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第20話 レンは『神器』を召喚した

※シズクの神器の読みを変更しました(19話参照)。

 シズクが放った銃弾は次々と魔物を貫通し、後ろから来ていた魔物をも巻き込んで八つ裂きにした。


「助かった」

「……うん」

「しっかりコントロール出来てるか?」

「……まだちょっと厳しい」


 よく見ると、シズクの目が赤く充血している。


「……そいつらの肉食ってていいぞ、他の魔物の相手はしておく」

「ありがと」


 さて、ざっとあと10体くらいか。


「……まとめて相手してやる」


 シズクがあのスキルを使ってくれたんだ。俺も応えなくては。


 レンは手を上に掲げ、天に向かって叫ぶ。



「来い……【美悪魔の夜刀(ペオルス・マグナ)】」



 その言葉と同時にダンジョンの天井が砕け、落石で砂埃が舞い上がった。


 ーー1本の大剣が天井を貫いて降り落ち、レンの目の前に突き刺さったのだ。身の丈ほどの大きな刀身は幅20センチほどの美しい直線で伸びており、闇夜を彷彿とさせる漆黒の刃の先に白い柄が付いている。


「久しぶりだな……この野郎」


 レンが柄を握ると、その大剣は紫色のオーラに包まれて輝き出した。地面から抜き上げて肩に乗せ、魔物の群れへと目を向ける。


「……悪いがここまでだ」


『グオオォォッッ!』


 先ほど蹴り飛ばした魔物を含め、残っていた魔物達がレンを目掛けて一斉に突進している。

 そして今にもその猛攻がレンに襲い掛かろうとしたその時。


「じゃあな」


 レンが大剣を一振りした瞬間、魔物達の上半身が浮き上がる。……いや、正確に言うと”上半身のみ”が浮き上がり、地面に落下した。


 ーーそう、魔物達はその一振りで真っ二つに切断されたのだ。


「がはっ……!」


 だが何故か、レンの方も辛そうな声を上げている。


「くっ……さっさと消えろ……!」


 レンがそう言うと、黒剣は剣先の方からサラサラとした光となって消えていった。


 その様子を見てか、シズクが駆け寄っていく。先ほど倒していた魔物達は綺麗に無くなっていた。全部食べたらしい。


「レン……!」

「……だ、大丈夫だ。しばらくは動けないがな……」

「……そう」



 今俺とシズクが使ったのは武器を召喚するスキルだ。能力値Fの俺たちでも桁違いの火力が出せるくらいの、非常に強力な武器には間違いない。間違いないのだが……。


 このスキルには致命的な欠陥がある。


 ーー精神が蝕まれるような感覚に支配されるのだ。シズクの場合は抑えきれないほどの強烈な食欲に襲われ、俺の場合重力が倍になったかのような倦怠感に見舞われる。

 これも恐らく俺たちの称号に対応しているのだろう。つまり【暴食】と【怠惰】の感情が劇的に大きくなると言うことだ。

 短時間ならなんとかその感情を押さえ込むことが出来るが、現状使えて2分ほどだ。


 最初に孤島でこのスキルを使った時には、シズクは暴走して狂気に満ちたように魔物を狩り続けていたし、俺は丸3日起き上がることが出来なかった。



 次いでダグラスが駆け寄ってくる。ダグラスも周りにいた他の魔物達を殲滅してくれていた。実際かなり消耗している様子だ。


「レ、レンさん!大丈夫ですか!?」

「お前もな」

「はい……私は大丈夫です」

「ダグラスも頑張った」

「恐縮です。しかしレンさん、先ほど武器のようなものを持っていませんでしたか……?シズクさんも」

「ああ、あれは俺たちのスキルの1つだ。かなり強力だが、こんな感じで副作用も強い」

「そ、そうでしたか……。今更驚いたりはしませんが、武器を召喚するスキルなんて初めて見ました。それにしても、レンさんたちならもっと楽に倒せるのではと思っていましたが……。勘違いかも知れませんが、戦場の時よりも動きが鈍っていませんか?」


