「……」


「さっきこの近くにクレープの屋台を見つけたんだ。甘いもの好きだったら、俺が買ってあげるから食べに行こう」


微笑むミルフィーユの提案に、リコリスは目を丸くして立ち止まる。


「まだ時間もあるし……って、あれ? どうした、リコリス」


ミルフィーユも立ち止まり、彼は表情を心配そうなものへと変えて「あ、お腹空いてないか?」と問う。

その言葉にリコリスはすぐに首を横に振り、今度は小走りに駆けて彼の隣に並んだ。


「……」


そして無言のままじっと自分を見つめてくるリコリスに、一瞬ほうけていたミルフィーユはすぐに彼女の意を解して「あぁ」と言って彼女に微笑む。


「えっと……確かこの先を右に曲がった辺りの通りにあったんだ、そのクレープの屋台。早速行こう」


「……」


本当に僅か、コクリとリコリスは頷く。それを見たミルフィーユはさらに口元を緩め、「あっちだ」と言いながら商店の並ぶ通りを歩きだした。





アサド大陸・エルペターナの街へと着いた日、リコリスに一体何があったか分からぬままその後数日を街で過ごしたミルフィーユたち。

それはリコリスを気遣ったアツシの提案だったのだが、しかし数日もするとリコリスも落ち着きを取り戻して、普通に街の中を歩くようになった。

しかしまだ一人で歩き回るのは不安らしく、今はもっぱらミルフィーユの後を着いていくように、彼と行動を共にしていた。

ミルフィーユにしてみれば、アツシに「今後はリコちゃんと一緒にいるように」と言われていたのでそれは全然構わないし、それに彼女とは一時理由も分からず微妙な仲となっていたので、今のように彼女との仲がこんな形とはいえど元通りになったことは単純に嬉しい。


しかしあの日の夜リコリスに一体何があったのか、気にならないと言ったらそれは嘘になる。

けれどもリコリスは何も語らないし、アツシも彼女にそのことを問う様子はない。




(……ってことはやっぱり聞いちゃまずいことなんだろうな)


クレープ屋の屋台を見つけながら、ミルフィーユはそんなことを考えつつリコリスを連れて屋台へ向かう。



「いらっしゃいませ」


屋台の若いお兄さんに笑顔に小さく会釈を返した後、ミルフィーユはリコリスへ「なにが食べたい?」と問う。するとリコリスは店のメニューが書き出された紙を真剣に眺めながら、しばらくしてミルフィーユの方へ顔を向けながらメニューを指差した。


「アーモンドチョコレート……と、生クリーム……」


メニューを読み上げただけで、甘いものが得意ではないミルフィーユは軽い胸やけを感じてしまう。しかしリコリスはそれがいいと主張しているので、「じゃあそれを一つ下さい」と彼は注文を告げた。


「ありがとうございます。……お兄さんは?」


「え? あ、俺はいいです」


ミルフィーユは店のお兄さんの言葉に小さく苦笑を返しながら答え、そして彼は手際よく作られていくクレープを感心仕切ったように眺める。


やがてあっという間に作られたクレープを硬貨を支払って受け取り、ミルフィーユは受け取ったクレープをリコリスへ「はい」と手渡した。

リコリスはクレープを受け取ると、ミルフィーユに小さく頭を下げて早速クレープを一口かじる。


「美味しいか?」


「……」


再びコクリと頷くリコリスに、ミルフィーユは生クリームとチョコレートの共演という最強に甘い組み合わせを食べる彼女に、思わず感心の念を抱いて「そうか……」と呟いた。

 

やがてミルフィーユと、クレープを食べながらのリコリスは共に歩きだす。



リコリスがまだ少し元気では無い様子を見せる時があったので、どうしたら元気になるか疑問に思ったミルフィーユは『甘いものを食べたら元気になる』ということをアツシから聞く。

そうして彼はリコリスが元気になってくれたらいいなと思って、アツシの言葉を参考にクレープ屋の屋台を見つけて彼女を連れていったのだが、隣で美味しそうに黙々とクレープを食べる彼女の姿を見てると、どうやらアツシの言っていたことは正しかったんだなと思うと同時に少し嬉しくなる。



(……でもなんかこういう状況、不思議と懐かしいんだよな……)


隣に並んで、甘いものを食べる彼女を見守る。

初めてのことの筈なのに、そうとは思えない感覚。


リコリスと一緒にいると、時々そんな感覚を覚えることがある。


「……」


ミルフィーユはいつの間にか微笑みを消して、何が考え込むようにリコリスの横顔を見つめる。

するとその視線に気付いたリコリスはクレープを食べていた手を止めて、不思議そうに眉を寄せてミルフィーユを見返した。そして何がを思った彼女は、食べかけのクレープをミルフィーユへ向けて差し出す。

どうやらミルフィーユの視線を「クレープが食べたい」と勘違いしたらしい彼女の気遣いに、ミルフィーユはハッとしながら「あ、違う! そうじゃないんだ! 気にしないでくれ」と慌てて否定を口にした。

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