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御令嬢と伯爵様2


ちょっといつもより長めです。


本日二話続けて投稿しおります。

前のお話からどうぞ☆



 女の子はやっぱりアンリ様で、あの時公爵家に来ていたのはアンリ様のドレスを身に纏ったロディ兄様もとい、ロベルト様でした。


「……怪我をさせて、すまなかった」

「本当にもう、何とお詫びしたら良いのか……」


 渋々といった感じでブスくれながら一応は謝ってくれた伯爵様に、もう傷は治りましたからと言うとフンっと横を向いてしまいました。

 しばらくすると、いくつかの足音が聞こえて応接間の扉が開きました。


「これは何の茶番だい?」

「っ、ヴァイース公爵閣下」

「セリシア様っ!」

「公爵様?」


 ニコニコと笑いながら、公爵(セリシア)様がゆっくり歩いてワタクシの隣に座り、腰に手を回して身を寄せてきました。


「公爵様っ、お離しくださ……」

「イヤ。折角ローラと一緒に居れる時間ができたんだ。……君を離したくないよ」


 耳元に唇を寄せて甘く囁くとちゅっとリップ音が耳を擽った。皆さんが見ている前で、耳にキスをされて真っ赤になり、止めての意味を込めてキッと公爵様を睨んだけれど、トロリと蕩けた顔でそんなに潤んだ瞳で見つめて、もっとして欲しいの可愛いローラと甘さが増しただけでした。そうじゃないんですぅっっ!


「セリシア様っ、どうしてその娘なのですかっ」

「ロディ兄様!!」

「お前に名を許した覚えはない。気安く呼ぶな、エヴァンス伯」


 ワタクシに向けていた甘さなんて欠片もなくて、冷たい声で突き放した公爵様のお声にピクリと体が反応してしまいます。


「……ローラ、アンリ嬢と庭でお茶でもしてきて? セバス」

「は。畏まりました」





 セバス様に促されて、いつもの庭園ではない場所に案内されました。


「まぁ、こんな素敵な庭園、見た事ありませんわっ」

「お気に召されましたか? セリシア様がフローラルお嬢様がお喜びになるかと、異国風に造り直させた庭園にございます」

「素敵ですわ! アンリ様もそうは思いませんか?」

「え、えぇ。さすがとしか言いようがありませんわね」


 雰囲気がガラリと変わり、いつもの庭園の良いけどこっちもとても素敵で胸がキュンキュンしました。アンリ様のお顔の色が悪いことに気づき話を振ってみたのですが……息抜きはできるでしょうか?