 ダグラスは俺たちが弱体化していることに気づいたようだ。確かに俺たちの称号やスキルなどを詳しく教えている訳ではない。疑問を持つのも当然と言える。


「よく気づいたな。まぁ、俺たちの『称号』はかなり特殊なんだ。帰ったら話すとしよう」

「ほ、本当ですか……!?楽しみにしています!」


 かなり嬉しそうにしている。そりゃ知りたいと思うのも無理はないか。


「ってことであと5分くらい待ってくれ。立てない」


 こうして、今日は25階層までで引き返すことにした。上で騎士団の連中が待っていることだしな。

 このダンジョンがどのくらい深くまで続いているかは分からないが、今度来た時はもっと深いところまで行ってみよう。



 *



 王宮に帰ると、カティアとアンナが迎えてくれた。歳の近い女の子同士、仲良くなっている様子だ。


「あら、おかえり」

「ダ、ダグラス!そんなボロボロになって……大丈夫なの?」

「なんとかな。何か変わりはあったか?」

「これ……」


 カティアが1つの封筒を差し出す。


「予想は付くでしょうけど……」

「……そうだな。カルガンディアからか?」

「ええ……」


 ダグラスが読み上げてくれた手紙の内容は、ざっとこんな感じだった。


 ーー3日後の正午に攻撃を仕掛ける。前回のような偶然がそう何度も起こると思うな、レオナントは数時間と持たずに全滅するだろう。せいぜい人生の最後、悔いのないよう過ごしておくといい。


「……やはりか」

「はい。ですが想像していたよりも行動が早いですね……」


 あと3日で騎士団の全回復は不可能だ。恐らく戦場に出れる者は半数ほどだろう。


「仕方ない、今戦える戦力だけでなんとか迎え撃つ」

「そうですね。必要であれば策を練ることも考慮しなければ」


 手紙の文面からして、次は確実にレベル6以上の強者が出てくる。レオナントを完膚なきまでに打ち崩す気だ。俺たちも相応の覚悟をしておく必要がある。


「そうだ、俺たちのステータスを見せておこう」

「うん」

「そうね、お互いに手の内は明かしておいた方がいいわね」

「ありがとうございます。ではまず私たちの方から」


 ダグラスがそう言うと、目の前に2人のステータスが表示される。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ダグラス・ルナ・レオナント

 レベル:4


 〈称号〉

【空圧術士】


 〈能力値〉

 魔力量:S

 攻撃:A

 防御:A

 魔攻:S

 魔防:A

 敏捷:A


 〈魔法〉

 空力衝撃エアロ・インパクト

 大地激震グランド・インパクト

 圧加速アクセル・フォース


 〈スキル〉

 雄弁なる王(レクス・サーガ)

 攻撃上昇

 魔攻上昇

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 カティア・ハーレット

 レベル:4


 〈称号〉

【風魔剣士】


 〈能力値〉

 魔力量:C

 攻撃:C

 防御:D

 魔攻:C

 魔防:D

 敏捷:B


 〈魔法〉

 風纏剣ボルテクスソード

 暴風剣ストームソード


 〈スキル〉

 戦女神の顕現(ヴァルキリアフォーゼ)

 剣術 (パッシブ)

 敏捷上昇

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 魔法については大体知っていたが、2人とも能力値はなかなかのものだ。特にダグラスの能力値には目を見張るものがある。


「……すごいな」

「もうすぐレベル5」

「いえ、お二人に比べるとまだまだです……」


 次は俺たちの番だ。心の中で『ステータス開示』と唱えると、目の前にステータス画面が表示される。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 レン・アヤノ

 レベル:5

 体力:1000/1000


 〈称号〉

【怠惰の大罪】


 〈能力値〉

 魔力量:F

 攻撃:F

 防御:F

 魔攻:F

 魔防:F

 敏捷:F


 〈魔法〉

 不死鳥ふしちょう炎翼えんよく

 怠惰の波動(スロウス)


 〈スキル〉

 怠惰の使徒 (パッシブ)

 罪獣の加護〔不死鳥(フェニックス)

 神器召喚〔美悪魔の夜刀(ペオルス・マグナ)

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 シズク・オウサカ

 レベル:5

 満腹度:1000/1000


 〈称号〉

【暴食の大罪】


 〈能力値〉

 魔力量:F

 攻撃:F

 防御:F

 魔攻:F

 魔防:F

 敏捷:F


 〈魔法〉

 冥獣めいじゅう息吹いぶき

 暴食の波動(グラトニー)


 〈スキル〉

 暴食の使徒 (パッシブ)

 罪獣の加護〔冥界の番犬(ケルベロス)

 神器召喚〔大悪魔の双銃(ゼブル・アサルト)

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 アンナ・アル・ローマネクス

 レベル:4


 〈称号〉

【支援旗手】


 〈能力値〉

 魔力量:A

 攻撃:C

 防御:C

 魔攻:C

 魔防:C

 敏捷:C


 〈魔法〉

 属性付与エンチャント凍結とうけつ麻痺まひ炎焼えんしょう

 威力強化アタック・エンハンス

 魔法強化マジック・エンハンス

 革命の祈り(ジャンヌ・プリエール)


 〈スキル〉

 多段階強化マルチエンハンス

 全体上昇オール・プロセス

 槍術 (パッシブ)

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「え……」

「ちょ……こ、これって……」


 俺たちのステータスを見ると、2人は過去最大の衝撃に気の抜けた様子で呆然としていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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