第14話 レンは『島の村人』と出会った
バサッ
「ちょっと休憩だな」
「この子達も大変」
「そうね。さすがにフォルニスでもずっと人間を乗せていると疲れちゃうわ」
俺たちは、これまた名も無き島にたどり着いた。
また”孤島”か……と少しうんざりする気持ちも無いではないが、この島は単なる孤島では無いらしい。
「道が整備されているな」
「うん」
「本当ね……。もしかしたら人間が住んでいるのかしら?」
「かもな」
俺たちは島の端の方に着陸したのだが、木々をかき分けて整理された道がしっかりと行き届いていた。
今はとりあえずその道を真っ直ぐに歩いている。
フォルニス達は道脇の果物を見つけては、少しずつ啄んで食べているな。何でも食うのか?
「フォルニスって雑食なのか?」
「基本的に毒の無いものは何でも食べるわね」
懐いてくれたようで、勝手に付いてくるようになっている。
鷲のイメージがあったから獰猛そうな印象を受けたが、意外とかわいいやつらだな。しばらくはお世話になるとしよう。
「あれ」
「村……か?」
小一時間歩いていると、小さな集落にたどり着いた。藁作りの民家がまばらに並んでいる。
「やはり人が住んでいそうだな」
カンカンカンッ!
突如、村中に大きな金属音が鳴り響く。
「侵入者だ!警戒態勢に入れ!」
続けて大きな声が発せられた。
バッ!
すると民家のそれぞれから人間が飛び出して来て、俺たちに向けて武器を構える。
どうやら村に近づいたのを気づかれたみたいだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、俺たちはたまたまここに上陸しただけだ!」
中心に立っている、村の村長のような人に向けて話しかける。歳はいくつか分からないが、まだまだ現役を感じさせる筋肉質の男だ。
民族衣装と言うのだろうか、動物の皮をそのまま継ぎ接ぎしたような服を着ている。
それにしても何故だろうか、村人は手負いの者も多い。つい最近戦いでもあったのだろうか?
「放て!」
村長の掛け声で弓矢が放たれ、一斉にこちらに飛んでくる。
「ま、待てって!」
俺たちは弓の攻撃を軽くいなして行く。このくらいの攻撃なら、魔法やスキルを使うまでもない。
キュイーンッ……
その時、村の奥で大きなエネルギーを感じた。
直後、雷を纏った強力な弓矢が一直線に飛んでくる。
ガシッ!
俺はその矢を片手で掴んで止めた。
『……!?』
村人が全員驚いている様子だ。
「話を聞いてくれ!俺たちは通りすがりの旅人だ!」
「……」
村長はこちらの真意を見定めるように俺の目を見つめている。
そして何かを悟ったように緊張を緩めた。
「……分かった。皆!武器を下ろせ!」
どうやら信じてくれたらしい。
「驚かせてすまないな」
「敵じゃない」
「……お主らを信じよう、その目に嘘は無い。先の攻撃を詫びる」
「あれくらい問題ないさ」
「お主ら、相当な手練と見た。何者か?」
「言ったじゃないか、ただの旅人だ」
ここで事の一部始終を説明するのも面倒なので、旅人と言うことで通しておく。
「そうか。歓迎しよう、旅人よ。私の家に来なさい」
「ああ、どうも」
正直長居する気は無いのだが、厚意を無下には出来ない。ありがたく招かれておくとしよう。
村長の家は村の奥にある、少し大きめの民家だ。若い女性と村長の2人で住んでいるらしい。
「少し狭いが、くつろいでくれ」
「ありがとう」
「どうぞ」
俺たちが3人並んで床に座ると、若い女性がお茶のような飲み物を運んで来てくれた。
「頂きます……ん!?」
「おいしい」
「お茶ってこんなに美味しかったのね……!」
そのお茶は、おそらくごく普通のありふれた味なのだろう。
しかし俺たちにとっては、感動に値する飲み物だった。
何しろまともな味がする物を口に入れたのは2年振りだからな。
……って言うか名前は”お茶”なんだな。
「なんだ?娘が入れた茶がそんなに美味しかったか?」
感傷に浸る俺たちの様子を見て、村長が尋ねてくる。
若い女性は娘さんらしい。
「……久しぶりにまともな物を口に入れた」
「そんな過酷な旅をしているのかね!?」
村長は驚いた顔をしている。
「いや、まぁ少し事情があってな。ところで気になったんだが、さっき村人の多くが怪我をしていなかったか?」
村長は少しの間虚空を見つめ、何かを思案しているようだ。
「うむ……実は最近困ったことがあってな」
「……よければ内容を聞いてもいいか?」
「……そうじゃな。この島には動物や植物だけで無く、魔物も住み着いている。これまでは村人だけで追い払うことが出来たんじゃが……」
村人は皆武器の扱いに慣れているようだった。日頃から戦っていると言うことか。
「最近、これまで見た事も無かったような魔物がうろつくようになったんじゃよ。5メートルを超える大きな魔物で、その対応に悪戦苦闘しているんじゃ」
「……なるほど」
待てよ……普通の魔物はそんなに大きくないと言うことか……?
