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第22話 レンは『勇者』と対面した

 荒野の彼方にカルガンディアの大軍を捉える。


「……本気でレオナントを潰す気らしいな」


 前回見た時に比べ、倍以上の軍勢に見える。数多の兵士達がズラッと並び、全体像は視界に収まりきらない。数々の足音が地面を揺らし、ここまでその進軍が伝わってくる。


 対するレオナントの軍勢は騎士団、魔法兵団、一般兵の全てを合わせても500くらいだ。100倍くらいの人数差があるんじゃなかろうか。


「じゃあ、行ってくる」

「ご武運を」


 そう言って俺は1人、荒野を駆け出す。


 前線は俺が1人で相手をする。戦力は限られているから、無駄に使うわけには行かない。それに1人の方が、全力で戦いやすい。


「あの人は……まさか1人で……?」

「ちっ、1人で来やがったか。馬鹿め……数の暴力を思い知らせてやる」


 ソアラとガルドだ。今回は始めから前線に配置されているようだ。


「皆の者!敵は1人だ……かかれぇ!」


『おぉぉ!!』


 オルガの掛け声で兵士たちが一斉に駆け出す。レンはまるで大海の大波に歯向かうメダカのように、カルガンディアの軍勢に迫っていく。

 そして翼を広げて空に飛び立ち、その目でソアラとガルドの位置を把握する。


「怯むな!打ち落とせ!!」


『魔法兵団、用意!……放てぇ!!』


 合図と共に、カルガンディアの魔法兵団が放った数百もの魔法がレンの元へと飛んでいく。


 魔法は空中のレンに命中し、ドカンッという爆発音が連続して響き渡る。


「”火の精霊、汝が力を与え給え”」


「【灼熱の弾幕(フレア・スコール)】」


 ソアラが描いた魔法陣から無数の炎弾が放たれ、魔法兵団の攻撃と共にレンへと襲い掛かる。


「……やったか?」


『いいぞ!』

『消し炭だ!!』


 カルガンディアの軍は確信した。”仕留めた”と。あれだけの魔法を受けて、無事でいられるはずがない。


「効かねえよ」


 その時、煙の中から声が聞こえる。バッと煙が晴れ渡り、中から紫炎を纏った男が姿を見せる。


「また会ったな」

「なっ……!?」

「ひっ!?」


 そう言うと、レンは2人の元に一直線で向かい、ドンッという衝撃音と共に砂埃を巻き上げて着地した。


「か、構うな!やれ……!!」


『馬鹿め!こんな敵陣のど真ん中にわざわざくるやつがいるかよ!』

『俺がやってやる!』

『俺だぁ!』


 周りにいた兵士たちが我先にとレンに攻撃を仕掛ける。



「【怠惰の波動(スロウス)】」



 その瞬間、辺り一体が静まり返り、兵士たちの動きピタッと止まる。


「どうした?早く行けぇ!」


 ガルドの声に反応する兵士はいない。


 ーー1人の兵士がバタッと倒れた。


 その後も兵士たちが次から次へと倒れていく。


「ど、どうなってんだ……?」


 兵士が倒れていくことに気を取られていたガルドだったが、ドンッという鈍い音がして、腹部にかつて無い痛みが走った。体が張り裂けるような重い痛みに思わず声が漏れる。


「ぐはっ……!」


 ーーレンが腹部を殴ったのだ。うづくまるガルドを見下ろす目線は、まさに小鹿を狩るライオンそのものだ。


「ひっ……!?」


 ソアラは怯え切って動けずにいる。


 それもそのはずだ。レンの【怠惰の波動(スロウス)】という魔法は周囲一帯に広がり、すでに1万人ほどの兵士たちが倒れてしまっている。


「なっ……なにをしたの……!?」

「さあな。腰抜けは戦場に来るな」


 ソアラは両手に杖を持ち、腰が抜けたように地面に尻もちをついて座り込んでいる。とんがりの魔女帽子の奥にある赤色の瞳は、真っ直ぐにレンを見ながらうるうると今にも涙がこぼれそうだ。


「何だ、思ったよりも効くみたいだな」


 今の魔法は相手の倦怠感を増幅させる魔法だ。孤島でも使ったことがあったのだが、魔物相手にはさして効果がなかった。ソアラとガルドにも効いてはいないらしいので、もしかすると圧倒的な弱者には効き目が高いのかも知れない。現に兵士たちは重力に引き付けられるように地面に倒れ込み、動く気配すらない。


「便利だな」


 この魔法なら大軍でも一気に無力化することができる。かなり使い勝手のいい魔法だ。


「なあ」

「な、なに……?」

「今回はお前らよりも強いやつが出て来てんだろ?」

「……そうね。いくらあなた達でも、勝てる可能性はゼロよ。決して超えることが出来ない壁が、そこにはあるの」

「へえ」


 ……とその時、


 ドゴンッッ!!!!


 後方で爆音が鳴り響く。


「何だ……?」


 遥か遠くから捉える二頭の龍。それぞれが放つ光線は1点に集中して注がれている。光線は土煙を巻き上げ、大地を削り、猛威を奮っている。


「……シズクか。随分暴れているようだな」


 その光線は花火のように怒涛の輝きを見せ、爆音は鳴り止むことなく響き渡る。


 土煙が晴れ、遠くからシズクの姿を捉える。


「……!?」


 その姿を見て、衝撃を受けた。なんとシズクが膝をつき、足を押さえている。そしてその目線の先には、余裕のある様子で腕を組んでいる女が立っていた。


「まさか……回られたのか!?まずいな……」


 レンはシズクたちの元へ戻ろうと空中へ飛び出す。翼を広げ、もの凄い速度で滑空している時。


 ドンッと背中で音がして、感じたことのない激痛が走る。


「ぐはっ……!」


 そのまま背中を蹴り落とされ、レンは地面に衝突した。


 直後、レンの正面に1人の女が降りてくる。


「あなたの相手は私でありんす」


 立っていたのは、艶のある黒い長髪を綺麗に切りそろえ、まるで着物のような装いに身を包んでいる少女だった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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(厳しい言葉でもいいので感想クレメンスゥ……!)

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