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第21話 レンは『大罪』の因縁を知った

「た……”大罪”の称号……?」


 ダグラスがやっとのことで声を絞り出す。以前として驚いた表情に変わりはない。


「ん……?なんだ?」


 何故かダグラスは俺たちの方を直視して、見定めるかのように視線を固定する。いや、ここまで来ると”睨んでいる”と言った方が正しいかも知れない。

 カティアも右手で腰に下げている剣の柄を持ち、今にも抜こうとしている。


「お、おい、急になんだ」


 やがてダグラスが口を開く。


「あなた方の目的は、”殲滅では無い”と言っていましたよね」

「もちろんだ」


 そして再び静寂が訪れる。

 敵意さえ感じるような2人の視線は、今すぐ攻撃を仕掛けて来てもおかしくはない勢いだ。



 だが少しして、ダグラスはホッと息を吐き、穏やかな顔に戻った。


「……そうですね、今更あなた方を疑うことは出来ません」


 その言葉を聞いて、カティアも剣から手を離す。


 全く、どういうことだ。ステータスを見ただけで敵意を抱くことなんてあるのか?

 それと”疑う”という言葉。俺たちは本心を疑われるようなことはしていないと思うが……。


「なんなんだ」

「……召喚される”勇者”に関して、各国では1つの共通認識があります」

「共通認識?」

「……『大罪人は決して開放してはならない』」

「大罪人……」


 ”大罪”ーー俺たちの称号のことだろうか。


「今世界で起こっている戦争は”第三次世界大戦”と呼ばれています。つまり、第一次と第二次が過去にあったということです」

「……それがどうした」

「第一次世界大戦はこの世界の人々のみによる領土獲得戦争でした。ですが第一次世界大戦後、戦力強化の研究を進めるうちに”勇者の召喚”という手段を発見した国々が出てきたのです。そこで第二次世界大戦では”勇者”を召喚した国々が優勢に戦いを進めていました」

「待て、俺たちの前にもこの世界に召喚された勇者達がいたということか……?」

「ええ、ですがもう100年も前の話です」

「そうなのか……」

「はい。話を戻しますが、第二次世界大戦では”勇者”の力を得た国々が全てを手に入れるかと思われました。ですがその時、各国の”勇者”の中で暴走する者が出てきたのです」


 ーー暴走。


 レンは神器を召喚する際に訪れる、精神を蝕まれるような感覚のことを思い返していた。


「暴走した勇者達は国々を滅ぼし、暴虐の限りを尽くして、世界中を混乱に陥れました。その者達は全部で7人。それぞれ傲慢・憤怒・嫉妬・怠惰・強欲・暴食・色欲の”七つの大罪”を『称号』として背負っていたと伝えられています」


 ……確かに俺とシズクはそのうち”怠惰”と”暴食”の称号を背負っている。これが第二次世界大戦で暴走した”勇者”と同じ称号だということか。


「この暴走は『大罪人の解放』と呼ばれており、現在でも世界中で恐怖の象徴として知られています。大国も”勇者の召喚”の際には”大罪人”に細心の注意を払っていて、大陸から追放するなどの処置を取っていると聞きました。過激な国では処刑ということもあるかも知れません」

「……そうだったのか。そしてその”大罪人”とやらが俺たちだと」

「そう言うことです」



 ようやく分かった。なぜ俺が無実の罪を着せられ、あのような地獄を味わされたのか。俺のステータスを見た時、シュバルツリーテの国王が大きく反応した理由が。



 【怠惰の大罪】ーーこの称号が全ての原因だった。



 何か特殊な称号だと言うことには薄々気付いていた。どうやらこの世界の過去と深い因縁があるらしい。



 ……だが、たったそれだけだ。


 実際に俺たちが何かした訳では無いし、望んでこの称号になった訳でも無い。神の気まぐれか、ただ【怠惰の大罪】の称号を得たというだけで、俺はあんな理不尽な目に遭ったのだ。



 しかし不思議なことに、悲しみや怒りよりも”原因が分かって良かった”という感情の方が大きかった。俺たちは今こうして生きている。戦う力もある。それでいい。


 俺たちが証明してやる。自国の利益のために異世界から人間を召喚してまで戦いを繰り広げる愚かさを。

 ”大罪人”がどうした。お前らが戦争などにかまけているせいで苦しんでいる人間がどれほどいることか。そもそも”勇者の召喚”をしなければ”大罪人”が生まれることもないのだ。



 原因の大元はお前らだと。力づくでもいい、分からせてやる。



「なるほどな、よく分かった」

「レンさん達は”旅人”だと言っていましたが……追放されて大陸の外から帰ってきたのではないですか……?」

「……その通りだ。だが暴走なんてしない。約束する」

「はい、信じます」


 ダグラスの目はいつもに増して力強い。


「やはり戦争は止めるべきだ」

「……そうですね」

「必ず止めてみせる。俺たちだからこそ出来ることだ。この世界の馬鹿共に教えてやる必要がある」

「ある」


 横にいるシズクも何か思うところがあったのだろうか、少し怒っているような、そんな気がする。


「気になったんだが、その”大罪人”達はその後どうなったんだ?」

「私も父から聞いた話なので、詳しくは知りません」

「私もそんな話は初めて聞いたわ。各国の王に伝えられている話なのかも知れないわね」


 確かにアンナは元王族だが、初めて知った様子だ。この世界でも知っている人間は限られているのだろう。


「ありがとうダグラス。知れてよかった」

「こちらこそ先程の敵意を向けるような態度、お詫び致します」

「とりあえずはカルガンディアとの戦いだ。必ず勝つ」

「はい」

「勝つ」



 こうして俺たちはカルガンディアの戦いの前に、よりいっそう団結と決心を固めた。



 その後はダンジョンに行って騎士団を鍛えたり、当日の戦術を練るなどして、ついに決戦の日を迎えるのだった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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