街道
街道を目指して道なき道をルースミアの後について2人無言で歩く。
俺は先ほどの事を考えていた。
それを分かってかルースミアも話しかけてこないで黙っているんだと思った。
あ、もちろんルースミアの顔の血は水で綺麗にしたよ。
「主よ、腹が減ったぞ?」
唐突に言い出す。どうやら俺に気遣ってと言うわけではなかったらしい。
確かに洞窟を出て半日経つ。腹が減るのは当たり前だと思うのに、疑問で言い放った。
「我は本来月に一度食べれば足りる。
人の姿になってからおかしい」
「人の姿になって、人のようになったとか、維持するのに燃費…消耗が激しくなったとかかもしれないね」
「ふむ、どちらにせよ面倒な体になったな」
「それはそうとさっきの事で話があるんだ」
「さっきと言うと、ゴブリンの事か?」
「うん、戦いで惨状になるのは仕方がないと思う、思うんだけどルースミア、噛み付くのは絶対やめて欲しいんだ」
そう、先ほどの戦闘を見ていて思ったのが、獣のように喉元に噛みついていた。
「この世界でも間違いなく人は噛みついて攻撃なんかしないと思うんだ」
「それでは我は手と魔法しか攻撃手段が無いでは無いか?」
「十分です!ってブレスは?」
「この姿では無理のようだ」
「それは良かったよ。ブレスなんか吐ける人間いないからね」
俺も空腹に気がつき魔法の鞄から保存食の中の干し肉を取り出しルースミアと食べながら話を続けて歩きつづけた。
あれだけ硬く噛み応えのある干し肉を容易く食べていた。
やっぱりドラゴンだね。
街道に出るまで、俺が思いつく限りの人間としての行動を説明した。
特に注意したのが、どれだけ頭にきても殺したらダメ、攻撃もダメ。
やっと街道につくとすっかり真っ暗になっていて、俺の足も2時間近く歩き続けて限界だった。
「ルースミア、つ、疲れた…
少し休憩しよう」
「む?そうか、なら休憩するか。
休憩がてら主の世界の話を聞かせてくれ」
俺は地面にへたり込んだ。
ルースミアは俺の正面に座る。
異世界転生物の話をしてみた。
チートとかの話もした。
あまり反応が良くないから面白く無かったかと心配して聞いてみると、神々は普通に存在しているがそこまで万能という事はないと現実的な答えが返ってきたよ。
やっぱり神様存在するのね〜。
それにしてもまるで神様を知っている様な言い方だなぁ。
神々の事を聞いてみたかったが、ルースミアに見つかるから止めておけと口止めされた。
この世界の神々ってどこぞのあの人ですか?しかも複数ですか?
休憩のつもりだったがすっかり話し込んで遅くなってしまい、そのままここで一晩明かすことになってしまった。
火も起こしてなかったが、いまさら月明かりだけでマキを集めれるほど明るくはなかったから諦める。
見張りの順番の話をしたら、ルースミアに寝ていて構わないと言われた。
それは悪いと断ろうとしたら、脳を半分ずつ眠らせられる事が可能だから気にするなと…
衝撃の事実!この世界のドラゴンはイルカのように眠れた。
仕事に行っていた習慣で、恐らく起きる定時と思われる時間に目がさめる。
ルースミアもまたまるでずっと起きていたように座っていた。
「おはよう」
おはようの挨拶をする。まぁ返事は予想通り、おはようとはなんだ?だった。
おはようを説明し、道中干し肉をかじりながら街道を西に歩く。
馬車に荷物を載せた商人にその護衛らしき数名の武装した人達、冒険者っぽい人達とすれ違った。ルースミアに魅入ってる人がいたり、こちらを見てコソコソ話したりする数名がたまにいる程度で特にテンプレっぽい事もなくて済んだ。
まぁこっちも見たり、ルースミアと話してるしね。
「連中、あんなゴテゴテと荷物を持って大変そうだな」
ルースミアのその言葉でハッとなる。
そうだ、彼らは武装し、背負い袋から何やらで重そうだが、俺ときたら鞄一つだけでルースミアに至っては荷物すらない。
ここがファンタジーな世界の異世界である事を思い出させてくれた。
「まぁ、魔法の鞄を持っているって言えば大丈夫だよね?
ルースミアのとこに来てた人達だって持ってたんだし」
「積載量は我のとは比べものにならないがな」
「そりゃね」
なんて事を話していると巨大な壁が見えてきた。
「主よ、交渉事は全て主に任せる」
「そうなるよね。
じゃあ先に可能性がある事だけ設定しておこう」
少し考えて伝える。
「2人は旅の仲間で、俺は27歳でルースミアが…」
「我は人の年齢で言えば、だいたい20歳ぐらいのはずだ」
おおう、俺の世界なら成人だ。
でもこういう諍いのある所って精神年齢高くなるし、小さい頃から仕事したりするだろうから15歳辺りで成人だろうな。
異世界物の話もだいたいそうだし、日本でも戦国時代は15歳ぐらいだったっけ?まぁ細かいことはいいや。
「じゃあ20歳で。
あとは…適当でいいや」
はい、俺実は行き当たりばったりな性格です。