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深・桃太郎  作者: けんしろう
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 桃太郎が刀を構えるとすぐにその男も構えるのでした。男は桃太郎の殺気をビリビリと感じました。


「なるほど……刀は見せかけじゃねえようだな」


 そう言うと男は斬りかかってきた。桃太郎はそれを前に避けカウンターを狙う。長物に対し距離をつめるのは基本である。桃太郎が刀を降り下ろす。


「ちっ…!」


 刀が男に届く寸前で槍で弾かれる。


 男は中々の手練れのようで、見た目は桃太郎と同じくらいの年齢に見えましたが、どうやらこの齢で山賊の頭になるだけの実力はあるようです。


「なんで、山賊なんかやってる」


 桃太郎の問いかけは、これだけの実力があるなら山賊にならなくても別の道があったのではないかと思ってからのことでした。


「うるせえ、ずいぶん余裕かましてるがそんなの暇ぁねえぜ」


 男はグンッと桃太郎に近づいてきました。

 男の振り回す槍が桃太郎を襲う。受け止めた刀からは一撃一撃の重みが伝わってくる。


「くっ……」


 桃太郎が槍を弾き返すとすぐさま槍の柄が喉元追う。それも刀ではらい距離をとる。

 激しい攻防が続き、鉄と鉄のぶつかる音がそこらじゅうに響き渡った。

 

「チクショウッ!埒があかねぇ!」


 男は槍を地面に突き刺した。するとその槍を中心に円上に地面が光だしたのだ。


「……なに!」


 桃太郎の目の前には信じられない光景が広がった。光る円上の地面から12本の槍が現れたのだ。

 

「一気に片を付けてやる……十二槍追!!」


 男が叫ぶと12本の槍が桃太郎目掛け飛んできた。


「くそっ、ここで使うことになるとはな」


 そう言うと桃太郎は今までとは違う構えを見せた。

 


 桃太郎がお爺さんから教わった剣術には攻守ともに3つの型が存在しました。しかしどれも酷く体力を消耗するため易々と使うことは出来ないのでした。

 しかし桃太郎は直感的に感じたのです。全力で対抗しなければ少なくとも致命傷は食らってしまうと。




 12本の槍が迫りくる中、桃太郎は右手で刀を水平に持ちました。



「流刀…新月」



 放たれたその言葉以外男には何が起きたのか全く理解が出来ませんでした。気づいたときには、桃太郎の刀が男の首を捉えていたのです。


「ハァ……ハァ…まだ、やるか?」


 桃太郎は不適な笑みを浮かべながら言いました。


「あれ防がれちゃあ、成す術ねえや」


 男も笑いながら答えました。桃太郎に降りかかった12本の槍はあちらこちらに突き刺さっていました。男は最後の大技まで完璧に折られてしまったのです。




「改めて頼むが…俺に力を貸してくれないか」


 桃太郎が真剣に尋ねました。尋ねたというより願いに近かったのかもしれません。


「…………すまねぇ、本当にすまねぇが、俺はここから離れられねえ……」


 男は地に頭を打ち付けながら本当に申し訳なさそうに言った。


 男のわがままに思うかもしれないが、桃太郎は知っていた。誰しも背負っているものがあると、その重みに違いはないということを。


 それにこれはどちらかというと桃太郎のわがままからだったのだ。

 鬼退治という命の保証も無いものに無理に付き合わせることは桃太郎には出来なかった。



「俺は桃太郎だ…お前は?」


「俺は、猿でいい…」


「分かった……」


 桃太郎はそれ以上何も言わずその場から立ち去りました。





-------------



 

「頭、本当にいいんですかい」


「ああ……」


「俺達のために…すまねぇ」


 猿が頭になってから悪さをしなくなった山賊達だったが、それまでの悪行は数えきれないほど重ねてきました。その為国からは常に首を狙われ続けてきたのです。

 猿が山賊を離れるとここの輩はすぐに首を取られかねないのです。


「俺達だけでもやっていってみせますから!だから桃太郎さんと一緒に…」



「それもあるが、違うんだ」


「何が違うって言うんですか……」


「まだ、このままじゃ足手まといになるだけなんだ…」


「頭…」


「まだ…ダメなんだ……」




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