 テーブルには綺麗なティーカップと、一緒に用意されていた焼き菓子もいつもと違っていて、可愛らしくてまた胸がトキメキます。


「……フローラル様はお怒りではございませんの?」

「ふぇっ?」


 スイーツに目を奪われていて、素っ頓狂な返事をしてしまいます。恥ずかしいっ。


「……」

「……ふ」


 沈黙が流れて、先にアンリ様が吹き出してワタクシも笑い出しました。


「……っ、ごめんなさい。毒気を抜かれてしまいましたわ」

「いえっ、変な返事をしてしまって、申し訳ございません。アンリ様」

「フローラル様、アンリと。ただのアンリと呼んでくださいませ」

「では、ワタクシの事もローラと呼んでくださいますか?」


 呼び捨てでいいと言われてお友達ができたみたいで嬉しくて、笑みが溢れます。


「……っぅ、はい、私でよろしければっ」

「嬉しいです。……あら、お顔が赤いようですけど大丈夫ですか?」

「えぇ、だい大丈夫ですわ!」



 ひと息ついた所で、アンリが改めて今回の出来事に謝罪をしてきました。


「もう傷もすっかり治りましたし、痕にもなりませんでしたから気にしないでください。それに、謝るのはアンリではなくロベルト様の方ですよ?」

「ローラ……」

「アンリとロベルト様はとっても似ていますのね? ワタクシ、ビックリしましたわ!」


 その話はおしまいですよって、話を双子に変えました。


「そうなんですの。私もロディ兄様もお互いの服を交換してしまうと両親でさえ見分けられなくなりますのよ」

「まぁ!」



 お茶を飲みながら話に花を咲かせていると公爵様と伯爵様が庭園にいらっっしゃいました。


「ローラ、この庭は気に入ったかい?」

「公爵さ……」


 公爵様に呼ばれて振り返ると隣に居た伯爵様の頬が赤く痛々しい色になっています。ワタクシの隣に居たアンリの息を飲む音が聞こえました。


「伯爵様、どうされたのですかっ」

「っ、構うな」

「こんなに腫れて……。公爵様っ、何てことを!」


 ワタクシはいても立ってもいられずにハンカチを水に濡らして、伯爵様の頬に押し当てます。


「んっ、イタ……、離せっ! ボクに構うなよっ」

「あ……」

「ロディ兄様!」

「ワタクシが様子を見てきますわ! 心配しないでくださいませー!」

「ローラ!」




 走り去る伯爵様の後を追いかけて、追いつく頃には伯爵様が立ち止まって一輪の花を見つめていました。


「……」

「は、伯爵様、……っ走るのが早い、ですわっ」


 はぁはぁと息を荒くさせてそう言うと、ポツリと構うなって言ったのにって聞こえました。怪我人は放っておけませんもの。


「ちゃんと冷やさないとダメですよ?」

「……っ、何であんな事を言ったボクに構うんだよ!」

「何ででしょう?」

「はぁ? ボクが知る訳ないだろうっ」


 ハンカチを押し付けながら首を傾げて聞き返すと、伯爵様がイラついたようにフンって横を向いてしまいます。


「……お前、ボクの事気持ち悪いって思っているんだろう」

「どうしてですか?」

「男のくせに女装して、公爵閣下が好きだからだよっ」

「……ワタクシは気持ち悪いとは思いませんわ」

「!」

「愛の形は人それぞれですもの。女装だって、男だって分からないくらい伯爵様にとってもお似合いでしたわ」

「……っ、……何で……何で、……だよ……っ」

「心ない方達の言葉に、純粋な想いを寄せる伯爵様が傷つく必要はありませんよ?」


 力なく地面に膝をついて低く掠れた声で泣き、ワタクシにしがみ付いて苦しそうな顔で涙を流す彼に、気持ち悪いだなんて思いもしません。それに、好きな気持ちを否定されたら、苦しくて悲しくなってしまうかもしれませんもの。

 前世の記憶の世界には、同性愛も異性愛も等しくありましたからね。色々な愛の形の創作物(・・・)がありましたし。そんな事は言えませんが、好きでも良いじゃないですかと伯爵様の背中をさすってあげました。



「落ち着きましたか?」

「あぁ……。すまない、ドレスが……」

「伯爵様のありがたい涙ですから、どうって事はないですわ。それに泣きたくなったらいくらでもワタクシの胸をお貸ししますわ!」

「っは、あははは。ありがたい、か」


 落ち着いて泣き止んだ伯爵様がワタクシの言葉に吹き出してひと通り笑い終えると、立ち上がって一歩二歩と距離を置きました。やっぱり笑い方はアンリと似ていますわ。


「……ありがとう、ございます。それと、先日は大変失礼致しました。如何なる処罰もお受けします」


 勢い良く頭を下げてそんな事を言ったのです。しかも、タイミングを計ったかのように公爵様達がいらっしゃいました。




「……君はどうしたい? ローラ」

「ワタクシはもう良いのです」

「あんな事をされて、許すの?」

「えぇ。もう謝罪はいただきました。これ以上は何も望みませんわ」


 公爵様に後ろから抱き締められながらそう言うと、アンリと伯爵様が同時にくしゃりと顔を歪めて頭を下げます。凄い、シンクロ……!


「じゃ、もうローラは私の部屋に連れて行っても問題無いよね?」

「え?」

「後は任せたよ、セバス」

「お任せください。……セリシア様、一時間ですよ」

「えっ?」

「はいはい。邪魔したら、分かってるよね?」

「は。畏まりました」


 ゆっくりとお姫様抱っこをされて、公爵様がもう我慢できないと呟く声が聞こえました。


「ひゃぁっ」

「早くそんなドレスは着替えて捨てよう(・・・・・)ね、ローラ?」

「降ろして、…………ひぅっ!」


 狂気にも似た熱の籠った瞳に射抜かれて、息も詰まり身じろぎもできない。





 あぁ、新しいお友達が二人もできましたーーー







 了







危うく、御令嬢と御令嬢になる所でしたっ。

伯爵様と公爵様の出番があって良かった(笑)


ここまでお読みいただきありがとうございます。

誤字、脱字などございましたらご指摘くださいませ☆


公爵様登場の所を改稿しました☆


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