010_000 異世界になにか一つだけ持って行くならパンツを選べ。
「――るじ」
「……? ぅん……」
誰かの声と同時に、肩が揺すられたことで、意識が浮かび上がる。
声はそんなに大きいものじゃない。しかも揺する力も控えめで、優しい。
だから完全覚醒するには足りないので、すぐに心地良い眠りに引きずり込まれかける。
「主、起きてください」
「うぅ……?」
さっきよりハッキリした、だけど抑揚のない声に、気合を入れて瞼を開くと、あまり表情を変わらない女の顔が覗きこんでいた。上下反対に。
……あぁ、そっか。俺、椅子に座って背もたれに寄りかかって、上を向いてうたた寝してたのか。
「眠い……」
「私だって眠いですし、他の二人も完全に寝ぼけていますけど、シッカリしてください」
遊牧民族みたいな服を着た女性の、眠気なんて全然感じない声に、けだるい体をなだめて首を動かすと、朝の台所が視界に入る。
壁はレンガ造りそのままで壁紙なんてない。『IHってナニ?』って主張してる竃、壁に埋め込まれた薪焼き式のオーブンって、俺の常識にはなかった台所だけど。
「昨日の残り物ですけど、朝食にしますから、二人を起こしてください」
そしてテーブルを挟んで、彼女が示す二つの背中も目に入る。
向かいの席の背中は、寝るつもりで腕を使って突っ伏してるが、隣に座る小さい背中はデコ寝(額を机につける寝方)で腕垂れ下げてるから、気絶したのかもしれない。
「お~い、ティア~。変な格好で寝るな~」
隣の小さい女の子に手を伸ばして、シャツの後ろを掴んで体を引き起こす。
「うゆ……火がいるの?」
「危なっ!?」
まぶた半開きの顔を上げたと思ったら、ボッと音を立てて火を吐いた。
目の前に小さな火柱が立って、驚いて俺が思わず手を離したせいで、痛そうな音を立ててデコから再着地したのに、その子は目を覚ます気配がない。
まぁ、当然なのか?
俺の感覚じゃ小学生かも怪しい。大人用の椅子に座れば、足が宙に浮く背の低さ。鮮やかな赤髪のおかっぱ頭は小さくて、ボールみたいに掴んで持ち上げられそうな気がするお子サマ。
だから寝ぼけるのも無理はないって意味じゃなくて。
こう見えて、人間じゃないし。
だから少々のことじゃ起きないし、顔ぶつけるくらい平気だろうし、頭で体を支えて器用に脱力するのも簡単……なのか?
「お~い、カシス~。朝メシだぞー」
「う゛~……? ごはん~……?」
隣を起こすのは諦めて、向かいに座る背中に声をかけると、モソモソ動いて顔を上げた。
歳の頃は俺よか少し下。いつもツバ広の三角帽を被ってマントを羽織ってるけど、家の中じゃ脱いで、チュニックに短パンという楽な格好をしている。それから窺える体の線は、起伏がハッキリとせず、しかも紫がかった長めの髪をお下げにしてるので、中学生か高校生かと評するのに迷うところ。西洋人の顔立ちなので、それを加味するともう少し下かも?
この子はまぁ……一応は人間だけど、普通じゃないからなー。
「ありがとうごじゃいましゅ……肉球さえあれば……肉球に神の力が宿れば……世界は救われるのでしゅ……」
こんな寝言を言うようでは、いろんな意味で不安なんだが。
「……って、おい! なにかじろうとしてる!」
「りんご……」
「食うな! それ違う!」
寝ぼけて自分の部屋から持ってきたのだろう、手に持った金属の球体を取り上げる。
俺の記憶が正しければ、研究開発中の爆弾だったと思うんだが。投げて衝撃与えればボカンと一発使い捨てで、まだ安全装置がなかったはず。
「……二人ともダメだな」
最初に声をかけてきた、台所に立つ女性に振り返って肩をすくめる。ちなみに俺は二人が寝ぼけてデンジャーな真似してくれたので、すっかり目が覚めた。
「アル、どうする? 寝かしておくか?」
見た目は俺よりひとつふたつ歳上って感じ。俺の知識では、胡服とかいう中国の昔の衣装に近い格好だ。解けば足元近くまで伸びている長い髪は、今は綺麗に結い上げてある。その色はなんと青という俺の常識外の地毛だ。
出るとこ出て、引っ込むところ引っ込んでるオネーサンって感じだけど、歳は……どう数えていいのか不明なのだが、ゼロ歳って考えるべきか?
