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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

永遠の音

作者: イレイガ

 結ばれた契り。

決して簡単には解けることはない。目の前の君を眺めながら、そう思っている。


 中学の頃、僕らは出会った。それは単純に同じクラスになったと言う、そんな当たり障りない出来事がスタートの号砲をすでに鳴らしていたのかもしれない

三浦 龍斗(みうら りゅうと)、彼はとてもいい子だ。夜狩 抄華(やがり しょうか)という僕の名前の隣に座ってた子。こんな名前だけど僕は男の子だし彼も当然、男の子。事の発端は自己紹介だった。隣の席と自己紹介しましょうなんてよくある小学生じみた幼稚な行動、そんなことしか言えない教師。呆れるがクラスメートはやれ相手が女の子はずるい、やれこの女は嫌だ、不満と自慢が溢れる中、僕らは自己紹介をした。

「おれは三浦、三浦龍斗。よろしく。お前は?」

「僕は夜狩抄華。よろしくね。」

「へぇー男でも華って字入れるんだね」

「あはは…ちょっとおかしいよね。でも、僕はこの名前。抄華って名前は好きなんだ。」

「自分の名前に自信持てる奴っていいよな。ありふれた名前すぎて俺は不満だよ。龍って感じを名前に入れる親ってどう言う考えしてるんだろ」

「そりゃ、龍みたいに強く生きてってことじゃない?男らしい名前でなんだか、憧れる。自分の名前は好きだけどさ、そう言う名前がやっぱ欲しかったなって。」

「まぁー名前なんて変えようがないからしょうがねぇだろ。それよりさ、部活とかは・・・・」


キーンコーンカーンコーン


と、チャイムが鳴り響く。授業終了の合図だ。先生の自己紹介と僕たちの自己紹介の途中で1限は終わりをつげた。目の前で楽しそうに話してくれた男の子。名前だけでこんなに話ができるのか。僕らは気があっていたんだと思う。休み時間もくっちゃべって、放課後途中まで一緒に帰った。そんな毎日が楽しかった。

来る日も来る日も僕らは何かしら話すことができた。不思議なくらいに。


 ある日彼はいつもと少し違った。

「なあ、今日俺んちで遊ばね?」

と、いつもとは違う面持ちで龍斗が放課後に誘ってきた。もちろん顔色がどうだからとか深く考えなかった僕は「いいよ」と軽く答え、何かゲームとか持っていく?と返した。

「いや、うちにある程度あるから大丈夫。じゃ、いこ。こっちだから」

僕の手を握り龍斗はいつもの分かれ道を僕の家とは逆方向に進む。細い路地や舗装されていない道を進むと一戸建ての家がずらり並ぶ通りに出てきた。水色の壁がある家を指差して、あれが俺の家。って軽く吐いて駆け足で連れていかれた。

こうして目の前で見るとうちより立派だと思いながらお邪魔した。

「今日は俺一人なんだ。どうせなら1日遊ぼうぜ。明日日曜だろ。」

うちは私学だから土曜日も学校があった。たまたま僕と龍斗は家から近くに位置するけど電車で通う人も珍しくない。

「オッケー。親に言っとくわ」

遊びに関しては緩かったので連絡すれば、このくらいは許されるうちだったことに感謝したい。


「で、俺…お前に…抄華に言わなきゃいけないことがあってさ」

あの面持ちが再び現れた。僕の目をしっかり見てくるから少し恥ずかしい。

「少し、目、瞑ってくれない?」

今考えてみればおかしな話だ。言いたいことがあるのにこんなことを言ってくる時点で気づくべきだったのかもしれない。当時僕は素直に目を瞑った。視界が真っ暗になる。部屋の蛍光灯のあたりの方が赤くぼやけてる。

ふと、口に何かが当たった。唇に柔らかいものが接した。思わず目を開ければ目の前には龍斗の顔があった。

「あー…目開けちゃうか…」

「な、な、な、なに、してんの…」

「キス?」

「そ、それって恋人…とかがするんでしょ?」

「うん、でもさ、してみたくならない?」

同性愛というものを当時知らなかった僕は控えめに言って不快感しか感じなかったけど彼との仲を悪くはしたくなかった。なるべく具体的に回答することを避けて、その日は何とかその場を流した。

しかし、彼の興味は止まることがなく、キス以外もしたがった。勿論、遊びに誘われてホイホイ行く僕も同罪なのだけど、断ることはできなかった。仲を悪くしたくなかった。だけど、高校に上がって早々、1回だけ逃げて帰ってしまった。彼が阪神に手を伸ばした時、僕はその手を跳ねのけて逃げてしまった。あの日から彼は僕が逃げることを恐れていたのかもしれない。

次あった時から彼はまず僕の片腕とその金属を紐でつなぎ、金属のもう一つのパーツと彼の家のベッドの脚を紐でつなぐ。どうだろう。もう逃げられない。されどその金属さえ解除できれば逃げられる。ある意味彼は僕をとどめておきつつも、僕に選択肢を与えていたのだろう。

いまでも頭に染み付いている。知恵の輪ってやつはいかに力を加えても外せない。彼が目の前で外してみせたのにどうしてか、解くことはできなかった。


 ある日、ついに僕はこのパズルの解き方を理解した。だけど外さなかった。当然これからも外すことはない。このパズルは力とかそんなものでは解決しない。僕らの関係もそうなんだろう。ほんの些細なベクトルが働けば壊れるような脆い関係だと思う。でも、僕から壊すなんて、できないよ。かちゃかちゃと安い金属音を聞きながら今日も思う。龍斗、君のせいだ。君が僕を変えたんだから、これからもこのまま。離れないでおくれよ。

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