生きたい
目がさめる。
変な夢を見たなぁと思いながら、最初に目に入ったのは薄暗い場所。
夢じゃなかったと気がつくのにそう時間はかからなかった。
即座にドラゴンの事を思い出す。
そこへ気がついたドラゴンが声をかけてくる。
「主よ、気がついたか」
最期の光景が蘇り声がする頭上を見るとレッドドラゴンがいた。
思わず叫び声が出そうになるが、それより先に続けて話しかけてきた。
「痛みは取れたか?」
叫び声が出そうだった声はえ?という疑問で消え、思い返すと身体中の痛みがなくなっていた。
体を起こし立ち上がると腕を回してみたりして異常がないことを確かめる。
レッドドラゴンは顔を俺の顔の高さまで低く下げてくる。
うん、上から見下ろされるより遥かに怖い。間近になった分、ハッキリとデカさがわかる。頭だけで軽トラぐらいある。
「痛みが…なくなってる」
「ふむ、それは良かった。回復魔法の効果あったようだな」
その言葉を聞いて驚く。
ドラゴンいるならやっぱり魔法もあるか。
いや違う、そこじゃない。
「えっと、なぜ治してくれたんですか?」
「うむ、少し興味が湧いた。
主は意識を失う前何と言った?」
「助けて…です」
「そうか」
クックックと笑うと
「主、どうなると思った?」
「それは、もちろん美味しいかはわかりませんが、腹の足しにされるか、または…」
直後レッドドラゴンは笑い出す。
クックック、ハッハッハッハッハ!
「なぶり殺されるか、焼き殺されるか、魔物の巣にほうりこまれたりとか…」
レッドドラゴンの笑いが次第に引きつったような顔に変わっていく。
「…これはまたひどい言われようだ、どれだけ我は残酷なドラゴン扱いされるのだ?
とは言え、あながち間違いでもないがな」
うん、知識通りです。
俺終わった。
「安心するが良い、殺しはせん。
我は主に興味が湧いたと言っただろう?
まず、主は何者だ?どうしていきなりここに現れた?」
殺されないらしい!良かった。
とりあえず質問には答えなければマズイと思うが…
ここは少し考えないといけない。異世界転移などを話ししたとして問題ないか?
実はよく通勤時間に見ていた小説投稿サイトの転生物だと、秘密にしておいたほうが良いみたいな事がほとんどだった…
でも俺の場合、初っ端から相手が人間とかじゃないんだよね。
という事で、もう悩むのもやめてワゴン車に跳ねられて気がついたらここにいた事、趣味で剣と魔法の世界の話が好きである事、もちろん俺の事、世界の話などもした。
レッドドラゴンは疑いもせず話を聞いてくれたが、ところどころで色々質問をしてきた。
質問された中で面白かったものがあり、レッドドラゴンが俺の世界に行ったらどうだ的な内容だったのでちょっとビビらせてやろうなどと思ったのは内緒だ。
・戦闘機という空飛ぶ乗り物が音の速さで飛んで爆発物を飛ばしてくる。
・核ミサイルって言うのがあって(こっちの世界の王都の広さはわからないから適当)王都一つぐらいは1発で吹き飛ばす。
この2つを言った時は口をあんぐりと開けていて、ドラゴンだけどちょっとだけ仕草が可愛いと思ってしまった。
一通り話も終わるとレッドドラゴンが今後の俺の身の振り方を聞いてきた。
正直なところ何が何でも元の世界へ戻りたい!と思うような気持ちはないが帰れるのなら今すぐ帰りたい。
何故なら、小説投稿サイトの作品のように誰かに召喚された勇者でもなければ、死んで神様に会ったわけでもない。
何よりチート能力なぞ持ってないし貰ってもいない!