最強の成れの果て
11月XX日、某国際国家連合代表の職場にて
「これが世界で最高の権力者の座る椅子か。
思えば、ここに来るまで長かった。不動産で儲ける本業が簡単な作業に思えてしまうわい」
そう言って、代表は昨日に占拠の末に勝ち取った代表の地位に座ろうとした瞬間。。。
「お前がこの世界、最強の男か。
興ざめだな、年老いていることを差し引いても救いようのない雑魚だとはおもわなんだ。これならばE級の討伐者をいじめていたほうが、まだ楽しめたものだ」
身長の丈200mほどの男はどこからか現れると、そう告げるやいなや、代表に指を向けた。
「まあ、せっかく異世界にまで来れたんだ。せっかくだから記念にその生命もらっていくとしよう」
男はそう言うと、至極めんどくさそうな顔をしながら、突然のできごとに立ち尽くしている代表の男の頭を、指から放った炎弾で射抜いた。
まるで、時間がゆっくりと流れるかのように、代表の男は倒れ、その音が部屋に響き渡った。
「まったく、神はなぜこんな世界に飛ばしたのか。どう考えても、私をあの世界から追放しただけではないか」
代表の男が倒れた音で、ようやく緊急事態が生じたことに気づいた黒服の男たちが、ドアを勢い良く開け飛び込んできた。
「Mr.ドナルド、大丈夫で、、、なっ!!!」
「なんだ、マシな者も居るではないか。重畳重畳、さあ手合わせを願おう!!!」
男は腰に付けた剣を抜きながら、黒服の男に向けて猟奇的に笑いかけた。
しかし、黒服は男には取り合わず、大統領によった。
「ブラボー、エコー緊急事態だ!大統領が殺された。至急メディカルスタッフと犯人確保のための人員をよこしてくれ」
黒服が仲間に無線で連絡をしていると、背後から声がした。
「ふむ、見事な体をしていると思ったが、危機察知能力は低いようだな。そもそもお主何だその格好は。立派なガタイをしているのにそんな小さい服を気負って気色の悪い。」
黒服は驚き、とっさに銃を抜き発砲しようとしたが、
「甘い甘い、何か攻撃をするのならば、部屋に入ってきた直後であろう。しかも、見たところ、魔力も皆無に等しいのにもかかわらず、何らかの魔具を用いようとしている。せっかく鍛えた肉体が無駄ではないか。」
男は大統領を殺した時と同じ表情を浮かべながら、転がっている生首に向かって文句を垂れていた。
「この世界で最強の男とその部下がこの程度だとは。まさか私はあの童子や婦人に騙されたのか?」
もっともこの大統領の職場である白い建物に転移してくる前、男は適当に向かった場所で世界最強の男の居場所を聞いて回り、挙げられた者をすべて殺した後にここに来ている以上、それあり得ないため、男は途方に暮れていた。
「まったく、何がこの世界に来れば私を殺せる者たちがいるだ。これならば、まだアースガルドの猛者たちのほうがまだ万が一の可能性があったというもの、、、」
最強の男がまさか異世界転移して3日で倒せるとは思っていなかったため、男が悩んでいると、特殊部隊が部屋になだれ込んできた。
「まあよい、とりあえず向かって来る者がいる限り相手をして、本当にあれが最強だったのかを確かめるとするか」
男はそう言うと、先頭を開始した。
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3日後
「まったく、あのゴミどもはいったいどれだけの規模の軍隊を持っているのだ。しかも、挙句には見たこともないような兵器や武器を持ち出して来おって。珍妙なものだが、威力が圧倒的に足りなさすぎる。」
男はあの後も殺戮を続けた。これ3時間ほど続き、そこでようやく防衛省が苦渋の決断を下したが、投下した爆撃をも耐え、さらに腹が空くまで殺戮を続けた。
最後に男は、「自らは腹が減ったため一旦引く」と魔法によりその戦場にいた全員に伝達した後、自らに叶うと思うものが居れば挑戦を待っていると告げ突如姿を消した。
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1週間後
つい先日、代表選挙に負けたため国際国家連合の副代表に落ち着いた男は、まったく望んでいない形でその椅子についていた。
「議会の皆様、本日はお集まりいただき感謝する。本日の議題は「例の男」に関するものである。皆様も御存知の通り、あれは自らの先頭欲求を充たすために世界に恐怖を与える、まさに単独犯のテロリストである。我が国の前代表およびに勇敢な戦士たちは彼の者の欲求の犠牲となった。また、5日前には、・・・。その3時間後には・・・など多大な犠牲者が出ている。
彼に対して、私たちは射殺、毒殺、爆殺など様々な手を試してきた。しかし、結果は彼がつい1時間前に新たな犠牲者を産んだことからも明らかであると思う。
そこで、私は提案する・・・
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1ヶ月後
男は、指定された場所にて攻撃を待っていた。
「ふむこれで何度目になるかわからぬが、この諦めない精神は評価に値するかもしれん。現に相手の攻撃も当初の近距離攻撃ではなく、遠距離からの魔術攻撃へと変わっている。このまま改良をつづけていってもらいたいところだがなぁ」
男がそう言いながら荒野に佇んでいると、空からミサイルが降ってきた。
「ふむ、本日はあの鉄弾の中から無数の弾が飛び出てくるあの兵器とは違う形なのだな。たしかにあのような攻撃では、弱兵を多く倒すのが精一杯であろうしなぁ」
などと言っていると、その鉄弾は空中で爆発した。
その爆風を受けながら、男はその威力が以前受けたどの攻撃より威力が上がっていることに喜びを覚えていた。
(ふむ、やればできるでないか!もっとも、私を殺すためにはまだまだ足りないがな!!!)
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さらに1週間後
「ふむ、まさか私の体調がここまで悪くなるとは。魔力を知覚して以来であるから、こんな感覚30年ぶりかもしれん。まさかあのような脆弱な者達に私がやられるとは。やはり神は正しかったということか。」
男は、自らの身体が何らかの毒に、急激に蝕まれていくのを自覚しながら、荒野で幸せそうに息を引き取った。
そして、その体は光につつまれ消えていったとのことである。