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深・桃太郎  作者: けんしろう
18/20

力の解放










 仮面の男に圧倒的な力の差を見せつけられ一時は諦めかけた桃太郎だったが、袁摩の父である袁蔵の加勢により一命をとりとめた。

 

 

 しばらく一進一退の攻防が続いていたがついに、それが崩れ始めた。









「…かはっっ!!」



「旦那ッ!」



 袁蔵の体には次第に傷が増えていく。やはり仮面の男は簡単にはやられてくれない。

 このままではこちらが殺られるのも時間の問題だ。






「桃の字ぃ。これが俺の切り札だ。おそらく5分と持たないだろうが」



 そう言うと袁蔵の防具から黒い気が発生し全身を包む。



「俺の防具には鬼の角を使っている。気を集中させそれを、その力を感じるんだ」




「鬼の…力……」


 桃太郎は刀を握る。




 袁蔵の体が徐々に肥大していく。体表は硬く、腫れ上がったかのように赤くなり、骨格も強靭になる。頭からは角が1本、鬼の角だ。




「俺はこの力を使いこなせない。すぐに動けなくなるだろう。この通り体にもかなりの負荷がかかる」



 袁蔵は目を血走らせながら言う。



「お前ならこの力を使いこなせるはずだ」



 袁蔵は桃太郎の胸に拳をトンッ―とかざした。「お前ならきっと倒せる。…袁摩を頼む」そう言っていた気がした。



「旦那ぁっ!!死ぬ気か!!!」





 袁蔵は桃太郎の声に耳を貸さなかった。


「があぁぁ!!!」



 袁蔵が突っ込んでくるまで何故か仮面の男は何もしてこなかった。

 こちらを窺っていたのかそれとも、余裕の表れか。



 袁蔵が右腕で男に殴りかかる。男はそれを腕の外側に避けると同時に腰に差している刀で袁蔵の首を狙う。

 袁蔵はそれを見切り、半回転し左手の防具で受け止め、そして弾く。


 2人は一旦距離をとる。


 そしてまた、すぐにぶつかる。






「ほう、これは想像以上だ」



「ぐがあっ!!!」



「たが直に、理性が飛ぶ。意識が飛ぶ。そしてお前は死ぬ」


 

 男の刀が袁蔵の肩から下腹にかけてもろに入った。皮膚は以前とは比べ物にならないくらい硬化していた――にも関わらずだ。

 段々と理性が薄れていく袁蔵の動きは時に単調になっていく。その隙をつかれた。


 


「ガぁッ……!」



「終わりだ」



 そして追い討ちをかけられる。今度は逆側から斜めに、横に、一瞬の間に5度斬りつけられた。




 

 袁蔵は膝を地に着きそのまま崩れ落ちると思われた――




「なっ!!?」



 袁蔵が男の刀を素手で掴んだ。



「捕…まえた……ぞ!!」


 


「くッ!抜け――」



 袁蔵の左手から血が溢れる。だが決して離しはしない。右手を振りかぶる。右腕の防具からは先程同様黒い気が、そして拳を包む。






「砕けろ!!」






   黒鬼拳<コクキケン>








 

 凄まじい勢いで繰り出されたその拳は大気を震わせた。

 仮面の男はそれをまともに食らった。





















――――が、

 

     










「お返しだ」


 

 確かに袁蔵の拳は男を捉えていた。だが、 男はその場から全く動いていなかった。

 そして、男は左手を振りかぶり袁蔵が出した技と同じ技を繰り出す。

 目の前からの攻撃が避けられるはずもなかった。

 




「ぐあぁぁぁ!!」


 

  袁蔵は巨大な岩盤に打ち付けられた。

 やはり男の力は圧倒的であった。

 鬼の力は徐々に解け、意識がやっとの思いで留まっている状態だ。








 男が袁蔵に止めを刺そうと歩き出した瞬間――



金属の衝突音が響く。



「旦那ぁ!!」



 横から桃太郎の刀が男の肩を目掛けて振り下ろされる。男はギリギリだったが刀の先端で軌道を逸らした。

 




「ほう…。今のは危なかった」





 それは世辞でも余裕から生まれる言葉でもない。

 男は直前まで気付かなかった。




 何故




 袁蔵に気を取られていたからか



 違う





 油断か




 違う



(これは…)






 桃太郎の早さが数倍、いや数十倍へと跳ね上がっているのだ。



 男は仮面の下でおどろおどろしく笑った。



「…おもしろい」





――――――――――――――――――――――




 時は少し遡り、袁蔵と仮面の男が戦闘に入ってすぐのこと。



 桃太郎は満身創痍の体を支えながら右手で刀を体の軸と垂直になるように持ち、左手は峰に添える。

 あまり時間はない。袁蔵の体からは勢いよく生気が溢れ出している。



 この技は寿命が縮む。


 だがそんなことは桃太郎にとって足掛かりにはならなかった。一刻も早く奴を倒さなければならない。



 




感じろ










気を刀に集中させる









全身を巡って刀を通り








そしてまた全身に返る








刀を受け入れ







己の一部としろ





 







    「…っ来た」



 

 その瞬間、刀から腕、肩から足の先まで『何か』が全身を駆け巡った。

 黒い気が全身を包み、そしてその気が桃太郎の体に一気に取り込まれる。



「あああああぁぁっ!!!」



 袁蔵と同様体が一回り大きくなった。






 動ける。

 それに前よりも運動能力が格段に上昇しているのがわかった。


 



 袁蔵が命懸けで仮面の男を引き付けていてくれたおかげだ。

 そして今、その袁蔵があぶない。









 桃太郎は仮面の男目掛けて勢いよく地面を蹴り、男の横から刀を振り下ろした。

 



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