冒険者ギルド
冒険者ギルドは露店のオッサンに聞くまでもなく、指刺されて終わった。
露店のほぼ正面にあったよ。
入り口は扉はあるが営業時間中は開けっ放しの様で、そのまま中に入る。
いや、入る前に腕を引っ張られて止められた。
「主は冒険者にでもなるのか?」
「必要であればなるけど、まずは一般的な情報が得られそうな場所がここしか思い当たらないんだ」
「一般的な情報とな。
それならそこらの連中に聞けばよかろう?」
「それは少し無理かな。
知りたい情報が普通知っているのが当たり前の事なんだ」
「ふむぅ」
他に方法が無いわけではないんだけど、奴隷購入して聞くとか酒場で情報を金で買う。
とりあえず思いつくのはこんなところだけど、奴隷購入は奴隷を買うと言うか奴隷制度自体に馴染めそうにない。
酒場で情報買うのはやっぱり今更過ぎることを聞くので頭疑われそうだ。
そういうわけで、冒険者ギルドに入り、受け付けのような場所があるのでそこへ向かう。
受付嬢さんらしい人が慌てた顔で声をかけてくる。
「あのー、後ろにいる女性は貴方のお知り合いでしょうか?」
「え?はい。そうですが何か?」
それを聞いて受付嬢さんが後ろ後ろと。
振り返ると入り口付近でルースミアが1人のハゲのオッサンに声をかけられ、しかも腕を掴んで話しかけている。
あー、これヤバいパターンだ。
しかも普通ならここで俺が声をかけて因縁つけられてってなるんだろうけど…
相手はルースミアだよ。
下手したらあのオッサン食われるぞ。
とルースミアを見ると何も言わず答えず身構えることもせず。
俺との約束を守ってくれてるのだろう。
仕方がない、最悪因縁つけられたらルースミアのお金で解決しよう!
「知り合い?」
しぶしぶ仕方なく声をかける。
「我に知り合いが居ないのは主が一番わかっていよう?」
ヤバい、ルースミアさんちょっとキレてます。
「おい、俺が今彼女に声をかけている。
この意味分かるだろ?」
とこれまたノーテンキに答える歴戦風に見える戦士っぽいハゲのオッサン。
どうしよう。マジでどっちも怖い。
俺の脳内で天秤が置かれる。
右にオッサン左にルースミア。
レディゴー!
あっけなくルースミアの方に傾きオッサンが吹き飛んだ。
うん、やっぱルースミアの方が怖い。
「彼女は俺の大切な仲間です。
これから冒険者ギルドに用事があるので遠慮してもらえませんか?
それと貴方のこの意味というものが全く分かりません」
「んだとこのおおおおおおおおー?」
とルースミアがオッサンを引きずりながら俺の元に歩いて来る。
やはり俺の天秤は正しかったと心で思う。
「主よ、我は主の大切な彼女と今言ったか?」
「いえ、大切な仲間と言いましたよ」
うお!すっかり忘れてた。
慌てて仲間をアピールして言ったが、ルースミアたぶん聞いてない。
あれ絶対自分の都合の良いように解釈してる。だってニマニマしてやがる。
とか思っていたら、ハゲのオッサンが起き上がり、ゆでダコのように顔を真っ赤にしながら怒鳴りだした。
あ、すっかり忘れてた。
「テメー!人が声をかけている邪魔した上に引きづって連れて行くとはどういうつもりだ!」
「えーっと、その…」
「ギルド内での争い事は禁止事項ですよ」
と受付嬢さんの声が聞こえてきた。
その後はビックリするほど素直に歴戦ハゲが身を引き事なきを得た。
受付嬢さん曰く、すぐに助けたかったけれどギルドから一歩であっても外だとギルド権限が使えないそうだ。
「ありがとうございます。おかげで事なく済みました」
「いえいえ、っとンンッウン!…
冒険者ギルドへようこそ!
紹介が遅れました、冒険者ギルド受け付け担当コンシェルジェです。
本日のご用件はギルド登録でしょうか?」
見事な定型文を披露してくれた。
コンシェルジュじゃないのねと内心思ったのは内緒だ。
「登録ではないんです。
冒険者ギルドでお伺いしたい事がありまして」
「対応できる事であれば何なりとどうぞ」
「資料室みたいなものってありますか?」
「資料室ですか?
地理などの冒険者に必要な物であれば少しあります」
「そういった資料を見たいのですが、冒険者証必須とかですか?」
「一般公開もしてますが料金が高くなります。
冒険者証があれば銅貨1枚でそれ以外の方は銅貨5枚になります」
「2人だから銅貨10枚ですよね?」
「お仲間でしたら1パーティ単位で銅貨5枚でかまいませんよ」
丁寧な対応をコンシェルジェさんがしてくれる。
資料室に連れていってもらう。
広さは正直狭い、文句を言っても仕方ないので知りたい事を調べる。