プロローグ
遠野沙原は今、人生最大最悪の危機に瀕している。
全身が酷い激痛で仰向けに倒れたまま身動きが取れない。
そして目の前には遠野沙原を見下ろしている巨大なドラゴンがいる。
どうしてこんなことになったのか。
ほんの少し前まで年末シーズンの金曜日に、年内に間に合わせなければならない作業のため残業をし、キリがいいところで終えて帰宅するところだった。
十字路に差し掛かろうとした時、前方からワゴン車が明らかに制限速度以上の速度で走ってくる。
危ないなぁなどと思っていると、横道からも車が徐行運転することなく飛び出してきた。
あっという間もなく前方から猛スピードで走ってきたワゴン車の横っ腹に激突した。
衝撃を受けたワゴン車は速度を落とすことなく進路を変えて、遠野沙原の方へと突っ込んできた。
咄嗟に慌てて身を固めて目を閉じてしまう。
次の瞬間、もの凄い衝撃を全身に受けそのまま体が後方へと吹っ飛んでいった。
そのまま意識を失いそうになるが、ワゴン車にノーブレーキでぶつけられた全身の激痛に加え、背中から地面に落ちた衝撃で意識はなんとか保てた。
仰向けに倒れた身体は激痛で全く動かせないため、助けを求めようと見下ろしてくる視線を感じた方へと瞼をゆっくりと開ける。
霞んでぼやけながら目を向けると、そこには人ではなく巨大なトカゲ…どちらかといえばワニに近い顔が遠野沙原をただじっと見下ろしていた。
瞬間的に大きく目を見開き慌てて逃げようとするが、身体は激痛で動かせず、恐怖のあまり視線もそらせなかった。
半ば諦めたように見ると、獲物に食いつく爬虫類のような無機質な感じの目ではなく、何かを考えているような知性を感じ取れた。
遠野沙原は思い当たる答えが一つだけあった。
しかしそれは物語にしかいるはずのない生物…ドラゴンだった。
想像を文章にするのは難しいですね