夢のはじまり
なるべく早く更新出来るようにします。
「くそっ!勝てるかこんなの!」
俺、夏地ユウトは薄暗い部屋で一人、ゲームをしている。
内容が難しくそれ程上手く進行できないことに一人でイラ立っている。
タイトルは勇者の冒険。
タイトルは気にせず手の届く範囲の値段であったので迷わず購入した。
俺はこのような種類の内容が好きなのである。
スタートは比較的簡単に進めるのだが、少しずつ敵が強くなり先行きが不安となる。
そして、不安が的中。
ザコすらザコに感じられない。
初見でボスが倒せなくなり今まで使っていなかったアイテムを使用開始。
最早お気軽に出来ないがそれでもなおストーリーを王道に従って進める。
それから毎日、学校に帰って来てからその作業が続く
そして、あまりの難しさに途中で止めようとするがヒロインや仲間達に励まされながらラスボス到着。
ラスボスの異常な強さに途中なんどもコントローラー投げようとした手を可愛いヒロインのおかげで何とか止めてくれながら、そしてようやく、
「そうだ!そうして……よし!かかった!それでよっしゃー!終わったー!やっと終わったわー!」
静かな部屋に響き渡る俺の声。
バイトで貯めたお金で買った中古ゲームを一人でようやくクリアし、流れるエンディングを聞きながら勝利の余韻に浸る。
難しいゲーム程達成した時の嬉しさは格別である。
ふと、今の時間が気になり時計の時間を確認すると、今すぐにでも寝ないと明日起きられるかどうかわからない時間になっていた。
データをセーブして、急いで寝たが先ほどまで興奮していたので、寝られない。
仕方なくユウトはベッドの上でゴロゴロしながら寝むりにつくのを待っていた。
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そうして、寝始めてから時間が少し経過したころだった。
少しするとかちゃかちゃと何かが当たる音がする。遠くから微かに人の声もする。
強盗でも入って来たのかと焦って体を起こそうとするが全く体が動かない。
その事に焦ったが見たところ自分の部屋でない別の部屋だとすぐに分かった。
(何だ?この部屋?)
見えているのは一つの部屋を全体的に見ていることであった。
ただぼんやりとその見える部屋全体を眺めて、聞こえる声をただ聞いていた。
視界に映るのは、さっきクリアしたゲームに出てきそうなくらい部屋で、その中でも特に気になったのは床に魔方陣のようなものが書かれていることぐらいだ。
十分特殊な夢だが、かなり面白い夢だとは個人的には思っている。
しかし何が書いてあるのかはぼんやりとしか見えない。
また部屋自体が暗いのでわかるのは大体の広さぐらいである。
そして、その広さがかなり広い。
それからは特に変わらない風景を惰性で見ていた。
この夢を見たのもゲームをした後に寝てしまったから、内容もゲーム寄りなのかなと思いながらぼんやりとしていると遠くの声が徐々に近くなって来てくるのに気づく。
部屋に入って来たのは、ぼやけていまいちわからないが二人であるのは間違いない。
二人は何かを話している様子であった。
話している内容が少しでも聞ければと思い耳を澄ます。
「……様、……に……私……。……でも……、…………」
「………、…………」
ちょっと何を言っているのか分からない。
その後ふたりは、話合っていた様子だが何を話しているのかも分からない。
もう少し大きな声で、はっきりとゆっくり話してもらえればななぁ、と思っていると、
「私がこの……召喚で出て来た人が勇者に……」
「そうだよ。……が勇者を召喚すれば、村を……もらえるよ」
徐々に聞こえてくる声がはっきりわかってくる。
また視界も徐々に見えるようになってきて話し合っている二人の内一人は茶髪の少女で、もう一人が白いマントをかぶっていて顔は仮面で隠れているが、聞こえてくる声からして男であると思われる。
そして少女が言っていた召喚という言葉。
そうかこの魔方陣はなにかの召喚用の魔法陣なのか。
でも勇者って召喚されるものなのか?
二人の話の内容に疑問を持ちながら眺め続ける。
俺が見たところ少女の方は話からしてかなり信じてしまっているようだ。
「村のため……。わかりました。私が異世界から、勇者を召喚してみせます!」
俺は衝撃を受けた。異世界召喚だと。
その魅力的な言葉に、俺は少なからず興奮した。
剣や魔法、モンスターなどがあるこの世界ではありえない夢のような場所。
だが、俺は冷静になる。
しかしそんなことはありえない。
興味のある内容だがこの見ている内容自体何かのアニメかゲームかと改めて思う。
だが、夢に対して疑問を持つのは当たり前のことで、嫌いじゃないし続きを見よう。
自信たっぷりに宣言した少女に安心したのか男は部屋から出て行ってしまった。
それを見届けた少女は男が部屋を出ていくと同時に膝を抱えてうずくまる。
そしてすくっと立ち上ったと思うと頭をわしゃわしゃとかいてからまたうずくまる。
あっ、これ自信ないパターンのやつだわと思うユウトであった。
でも、あれだけ自信たっぷりに言って後に引けないだろうし、まぁ頑張れ。
しかしこの実に俺らしい夢は俺にとっては本当にいい夢である。
だって俺異世界物の話、超好きだから。
少女が少し元気を取り戻したのか、立ち上がって召喚の練習を始める。
とは言っても、段取りのような確認を一人でしているだけである。
その後も一人で考え込んだり、色んなポーズを取ったりして思考錯誤を繰り返している。
そんな、健気にも頑張る姿にユウトは自然と少女に見惚れていた。
その時だった。急に望んでもいないすさまじい音がする。
何だ、この音は!?
そして音と共に意識がどんどん遠くなりその世界から引きはがされてしまう。
気がついた俺は良く知った世界に戻る。
それに気づいた俺は、ゆっくりと手を伸ばす。
「ちっ。もう少し見せろよ」
ユウトは、悪態つきながら大音量で鳴り響く目覚まし時計を止めて、あくびをしながら、朝の支度を始めるのであった。
これから、登場人物が増えますので、もう少しユウトの異世界召喚前をお楽しみください。