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深・桃太郎  作者: けんしろう
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桃太郎出逢い

 童話『桃太郎』を題材に、大人向けの深い話に仕上げました。主人公の心情や仲間達との絡みをどうぞお楽しみください。

 深い桃太郎とは一体どういうことなのか…

【深・桃太郎】1『出逢い』






「本当に……子供が産めない体でごめんなさい………」


 お婆さんは夜になると毎日そう言っては涙を流していました。


 「だからそれは、お前は悪くない…謝らんでもいいと言っておろうが……」



 お爺さんは毎日毎日、お婆さんをつき放すことなく、それに付き合ってくれました。

 お婆さんは体が病弱で、いつもお爺さんに迷惑をかけてしまっていると、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 ですがお爺さんは嫌な顔一つせず、お婆さんにずっと寄り添ってきてくれました。

 2人とも子供は授かることが出来ませんでしたが、言葉には出すことはなくとも幸せを感じながら平穏に暮らしていました。

 

 2人は週に2回ほど外へ出掛けるのでした。お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へと洗濯をしに行くのでした。


「婆さんや、1人で大丈夫かね…」


「いつも気にしすぎですよ…まだまだ元気でやってますから」


 お爺さんはいつもお婆さんが心配で声を掛けるのです。お婆さんが微笑むとお爺さんは安心したようにゆっくりと山へと歩き出しました。それを見てお婆さんもゆっくりと川へと向かいました。

 

 いつものように川辺にしゃがみこみ洗濯板を使い、細い腕を懸命に動かしながら洗濯をしていました。

 すると川上から聞き慣れない音が近づいてきました。


 「こりゃあまあ…」


 お婆さんは驚きのあまり言葉に詰まってしまいました。なんとドンブラコ、ドンブラコと大きな桃が流れて来るのではありませんか。


 もちろんこんなに大きな桃は見たことはありません。お婆さんは物珍しさに桃を洗濯板で手繰り寄せ手で持ち上げてみたのです。

 桃は見た目ほど重くはありませんでした。そして桃をたらいに乗せ急いで残りの洗濯物を洗うと、急ぎ足で家へと帰りました。


「おかえり…なんじゃいその桃は」


 先に帰っていたお爺さんは目を丸くして驚くのでした。


「川上から流れてきましたのよ」


「こんなに大きいのによく運べたのう…」


「まだまだ体力には自信がありますよ」


 お婆さんはそう言って腕をまくり、その様子を見てお爺さんは微笑みました。


「婆さんや…この中から音が聞こえるでのう」


 桃に耳を当てながらお爺さんは言いました。お婆さんも耳を当てると本当に中から音が聞こえるではありませんか。

 当然、中がどうなっているのか2人は気になります。中を覗いてみようということになりお爺さんは台所から包丁を持ってきました。





「オギャアーー!!オギャアーー!!」


 外側に少し切れ目を入れると桃は自然と開き、中から赤ん坊が出てきました。

 凄く…もの凄く驚きました。2人は子供を授かることがなかった身、赤ん坊を捨て置くことなど到底できるわけもありません。

 お爺さんは赤ん坊を抱き上げ涙目になりながら言いました。


「お前は今日からうちの子じゃ…そうじゃ、名前をつけよう。桃から産まれた男の子…桃太郎…桃太郎はどうじゃ!」

 

 お爺さんは桃の花言葉にちなんで気立てのいい、立派な人間になってもらいたいと思いを込めて、赤ん坊に桃太郎と名付けました。


「お前は桃太郎じゃ!大きくなるんじゃぞ桃太郎……」


「桃太郎……いい名前を付けてもらったねぇ………」


 2人は涙を流し、戸惑いながらもその赤ん坊を大事に育てることにしました。


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