pain 05
リコリスは一呼吸置いて頷き、それを見てミルフィーユは「それは心強いな」と微笑んだ。
「……」
「それじゃ、そろそろ戻ろう。それで軽く朝食でもとって、早くクールークへ向かってこの腕をなんとかしてもらわなきゃな……」
ミルフィーユはそう言うと、リコリスに応急処置してもらった右腕を僅かに掲げた。
どうやら先程バウンドウルフと戦ってミルフィーユは気付いたのだが、自分は不思議と戦い方を知っているようだった。それは過去の自分の経験として、予め体に染み付いているのからなのかどうかはわからないが、剣も持っていることだし多少のことなら自分の身と、それとリコリス一人くらいなら守って戦えそうだということがわかった。
しかし腕が片方使えないのは、少しまずい。一応左でも戦えないことはないが、ミルフィーユの利き腕は右だ。
「……」
リコリスは数回目をしばたかせ、やがて深々と頷く。
それを確認し、ミルフィーユは「よし」と一声かけて立ち上がった。
同様にリコリスも立ち上がり、背を向けて歩きだすミルフィーユに続く。
数分後、二人はマルクス国最大の都・クールークへと向けて旅を再開させた。
◇◆◇◆◇◆
「ミルフィーユはちゃんと旅、してるみたいだよ」
少女の声が、静かに告げる。
「……へぇ、そう」
少年の声が、短く言葉を返した。
青銀という珍しい色の髪を軽く掻き上げながら、少女は街角のすでに廃墟となった民家の玄関先に座り込んでいた。
街の大通りの裏に位置するこの場所には、彼女以外の人影は一切見当たらない。
太陽の光だけが煌々と降り注ぎ、異質な明るさをもった一角。
「じゃあボクはこのまま、彼を監視するから」
少女は低い声で、誰もいない空間に言葉を投げ掛けた。
「あぁ、よろしく」
だが、再度少年の声が何処からともなく響き、少女へと返事をする。
不思議がる様子もなく、返事を聞いた少女は素早く立ち上がった。
「じゃあ、これで。……そろそろソフィーが探しにくるから」
「あぁ。バイバイ、リオ」
姿無き少年の声に最後は応えることなく、リオは無言で廃墟のわきを抜けて立ち去る。
無人のはずの空間に、少年の微かな笑い声が不気味に響いた。
【To Be Continued】




