A wish 01
たとえば、この世界が自分の望む楽園だったとして
果たしてそれは、万人の望む楽園になりうるだろうか。
逆に多くの人が望む楽園の定義というのは、一体何なのだろう。
”平等な世界”
”争いの無い世界”
”誰もが幸福な世界”
”豊かな世界”
人の欲望にはきりがない。
だから万人の望む楽園を造ろうとすれば、それはきっと楽園にはならない。
そもそも、楽園とは一体何なのだろう。
『みんなが幸せな世界のこと、じゃないかな?』
……みんなが幸せな世界なんて有り得ない。
幸せの裏には、不幸が必ず存在するんだから。
『でも、そんな世界を夢見てもいいと思うの』
夢見る?
それには一体、何の意味があるんだ?
『……私はね、少しだけ心が暖かくなるよ? みんなが幸せな世界を想像して、私は幸せな気持ちになれる……』
……君の望む楽園は、みんなが幸せな世界なんだな。
『そう、だね。私が望む楽園こそが、みんなが幸せな世界……だね』
君らしいな。
『私らしい? ……そっか、私らしいんだ。……へへっ』
あぁ。他人の幸せを一番に考えるところが君らしいよ。
『……それは違うよ。だって周りの誰かが笑っていると、私も自然と笑顔になる。誰かが幸せになると、私も幸せになるの。だから、結局は自分の為だよ』
……。
『みんなの幸せが、私の幸せ。きっときれいごとだとかって言われるだろうけど、本当に私はそれ以外の幸せが思い付かない……』
でも、それでいいんじゃないか? それが君の望む楽園なら、そう俺は記憶するよ。
『あ、りがとう。……あなたは?』
俺?
『うん。あなたが望む、楽園……なに?』
……何だろうな。
彼女がかつて言っていた、自分が望む世界の形。それは”皆が幸せな世界”
それは俺も、確かに望む。
だけど俺は心のどこかで、そんな世界は有り得ないと否定している。
でもきっとあの時の彼女も、それを理解していたのだろう。
だからあの時の彼女は、とても淋しげな瞳で微笑んでいたんだと思う。
誰もが望む、楽園。
それは定義することが困難ならば、それを実現しようとすることはもっと困難だろう。
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