鬼との対峙
「こんなに、綺麗に引くものなんだな…」
その浜辺では潮が引き、海を2つに別けるように真っ直ぐと陸が浮かび上がっていました。
水面に映る満月は不気味なほど綺麗に輝いていました。
そしてその先にある。
「あれが…」
鬼ヶ島
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まず4人は浜辺ではなく、その手前にある林の中に身を置きました。
これは烏禅の提案によるものです。
「やはり、来たのう…」
烏禅はの予想通り、鬼が2匹こちらへ向かい歩いてくるのです。間近で見た4人は、その鬼という存在に少したじろぎました。
「でかいな…3mはあるんじゃないか」
袁摩が言いました。
しかし、その時桃太郎の頭に浮かんだのは恐怖ではありませんでした。それは
怒り と 憎悪。
その感情が桃太郎の体を無意識にも動かしました。
「桃太郎!」
烏禅の制止を振り切り、桃太郎は鬼に突進しました。
「袁摩、援護に入れ! 神戌、結界を張るんだ!」
「わかった!」
「あーっくそ!バカが」
袁摩が桃太郎に追い付くのを見ると、神戌は両手で印を結び桃太郎のいる方向にかざした。
桃太郎と鬼の周りに球状に結界が出来るとすぐさま烏禅が結界に札を貼りました。
「お前らの目的はなんだ!」
桃太郎は鬼に向かい叫んだが、鬼からの反応はなかった。こちらの存在には気づいていているが、それは声を無視するではなく、まるで聞こえてないかのようだった。
「桃太郎!」
袁摩が叫ぶが桃太郎はその声を振り払う。
「手を出すな…!俺が、やる!」
桃太郎はもう一度呼吸を整えようとした――が、それは鬼には関係のないことだった。
いつの間にか目の前にまで迫った鬼、その鬼の太く発達した右腕が桃太郎目掛け振り下ろされる。
速く鋭い一撃が容赦なく桃太郎を吹っ飛ばした。
「ぐっ!…っぶねぇ」
結界の内側ギリギリで踏みとどまったが、その打撃を受けた刀の鞘には軽いヒビが入っていた。
「そうだよな、当然だよなあ!何十もの村を潰してきたんだもんなあ!力があって当然だよなあ!」
皮肉混じりの鬼に向けたその言葉は、桃太郎を余計苦しめた。
しかし今は構わない。
目の前に敵がいるのだから。それを倒すのが自分の、いや自分達の望みであることに変わりはない。
桃太郎はもう1度前を見直した。鬼が2匹。それを確と認識する。
今度はしっかり見えている。
「こちらから行くぞ!覚悟しろ」
手前の1匹に近付くと当然、先程と同様に腕を振り下ろしてくる。桃太郎はそこで刀を抜いた。
力を全身へ込め渾身の一撃で鬼の腕が宙を舞った。その勢いのまま二撃目が鬼の胴体を襲う。
「っし!1匹」
その場に崩れ落ちる鬼を後に、すぐにもう1匹を追おうとした――が、勝てないと見込んだのか、なんと即座に鬼は逃げ出そうとした。
「ちっ!」
そのまま追いかけようとするが、逃げ出そうとした鬼の前には袁摩が回り込んでいた。
「こいつはもらうぜ、いいだろう?」
袁摩は静かに槍を持ち直し、目を閉じた。
そして鬼が動き出そうとした瞬間、目を見開き一撃、二撃、三撃と鬼を串刺しにした。
その攻撃は重く、躊躇いはない。
その動きは幾つもの闘いを乗り越えてきたことを表していた。そして、袁摩もまた背負うものを感じさせた。
「中は終わったようだな」
「ああ…じゃが何か匂うのう…」
烏禅は鬼ヶ島の方を遠く見つめました。
それは…
そう言いかけて烏禅は口を閉じました。言わなくても4人とも感じていることだったからです。
それは、鬼からの生気全くが感じられないということです。
「俺が見ていた感じでは…自分の意思で動いているようには見えなかったが」
神戌が言いました。
「言うならば、やつらの動きはからくりに似ていた」
戻ってきた桃太郎が言いました。
「もう、大丈夫か?」
「ああ、勝手なことをしてすまない」
桃太郎の言った『からくり』とは、つまり機械的な仕掛けで動く玩具のことです。
「そうじゃのう、これは予想しておったより大きな力が動いておるのかも知れん…」
少し考え込む様子を見せると、烏禅は再び口を開きました。
「覚悟が…必要じゃ、ここからはそういう戦いじゃ」
桃太郎は無言で頷きました。
そして、4人の顔付きがそれぞれの覚悟を物語っていました。
「行くぞ、決戦だ…」
4人は鬼ヶ島へと歩を進めました。
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とある洞窟に作られた、1つの大きな部屋のような場所に、3人の男がいました。
「さっき…反応があった後、見張りに出した鬼の位置を見失った」
1人の男が座禅を組ながら言いました。そのすぐ横には大柄な男が立っていました。
「手応えのあるやつらかぁ?ここの鬼は弱くてつまらねえからな!」
そして、奥にもう1人。
「…やっと来よったか。桃太郎よぉ……」




