圧倒的
島に上陸してから1時間が経過しようとしていました。
作戦は、極めて順調。
四方から同時に攻撃を開始し、敵に態勢を整わせる隙を与えませんでした。
さらに神戌・烏禅が、ともに敵の主戦力を打ち破り形勢はかなり桃太郎達に傾いているように思えました。
時間とともに確実に鬼は数を減らしていきました。
そうして4人は鬼を倒しながら、先程から感じている大きな気配を追って足を速めるのでした。
――――――――――――――――――――――
それぞれ島の奥へと進んでいく中、烏禅だけが足を止めた。と、言うより止めざるを得なかった。
烏禅は体に異変を感じたのだ。
「なるほどのぅ…そういうことか……」
烏禅は胸を押さえ片膝を地面に着いた。
体中に脈の振動が伝わる。
ゆっくり、ゆっくりと。
―――――――そして
烏禅の体に魔方陣が浮かび上がった。
この魔方陣が何なのかはすぐには分からなかったが、ほどなくして気づくことが出来た。
島にいる鬼を、いやそれ以外のところの鬼をも感じ取れた。
(何故……いや、これは……)
この島に来る前の、鬼の違和感の正体がはっきりとした。
(やはり、操られちょったか……)
鬼は強力な術式で何者かに操られていたのだ。
そのため鬼の目には生気がなく、ただただ、島に立ち入った者を排除しようと人形のように動いていたのだ。
それが何故今わかったのか。
今鬼を操っているのが烏禅だから、だ。
いや、正確に言えば操っているのではなく操るための基盤になっているということだ。
(やられた…やられたやられたやられた…!!)
烏禅は地面を殴り付ける。
(どこで………?)
(そうか……!)
(あの大男の時、いやもっと前じゃ。島に入る前…最初に鬼を斬ったときからか…!!)
「くそっ!!!」
烏禅は思わず叫ぶ。
「気付け桃太郎!すべて罠だ!!」
―――――――――――――――――――――――
4人の中で一番島の中心部へ進んでいた桃太郎と神戌はとある場所へと辿り着いた。
「洞窟…か?」
「そうみたいだな」
その洞窟はそれなりの深さがあり、奥には何かしらの空間があることがわかった。
「ここだな」
「…行くか?」
「行くしかないだろう」
4人が感じている大きな気配はここからのもので間違いない。
おそらくそいつが、鬼の、この島の元凶であると思われた。
よし…と、その洞窟へ入ろうとした瞬間だった。
「やぁ……
どこへ行く気だい………?」
桃太郎と神戌は後ろから肩を組まれた。声は肩を組んできたそいつのものだ。
「……っ!!」
桃太郎は刀を抜き、神戌は炎を拳に纏わせ、それぞれその何者かに攻撃を仕掛けた。
味方ではない。それは声を聞いた瞬間に分かっていた。そしてそいつが、その大きな気配を放っていた奴であることも。
殺られていた。
気付けなかった。
油断していたわけではない。
そいつは、初めからそこに居たかのように。はたまた、まだそこには居ないかのように。
突如、現れた。
そして―――――――
(いない…!?)
桃太郎の刀は空を斬る。
今さっき、後ろにいた――――はずだった。
「なっ……う……そ…だろ………」
「神戌ぃ!!?」
神戌は口から血を吐き、その場に両膝を着いた。
「どうした!?」
桃太郎はすぐに神戌のもとに駆け寄る。
「これは……!」
神戌の背中側から刀が2本貫通していた。奴にやられたのだ。
「あ……あぶねぇ……」
神戌は桃太郎の後ろを指す。
桃太郎は瞬時に振り返り刀を構える。
その場に刀と刀のぶつかり合う音が響く。もう少しで斬られていた。
刀を握っているのは仮面を付けている男。おそらく奴だ。
「ぐっ……!!」
鍔迫り合いの末、桃太郎の刀が弾かれ地面に突き刺さる。
そして男の回し蹴りが桃太郎をとらえる。
咄嗟に両腕で体を庇った。
その蹴りはとてつもない強さで、桃太郎は洞窟内へと飛ばされた。
単純に力で競り負けた。
「おいおいおい、この程度でこの島に乗り込んできたのかぁ?随分なめられたものだねえ、桃太郎よぉ」
(くっ……何故…名を………)
仮面の上からでも分かった。こちらを蔑むような笑みを浮かべていることが。
桃太郎は手が震えた。
それが蹴られたことによる痺れなのか、それとも……恐怖によるものなのか。
蹴られ、転がった衝撃で桃太郎の体はすでにボロボロの状態だ。
起き上がろうとすると桃太郎の顔を目掛けてまた蹴りが入る。
「くっ!」
それを耐え、なんとか立ち上がる―――――――が、しかし
(か……刀が……)
桃太郎の刀は今、奴の足元に突き刺さったままだ。
素手で対応するには限度がある。それにこの力の差である。
そこからは一方的だった。
蹴られ、殴られ、そして斬られる。
もはや、桃太郎は立ち上がることすら出来なくなっていた。
まずい……体が動かない………
神戌は…どうなった?
烏禅は…? 袁摩は…?
ああ……だめだ………
もう…なにも………
桃太郎の意識は段々と薄れていった。
圧倒的な力の差を見せつけられ、心身ともに限界を迎えようとしていた。
男は桃太郎に向かいゆっくりと歩いてくる。そして、刀を振りかぶった。
「ははは、お前が弱いせいでみんな死ぬんだ。あの世で悔いてろ」
桃太郎の顔には所々の傷口から血が流れ、それを洗い流すかのように涙が溢れた。
お爺ちゃん…… お婆ちゃん……
ごめん……
みんな……ごめんな…………
お婆ちゃん
また会えるかな………
また吉備団子作ってくれるかな……
また………………




