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深・桃太郎  作者: けんしろう
14/20

実力










 目を閉じると広がるのは、燃え盛る家屋と逃げ惑う人々。












 




 鬼に追われ、捕まれば殺される。









 





 怯えながら何も出来ず。

 ただ、崩れた家屋の隙間でじっと通りすぎるのを待っていた。

 何も出来ず。両親を目の前で殺された。











 






 やっとじゃ…














 やっと……













 この手で





 そのとき烏禅の心の内にあったのは憎しみでも、恨みでもなかった。

 強いていえば、喜びの方が近かったかもしれない。


 

 烏禅はゆっくりと目を開け、歩を進めると、にやりと笑った。



「さあ、やろうかい……」




 振り下ろされる鬼の拳に合わせて体を捻らせる。鬼の力を利用し地面に叩きつけ、すかさず錫杖の仕込み刀で鬼の首を落とす。


 

 前方には3体の鬼が、左右にはそれぞれ5体以上。



「…わらわらと」



 ギリッと歯を食い縛るその表情からは、段々と怒りがこみ上げてきていることが読み取れる。



「殺られる側の気持ちを味わってもらうけえの…」



 ――と、その瞬間1体の鬼の脳天に何かが突き刺さった。

 烏禅の錫杖だ。


 そして烏禅が鬼に向かって跳ぶ。

 両足で鬼の顔面と胸を捉え、蹴り飛ばす。

 その反動で錫杖を引き抜き、逆さのまま両脇にいた鬼を斬りつける。


 着地と同時に、その場に3体の鬼が崩れ落ちる。

 間髪いれず烏禅は周りの鬼をどんどん斬り倒していく。


 

 前にいた鬼をすべて片付けると、こちらに向かって1人の男が近づいてくる。

 かなりの巨漢で、烏禅の3倍はでかい。



 しかも――



 (鬼を引きずっちょる…)



 

「がはははは!お前ぇは強そうだなあ!!」



 男は引きずっていた鬼を投げ捨てると自分の拳をボキボキと鳴らした。




「すぐくたばってくれるなよぉ?俺をたのしませろよぉぉ!!」



 男が叫ぶ。が、その時既に男の前に烏禅の姿はなかった。





「お?」








――――男の巨大な胴体が地面にずり落ちた。






「くたばったみたいじゃの……お前が先にな」





 烏禅は男の後ろに立っていた。


 あの鬼を赤子のように弄ぶ男を、真っ二つにしたのだ。一瞬で。

 

 





「どうじゃ…楽しめたかのぅ?」






 烏禅は刀を錫杖にしまうと、鬼が集まっている方を目指し歩き出した。





――――――――――――――――――――――

 






 (ちっ、数が多いな…)




 袁摩は想像以上に苦戦していた。


 鬼は1体ならばそれほど強くない。と言っても、人の3倍はある体を持つ鬼の強さは確かなものだ。

 だが袁摩や桃太郎の力と比べるとなると、やはり見劣りする。



 1体を相手取る場合、袁摩なら倒しきるのに10秒とかからないだろう。

 ただそれは、1体のみの場合である。ここにいるのは何十、何百という鬼の群れである。

 倒しても倒しても、どんどん数が増えていく。キリがない。



(体力は残しておくつもりだったが…仕方ないか)



 


 袁摩は近くの鬼を片付け、槍を右手で持つと両腕を交差させた。



 

 


        双槍<そうそう>

 




 袁摩の左手に槍が現れた。




 


        激槍<げきそう>

        



 


 両手に持つ槍を軽々と振り回す。一呼吸置いて――――、右の槍で一突き。

 鬼に刺さったその槍を軸に半回転し、下方から斜め上に左の槍で斬りつけ、鬼を倒す。

 体勢を整えると空かさず鬼を突く。そして回転しながら辺りの鬼を一蹴する。

 2つの槍を自在に使いこなすその姿には美しささえ覚える。


 


 見当たる限りの鬼を全て片付けた。



 百、いやそれ以上の鬼を一人で斬り倒した。この力は驚異であり桃太郎にとって頼もしい以外の何物でもない。




――――――――――――――――――――――




 鬼の数はずいぶん減った。

 このまま勢いで押しきれる。4人はそう思った。

 だが、敵は鬼だけではない。狼が現れたことや、大男の存在も4人は気配で感じ取っていた。

 その2人を倒したことでこちらが有利になったことに変わりはない。


 それでも、やはり何かが引っ掛かる。うまくいき過ぎている。


 はっきりとは分からないが、この島には依然不穏な空気が漂っている。


 ただ、分かっているのは倒した2人とは比べ物にならないくらいの存在感を放つもう1つの気配がすることである。



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