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Endless KILL  作者: ユズリ
04.Fragment フラグメント
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The days when I forgot it 01

懐かしい、声がしたんだ。



『ほら、ミルフィーユ! あっちの売店まで競走しよ?』


『……は? な、なんで』


『うわ、相変わらずやる気ねぇ態度~……もぉ~、やろってばぁっ!』


『だから、なんでいきなり競走なんて……』


『いいじゃん、あたしがやりたいって思ったから! ついでに勝ったほうに売店で1番人気のオムそばパンを奢るって素敵ルールです!』


『……』


『は~い、それじゃミルフィーユ君も納得の脱力顔なんでさっそく競走スタート!』


『お、おい! ちょっとまて……』


『あははははははっ!』


『待てって、――……っ!』





そう、声が聞こえたんだ。


あれはきっと、俺が遠い昔に忘れてきた大切な……




◆◇◆◇◆◇



・・・・・・・・・・・

Main Continent VODA.

States of MARX.

Castle town Koorook.

ボーダ大陸西・マルクス国

王都クールーク

・・・・・・・・・・・



柔らかな磯の香る都・クールーク。

ボーダ大陸の西に存在する凍てついた海・エプト海域、その海域にマルクス国の半分が面しているため、国内でも海に近づくほど風に乗って流れてくる磯の香りが濃くなる。マルクス国の王都クールークはマルクスの最西に位置してエプト海域に直接面しているため、そこから常に海の匂いが流れてくる。

その匂いに包まれた白煉瓦の町並みを見つめながら、ミルフィーユは紫電の瞳を大きく見開いた。


「これはまた……賑やかな所だな……」


世話しなく行き交う人込みの中で、ミルフィーユは立ち止まりながら驚きと感心を半々に込めて呟く。すると隣でリコリスが彼の服の袖を引き、人込みの中央で立ち止まるミルフィーユを通行の邪魔にならない場所まで誘導する。


「あ、悪い……」


「……」


人の行き交いが少ない路地裏の入口辺りに誘導され、ミルフィーユは頭を掻きながらリコリスに礼を述べる。

あまりの人の多さに圧倒されて呆けていたミルフィーユだが、たしかに通路のど真ん中で立ち止まったのはまずかったと彼は反省した。するとリコリスは黙って首を横に振り、なんでもないという表情をミルフィーユに向ける。


「……にしても、すごい人だな。王都ってのはみんなこんなに人が多いのだろうか?」


クールークの白を基調とした煉瓦造りの町並みは、先日立ち寄ったリスティンの街にとても酷似していた。だがリスティンと違うのは、クールークが王都ということもあり、街中に人が溢れんばかりにいる。商店街の方なんかは、歩くのがやっとというほどの賑わいだった。

時折鼻先に感じる磯の香りと帆船の船員が街中を頻繁に歩いているから察するに、どうやらこのクールークには港もあるらしい。だから余計人の出入りが激しく、混雑しているのだろう。


ひたすら感心しながらミルフィーユが人の波を眺めていると、隣でリコリスが腰のポーチの中を漁りだす。


そしてリコリスはポーチから小さなメモとペンを取り出し、彼女はメモ用紙になにやら文字を書き始めた。


「……ん?」


突然肩を叩かれ、ミルフィーユはリコリスへと振り向く。

するとリコリスは先程なにかを書き記したメモ用紙をミルフィーユへ見せた。


「?」


ミルフィーユは首を傾げつつ、彼女の見せるメモの文字を目で追った。


「……はやく右手、医者に診てもらわなきゃいけない……?」


「……」


メモの文字を朗読すると、リコリスは無表情に大きく頷く。

そこで初めてミルフィーユは「あぁ!」と声をあげ、自分の右腕へ視線を向けた。そこには先日森でリコリスを助ける為に負傷し、彼女によって薬草で応急処置された右腕があった。


「そういえば、これをなんとかしなくてはいけないな……」


白い布でぐるぐる巻きにされた右腕を僅かにかかげ、ミルフィーユは軽く腕を振って苦笑いを浮かべる。

リコリスの適切な処置のお陰かたいした痛みもなく、傷口が化膿するようなこともなかった。

しかし一応ちゃんとした治療を受けたほうがいいと強くリコリスが言うので、ミルフィーユは「王都に着いたらまず腕の怪我を診てもらおうか」と彼女に言っていたのだ。


「それじゃあ、怪我人を診てくれるとことか捜さなきゃな……」


「……」


せわしない人込みをキョロキョロと見渡しながらミルフィーユが呟く。するとリコリスはなにやらまちメモに文字を走らせ、それを再びミルフィーユへ見せる。


――大きな都だから、診療所すぐ見つかると思う。人に聞いたほうが、もっと早く見つかるかも。


「……うん、そうだな」


リコリスの綴る言葉に、ミルフィーユは微かに照れたような笑みを浮かべる。

森でリコリスを助けて以来、彼女が自分と積極的に会話しようとしている姿勢がミルフィーユには感じられた。そしてそれが、彼にはとても嬉しいもので。


「じゃあ、誰か親切そうな人に聞いてみるよ」


ミルフィーユがそう告げると、リコリスは再び大きく頷いた。



◆◇◆◇◆◇


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