御令嬢の逃走
御令嬢は逃げ出した!
公爵様がお留守の時に起こったもう一つの物語。
よろしくお願いします☆
(…今、今しかないわ…!ワタクシがここから逃げるには……!)
心臓が壊れそうなくらい激しく動いています。後は護衛の方達を撒くだけ…!大丈夫。ワタクシは街娘。ワタクシは街娘…。
そっと店のドアから出て、強面の護衛の方達の横を通り過ぎようとするとその中にいた一人の方に声をかけられました。
「お嬢さん、落としましたよ」
「あっ…!私ったら、ごめんなさい。ありがとうございます」
「いえ。お気になさらず」
バレてしまわないかと緊張して声が震えそうになるのを堪えながら、お礼を言ってからその場を去りました。
(あぁ、口から色々なモノが出そう!)
ごきげんよう、ワタクシはフローラル・ガーベルと申します。
ワタクシの婚約者であるあの方、セリシア・ヴァイース様が遠征で留守の今、ワタクシは執事長様を説き伏せ(泣き落とし)て街に出掛けました。
今のワタクシは目立たないように街娘の格好です。それでも、公爵家で用意した物だから上質な物には違いありません…!コレではダメです!
そんな訳で、街で人気の服飾店に入り護衛の方達には外で待っていてもらう。
「まぁ、これも素敵ですわね」
「ありがとうございます」
服装を見ただけでニコニコ顔の女性定員さんはワタクシを何処かの令嬢だと見破り、店内を一緒に見ています。
(うー!放っておいて欲しいですのに…!………そうだわ!)
「ワタクシ、面白い遊びが好きですの」
「はぁ…」
そう言うと、気の抜けた返事と怪訝な表情でワタクシを見る。にっこりと微笑みながら彼女の耳に唇を寄せて、囁いた。
「……と言う訳ですの。お願いできて?」
「は、はいっ。かしこまりました!私の服を貴女様の為に…!」
急に大きな声で喋り出した彼女の唇に人差し指を当て、反対の指で自分の唇に当てて「しーっ」と内緒話をする子供の様な仕草をすると頬を赤く染め、ウルウルと見つめてきます。
(あら?…どうしたのかしら。お顔が赤くなっていらっしゃるわ?)
しばらく見つめ合っていると、彼女の方から目を逸らし「で、ではっ。こちらに…!」と少し吃りながらもそう言って、奥の控え室まで案内され彼女が着ていた服に着替えました。女同士ですもの。ワタクシは気にしませんわ。
「これで、これでワタクシは自由ですわ…!」
嬉しさの余り、街の検問所の近くで叫んでしまいました。危ない。街から出ていないからまだ安全ではありません!
ドクドクと脈打つ鼓動を感じながら並んでいると、検問所に近付いて来る集団が遠くに見えました。何かしら?と思っているとワタクシの順番がきました。
「次の方。こちらへ」
「はっはいっ!」
「身分証をご提示ください」
騎士様は事務的に素っ気なくそう言ってワタクシの身分証を受け取ると、軽く目を見開きワタクシの顔を不躾に見つめます。
「あの…?」
「っ、…失礼いたしました。お一人ですか?」
「えぇ。ワタクシだけです」
「確認致しますので、しばらくお待ちください」
「は…い?………え?」
か、確認?!…確認って何ですの!何ですか!?
パニックになりながら騎士様の後を目で追うと、さっきまで遠くにいた集団がかなり近くまで来ていた事に気がつきました。
「……!……、………ラ!!」
「?」
ワタクシは名前を呼ばれた気がして、近付く集団を目を凝らしてよ〜〜く見てみると、何と公爵様ではありませんか!…ありませんか!じゃなくて、どうして!?見つかるのが早くありませんか!!?
「ひぅっ……!」
ワタクシは考えるより先に、公爵様の方を見て呆気に取られている騎士様から強引に身分証を掴んで、走り出しました。
「ローラローラローラ、ローラ!ローラ!何処に行くんだい!」
「ひゃあぁぁぁぁぁっ!!!」
あぁ…ワタクシは……此処から逃げ出したいーーーー
了
そして彼女は開けてはならない扉を開けてしまったのです…。
ローラちゃんの笑顔はマジ天使!(笑)
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
誤字、脱字などございましたらご指摘ください☆