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Endless KILL  作者: ユズリ
02.Monochrome モノクローム
12/253

A requiem 07


「……」


リコリスは無表情を崩すことなく、こちらを見つめるミルフィーユを見返す。突然振り返ってこちらを見る彼に、僅かばかりの疑問を感じてはいたが、それでもリコリスは感情の無い瞳でミルフィーユの反応を待った。


”ここは堕ちた 偽りの楽園”


「……リコリス」


「……」


自分の名付けた名で、ミルフィーユは目の前に立つ女性の名を呼ぶ。彼女は小さく首を傾げて、そして彼の言葉の続きを待った。


真っ直ぐにリコリスを見つめるミルフィーユの瞳が、疑問から何かを確認するかのようなものへと変化する。


「お前……」


”たった一人”


”貴女の想いだけが真実で愛”


「……」


ミルフィーユとリコリスは、互いに視線をそらすことなく対峙していた。まるでお互いの心の中を覗き込もうとするかのように、二人は直線的に視線を交わし合う。


ミルフィーユはリコリスの紅玉の瞳を見つめながら、やがて小さく唇を動かしてなにかを呟いた。


「――……」


しかし彼のその呟きに、音は伴わない。

ただ唇だけが、無音で何かを語っていた。


リコリスはそんな彼の呟きに、一瞬眉をひそめた。

彼女にミルフィーユの呟きは伝わる事なく、やがてミルフィーユは「いや……やっぱり何でもない」と、大きく首を横に振って何かを否定した。


「……?」


ますますリコリスは不思議そうに眉をひそめる。

ミルフィーユは小さな苦笑を浮かべて

「気にしないでくれ。俺の勘違いだ」

そう言って、再び彼は前へと向き直って歩き出した。

一方的に完結された話に、腑に落ちないリコリスはしばらく考え込むように立ち尽くす。

ミルフィーユとリコリス、二人の距離が少しずつ離れていった。


リコリスは光の無い暗い瞳で、ミルフィーユの後ろ姿を見つめた。


二人の距離が歩幅七歩ほど離れた時、ついてくる気配の無いリコリスに気付いて、ミルフィーユが足を止め振り返った。


「……来ないのか?」


「……」


不思議そうに、しかし優しく問うミルフィーユ。

リコリスは暗い瞳で暫くミルフィーユを見返しながら、やがてゆっくりと頷いた。

そして彼女は一歩を踏み出し、ミルフィーユとの距離を再び縮めていく。

それを確認して、ミルフィーユもまた再び前を向いて歩き出した。


ミルフィーユとリコリスはそのまま、ゆっくりとした歩幅で街の中心へと戻っていく。

風と共に運ばれてくる鎮魂歌、それに導かれるように二人は道を進んだ。



(……気のせいだよな)


ゆったりとした鎮魂歌を耳にしながら、ミルフィーユは"聖女"の像を脳裏に思い浮かべる。


人々の祈りの対象であり、"聖女"と崇められる女性・アリア。

美しく、そして気高い彼女の姿。生命力すら感じられる、おそらく生前の彼女を生き写した石造りの像。

けれども彫像の瞳だけは優しげながら、光無く暗い影が宿っていた。


聖女像を思い浮かべながら、そのまま彼は思考する。

それは先程、彼の脳裏に閃いたある考え。


(あれ……リコリスに似てる気がした……)


さっきまで遠くで聞こえていた歌声が、いつの間にかすぐ近くに聞こえ始めていた。


(……だけど……やっぱり気のせいだろう)


ミルフィーユは先程の考えを、直ぐにまた否定した。

そして自分に言い聞かせるように、「馬鹿らしい」と小声で呟く。

流れてくる弔いの歌声を聴きながら、彼は静かに天を仰いだ。



【To Be Continued】

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