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Endless KILL  作者: ユズリ
09.aria アリア
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Dear 01

私は彼女を知らない。彼のことも、よく知らない。



『……アリア?』


いつかにミルフィーユの口から聞いた、その名前。彼は記憶が無いと言っていた。だけど彼は、私を見てその名を呼んだ。まるで彼女を知っているかのような口調で、私の顔を見て、その名を呼んだ。


私はアリアを知らない。彼女のことは人々には聖女と呼ばれていたとか、不思議な力で傷ついた人を癒したとか、そのくらいの噂しか知らない。だけど彼女の名前を呼んだミルフィーユは、もしかして彼女のことを知っているのだろうか。


ミルフィーユの口からその名を聞いた時、何故だかわからないけどすごく胸が苦しくなって、頭の中がぐちゃぐちゃになって、そして理由はわからないけれども怒りが込み上げた。多分、嫉妬したんだと思う。何故嫉妬したのかはわからないけれど、ミルフィーユが彼女の名を呼んだことが不思議と悔しくて悲しくて、それでその後は八つ当たりみたいに私はミルフィーユを拒絶してしまった。あの時は悪いことをしてしまったと思う。今はもう、彼に対してあんなことは絶対にしない。


今の私はミルフィーユにすごく興味があるから、もっと彼と一緒にいたいと思うし、彼のことをもっともっと知りたいと思ってる。

たとえば、ミルフィーユは記憶を失って森の中で一人倒れていた。それ以前の彼のこと、記憶を失う前の彼のことを、私は知りたいと思ってる。

今のミルフィーユは優しくて、甘いものを買ってくれて、私のことをいつも心配してくれて、アツシさんにからかわれるとちょっと怒る、そんな人。じゃあ昔の彼はどんな人だったんだろう、そう思うから知りたい。


他人に自分の過去を知られるのは嫌なことかもしれないけど、でももっと彼のことを知りたいからそれを彼の口から聞きたいし、だからミルフィーユには記憶が戻ってほしいと心から願ってる。

そしてもし記憶が戻ったら、できたら教えてほしい。ほんの少しでもいいから、彼に自分のことを話してもらいたい。そしたら私も、私自身のことを話せる勇気が出ると思うから。だから……





◇◇◇





俺は何も知らない。いや、知っていたのかもしれないが、まだ俺はそれを思い出せないでいる。


この世界のことも、マヤという少女のことも、聖女と呼ばれた女の子のことも、自分自身のことも……俺は様々なことを知っていたような気がするのだが、何一つ思い出せない。

それに、リコリス。彼女にも時折、俺は懐かしさを感じる。記憶を失い倒れていたいつかの森で、俺と彼女は初めて出会ったはずだ。だけど彼女の長い黒髪とあの印象的な紅の瞳には、どことなく覚えがあった。


記憶を失う前の俺は、一体何をしていたのだろう。そして、何を知っていたのか。


忘れたこと全てを思い出したいと思うけれども、だけど記憶を取り戻すのがほんの少し怖くもある。だって記憶を取り戻したら、今の俺はどうなってしまうのか、そういう不安があるから。

だけどやっぱり、失ったものは取り戻したい。忘れてしまったものは、『忘れないで』と誰かに言われた、とても大切な記憶だった気がするから。


世界のこと、マヤのこと、アリアという聖女のこと、そして自分のこと。全てを思い出しても、俺は俺のままでいられることを信じようと思う。

全てを思い出しても俺は俺のまま、ミルフィーユという一人の存在として今と変わらず生きたい。今までどおりアツシさんを叱って、リコリスの側にいてあげて、マヤという少女を見つけた後も、出来たらリコリスと一緒に旅を続けて、そして……





◇◇◇

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