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深・桃太郎  作者: けんしろう
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復讐






 桃太郎はお婆さんを日陰に運び寝かせると、お爺さんを探しました。

 探している途中、村人を発見しました。倒れていますがまだ生きているようでした。


「おい、大丈夫か」


「なっ…なんとか……」


 まだ10歳にも満たないその幼い少年は血まみれではありましたが、何とか致命傷は避けることが出来たようで、意識はしっかりしていました。


「ここで…何が起きたんだ……!」


 桃太郎は少年の頭を持ちながら聞きました。すると少年はゆっくりと、とんでもないことを口にしたのです。


「鬼だよ…鬼が突然やって来て……何もかも壊していったんだ………」


「鬼……だと…」


 桃太郎は驚くあまり声も出ません。1度風の噂で聞いたことがあったのです。『この村の近くには鬼の住む島がある。数百年前に、この村は鬼によって壊滅させられたことがある』と。

 

「まさか…本当に」


「お兄ちゃん…お父さんが、お父さんが連れてかれちゃったよ……!」


 少年は桃太郎に泣きながらしがみついてきました。桃太郎はその少年の言葉に引っ掛かりました。


「連れていかれた…だと」


「鬼が言ったんだ……『働ける者は連れていく、そうでない者は家ごと潰してしまえ』って。僕は生まれつき足が不自由だから連れていかれないで済んだけど、あとはみんな…」


「わかった、もう安心しろ…俺が全部取り返してきてやる……」


 桃太郎は復讐を決意しました。鬼の暴走をこのままにするわけにはいかない。人の平穏は何人たりとも奪っていいものではない。お爺さんもおそらく鬼によって連れ去られているとわかった今、なにもしないわけにはいきません。


 桃太郎は生き残った者達を介抱し、使えそうな瓦礫を組み立て簡単な雨しのぎの場所を作りました。

 そしてお婆さんを含め、鬼の犠牲になった者達を一つ一つ丁寧に土に埋葬しました。





 

「お兄ちゃん……本当に行くの?」


「ああ、お前の父ちゃんも捕まっているだろう…ならおちおちしてられないんだ」


 桃太郎は少年の頭を撫でると、他の生存者に少年を託し村を出ました。

 ハチマキを頭に巻き、腰には刀を携えています。刀はもしもの時には、とお爺さんに託されたものです。

 そして……刀の反対側には袋が1つ、ぶら下げられていました。中には泥だらけになった吉備団子が入っているのです。固く乾き食べられるような状態のものではありませんが、桃太郎にとってそれはとてもとても大事なものでした。



 桃太郎は1人で鬼のうじゃうじゃいる島に乗り込もうとは思いませんでした。村をあれだけ無茶苦茶に出来るほどの力を持った者達に1人で挑むのは、死にに行くようなものです。


 そこで桃太郎は最近国を騒がせている大山賊のことを思い出しました。

 聞けばその山賊の頭は武士が束になっても敵わないほど手強いと言われています。

 

試してみる価値はある…


 桃太郎は早速、その山賊がよく出ると言われてる猿風山の山道で待ち伏せすることにしました。

 山道をフラりと歩いていると山賊らしき者が4人桃太郎を取り囲むのでした。


「怪我したくなきゃ、身に付けてるのも全部置いてきな!」


 大の男が4人も襲ってきたなら普通はそれだけで怯えてしまうでしょうが、桃太郎は分かっていたのです。この程度で恐れていては鬼を仕留めることなど出来るわけがないと。

 それに桃太郎はお爺さんの残した刀とそれを扱うための技術を有していたのでこの程度なら今の桃太郎には余裕なくらいです。


「おい!早くしろ!」


 山賊の男は桃太郎を威嚇してきますが全く動じませんでした。


「お前らの頭に会わせてくれないか?」


「ああ?何言ってやがる。てめえはここでさよならだよ!」


 男は桃太郎に向かって小刀を突き刺してきますが、それを避け鞘ごと刀を男の腕に降り下ろしました。


「痛ってぇぇ!」


「次は切り落とすぞ…」


「ひっ……」


 桃太郎は逆に山賊達を威嚇しました。すると流石に力の差がわかったのか山賊達は逃げるように山の中へと走り去ってしまいました。


「全く…これでまた1からか…」


 山賊が逃げた方角へと桃太郎は歩を進めた。雑魚が逃げるのは親玉の元、大体そうと決まっているからです。




------------



「かっ…頭ぁ~!」


「……どうした」


 先ほど桃太郎に気圧された山賊は、洞窟の中で大勢に囲まれた1人の男に泣きつきました。


「な、何もしてねえのに道でいきなりよぉ、脅されて腕を……」


「なにぃ~」


 その男はゆっくり泣きついてきた山賊に近づくといきなり蹴飛ばし、胸ぐらを掴むのでした。


「てめえが何もしてねえ分けねえだろう?俺は嘘が嫌いなんだ、分かってるよなあ…」


「ぐはっ…!す、すみません…」


「だがそいつも気に入らねえ潰しに行くぞ」


 その男の一言に周りの奴等は雄叫びを上げた。






------------



「お前が頭か…」


 山の中を歩いて数分で桃太郎はすぐに目当ての人物と対峙しました。


「いかにも…」


 桃太郎と山賊の頭はにらみ合い両者ともその場で動きませんでした。すると周りの山賊達がしびれを切らしだしました。


「頭ー、俺達がやっちゃいますよ!」


「まあ待て…何が目的でここに入った」


「お前の力を貸して欲しい。仲間が必要なんだ」


 桃太郎は事情を説明したが当然その程度で従うような輩ではないことは百も承知です。


「お前の気持ちも分からんでもねえ、助けてやりてえが、それとこれは別の話だ」


 男が側にいた山賊から槍を受け取り、ブンブン振り回しながら言いました。


「こっちにもメンツってもんがある。どうだ、俺とお前のサシで蹴りをつけないか。俺が負けたらついていってやろう」


「簡単で助かる……」


 桃太郎も刀を鞘から抜きました。




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