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Endless KILL  作者: ユズリ
05.Twilight トワイライト
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The Cage of Dreams 08

ひどく心配そうに顔を覗き込むアツシに、ミルフィーユは強く目を閉じて首を横に振る。


「俺……っ」


自分はさっき、なんだかとても恐ろしい事を思い出していた気がする……ミルフィーユは自分の肩を抱きしめ、止まらない震えを止めようと両手に力を込めた。


(俺は今、一体なにを思い出していたんだ……?)


顔色悪く俯くミルフィーユの姿を見て、さすがに彼の体調を不安に思ったアツシは

「ミルフィーユ、お前も体調よくねぇなら部屋で休んでろよ」

と言って、震える彼の肩に手を触れる。

ミルフィーユは顔を上げ、随分と頼りない弱々しい声で「いえ……」とアツシの言葉を拒否した。


「大丈夫です、もう」


「……お前もリコちゃんも、『大丈夫』か……とてもそうにゃ見えねぇのにな」


アツシの呆れたような声が、ミルフィーユの頭上から降ってくる。

アツシは深いため息をつき、額に手をあてて辛そうにうなだれるミルフィーユに近づいた。そして彼は素早い動作でミルフィーユの脇腹に腕を伸ばし、突如うなだれるミルフィーユの体を抱え上げた。


「んなぁっ!?」


突然傾く視界と、浮遊する体。

ミルフィーユは目を丸くしながら素っ頓狂な悲鳴をあげた。


「なななななにすんですがアツシさん! お、おろし……」


大の男が何故か、同じく大の男の肩に抱え上げられている。この状況の奇妙さと、周囲の好奇の視線を気にしたミルフィーユが、青ざめた顔で「降ろせーっ!」と半狂乱気味に叫ぶ。

対してアツシは涼しい顔でミルフィーユを抱え、愉快そうに口元に笑みを浮かべた。


「だーめだ。お前も部屋でちょっと休んでろ。オレが部屋に放り込んでやるから」


「なら自分で歩いていきます! だから降ろしてくださいぃぃっ!」


「ホントかぁ?」


「ホント、ホントです! カミサマにでもなんでも誓いますからぁっ!」


羞恥に混乱するミルフィーユが絶叫すると、アツシは「なーら降ろしてやるよ」と言い、暴れるミルフィーユを甲板床へと降ろした。


「アツシさん、なにをいきなりっ……!」


解放されたミルフィーユは、まだ半分混乱する頭でアツシを睨みつける。しかしアツシは激怒するミルフィーユの怒りを綺麗に無視し、涼しい顔で「ほら、さっき誓ったんだからさっさと部屋へ行け」と彼に告げた。


「あ、あのですねぇアツシさんっ! 話はまだ……っ」


「うるせーなー、具合わりぃなら医者の指示にはしっかり従っておけよ。それともなんだ? やっぱり部屋まで歩く元気ねぇからオレに運んでもらいてぇのか?」


「ひいぃっ!」


ニマーッとアツシの口元が半月に歪む。

悪魔の笑顔が向けられ、恐怖にミルフィーユは半泣きで「部屋に行けばいいんでしょう、行けばぁっ!」と叫ぶ。これ以上アツシに遊ばれて恥をかかされてたまるかと、半泣きのままミルフィーユは部屋へ向けて駆け出した。


「おーおー走るなんて元気だねぇー」


あの様子なら多少休めば彼は大丈夫かとアツシは口元を緩め、ミルフィーユの姿が完全に見えなくなったのを確認する。そうして彼は軽く肩を回しながら、頭上に広がる青と白のコントラストを見上げて呟いた。


「……さて、じゃあオレは少しばかりリコちゃんの様子でも見てくるかな」



◇◆◇◆◇◆




「おーい、リコちゃん生きてまっすかぁー?」


リコリスに宛がわれた船の客室前で、アツシは扉を軽くノックしつつ「おーい」ともう一度中に向けて呼び掛ける。しかし中からの反応は一切無い。


「リコちゃーん、もしかして寝てるー?」


一向に反応を見せない室内の様子に、アツシは「寝てんのかな?」と呟く。寝ているのなら邪魔をしちゃいけないと思い、彼は来た道を戻ろうと踵を返した。


「……ん?」


しかし戻りかけたアツシの耳に、ギィ……という扉の軋む音が聞こえてくる。


「なんだ?」


振り返ったアツシが、もう一度リコリスの部屋のドアへと視線を向ける。すると彼女の部屋の扉が、微かに開いているのが見て伺えた。たがしかし、扉の奥にリコリスの姿は見えない。どうやら扉は、風かなにかで勝手に開いたようで。


「……鍵、かかってなかったってことか?」


好奇心からアツシは恐る恐る扉を押し開け、彼はまるで不審者の如く、極力物音を立てぬよう慎重な足どりで室内へと足を踏み入れた。


「超ごめんねリコちゃん、勝手にお邪魔しまぁーす」


何となく沸き上がった好奇心のままに中へとズカズカ足を踏み入れたアツシは、小声で適当に謝りながらさらに室内の奥へと突き進んでいく。しかし奥へ行ってもやはりリコリスの姿はなく、室内の最奥にポツンと置かれたベッドも、白いシーツが綺麗なままとなっていた。


「リコちゃん、寝てなかったのか……?」


しわ一つ無いベッドのシーツにアツシは首を捻り、一体彼女はどこに行ったんだろうと周囲を見渡す。


体調が悪そうだったのに、休みもしないで船内をうろついていたら少し心配だ。

「まいったな……」とアツシは頭を掻き、困ったように彼は苦い表情を浮かべた。


「船内勝手にうろついて、どっかで倒れてたりしたら心配だしなぁ……」


そうぼやきながら、アツシは何気なく部屋の中央に置かれたテーブルへと視線を向ける。

中央の丸テーブルの上には、リコリスが普段いつも身につけている革製の茶色いポーチが置かれていた。さらに、半分ほど蓋が開いたポーチの中からはいくつかの薬品瓶が出ていて、それらはテーブルの上に無造作に転がっていた。

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