俺たちは孤島に住んでいた巨大な魔物しか見たことが無いから、普通の大きさが分からない。
確かにアンナもあの島の魔物は特別に大きいと言っていたが、やはりそうらしいな。
「その魔物達は普通の魔物よりも攻撃的で破壊力もある。1匹追い払うのにも村の総力を挙げねばならん状態での」
「そうなのか。でもさっき強力な弓矢を撃てるやつがいなかったか?」
「ああ、この島には私を含めて数人ほどレベル2の者がおる。だがそれでも簡単ではないのが現状じゃ」
あの雷の矢は恐らく魔法かスキルだった。だがレベル2だとあれくらいの威力か。
もしかすると、普通の人間の中ではレベル2でも珍しい方なのかも知れない。
村長の口ぶりからするに、他の村人は全員レベル1なのだろう。
「……その大きな魔物、何体くらいいるんだ?」
「ふむ……見た限りじゃと10体くらいかの」
「そうか。まぁここに来たのも何かの縁だ。見つけられる限り倒してくるとするか」
あまり余計なことをしない方がいいのかも知れないが、目の前で困っている村を放っておくわけにはいかないな。
……以前の俺ならこんなことはしなかったに違いない。これは成長と捉えおくことにしよう。
「な、なんと……!お主らレベルはどのくらいかね……?」
「言うほどのもんじゃねぇよ。だが10メートルやそこらの魔物なら苦労はしないから大丈夫だ」
「そうかね……。確かに先程の様子からお主らの強さは分かっておる。ありがたい話じゃ……」
まぁ10体くらいならそこまで時間はかからないだろう。そんなに急いでいる訳でも無いしな。
「じゃが、わしらはお主らに返せるもんなど持っておらんぞ」
「見返りなんざ求めないさ。そうだ、大陸がどっちにあるか分かるか?」
「それなら分かるが……。お主ら大陸を目指しておるのかね?」
「そうだが」
「かなり遠いぞ。フォルニスに乗っても1週間はかかる。……そうじゃ、村の者に途中まで案内させよう」
「本当か!そりゃ助かるな」
今の俺たちにとってはこの上ないお返しだ。
それにしても1週間もかかるのか。俺はどんなところに連れてこられたんだ、全く。転移魔法の類いでもあるのだろうか。
「それじゃ、ちょっと行ってくる」
「お茶ありがと」
「頼んだぞい!」
そう言って俺たちは村長の家から出る。外ではフォルニス達が待ってくれて居たようだ。
どうやら村で飼われているフォルニスと仲良くなったらしく、じゃれ合っている。
……なんだ?野生のフォルニスって、色が違うのか?
普通のフォルニスは全身が茶色い羽毛で覆われているが、なぜか俺たちが乗ってきたフォルニスは頭部が白色、胴体と翼は黒色をしている。
まぁなんでもいいか。
「行くぞ」
『キュオォォ!』
俺たちはフォルニスに乗り、島を上空から見て回る。
どうやらかなり小さな島で、魔物を探すのに苦労はしなかった。
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