とにかく他の二人と同じで、やっぱり普通じゃない。
「仕方ありませんね……」
そう言いつつミトンを外すと、アルが『手刀』を作って振り上げる。指先伸ばして力を込めて刀の形にするんじゃなくて、手を刀に。
「ふんっ!」
肘から先が刃物に変わった腕が叩き付けられると、テーブルが真っ二つになって、音を立てて中央に倒れる。
「ぶぎゃ!?」
「きゃんっ!?」
そしてテーブルに体を預けて寝ていた二人は、頭から転がる。
「いたたた……?」
「なにが起こったの……」
確かに二人とも起きた。起きてキョロキョロ現状把握しようとしてるけど。
「アル……もーちょっとマシな起こし方できないのか?」
思わずジト目を、テーブルを切断した人物に目を向けるが。
「これが一番手っ取り早いです」
だけど当人は無表情にスルーして、腕を振って元に戻す。一瞬で刃物が人間の腕に戻るのだから、ちょっとした手品だ。
いやー、普通だったらこんな光景、驚くものなんだろうけどな? 火炎放射幼女にも、爆弾かじろうとする娘にも、腕が刃物になる女にも。
でも、もう慣れました。人間の慣れって怖いです。
「朝食にしましょう」
「をい、アル。テーブルどうするんだよ」
青長髪の女性の名前を、俺たちはアルと呼んでいる。
「あー……とりあえずコタロー、修理頼んだ」
「をい、カシス。後始末を全部俺に押しつけるな」
紫髪マントの女の子を、俺たちはカシスと呼んでいる。
「くー……」
「をい、ティア。頭からずっこけたまま寝ようとするな」
赤髪の子供を、俺たちはティアと呼んでいる。
なかなかデンジャラスな女子三人と、二一世紀の日本に生まれた学生である俺・梶尾虎太郎が、西洋風古民家で一緒に生活しているのは、当然ながら理由がある。
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その説明の前に、自己紹介の必要があるか。
念のため名前をもう一度。梶尾虎太郎。年齢は一八歳だけど、個人的はプラス三歳と言いたい。確実に高校生ではないが、大学生かというと微妙。意味不明なこと言ってると思うが、その理由は後で説明する。
出身は大阪。実家はお好み焼き屋……厳密には鉄板焼き屋だ。
親父が大の野球ファンで……だから俺の名前がコレだと想像がつくと思う。当て字で読めないキラキラなお名前じゃないから、さほど不満はないけど。あと現代日本でその意味は薄れてるっぽいが、その名の通り長男だ。同時に末っ子でもある。
趣味、と言うとビミョーな気がするが、料理をすることが多い。実家の店を手伝ってたのもあるし、考えごとをする時は、なぜか台所で手を動かすのが一番頭が回る。
あとは……成績は普通。性格も普通。顔も普通、だと思う。特技と呼ぶほどではないが、料理以外の家事一般はできると思う。あと特記するとすれば原付免許所持。
まぁ、自分では普通の人間だと思う。日本の都市部で辺りを見渡せば、掃いて捨てるほどいるような。
そんな俺がこんな場所で、こんな生活をしている理由だけど――
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――思い起こせば三年近く前。高校を卒業した春だった。
特になにかやりたい事があったわけではない俺は、成績に見合った、近畿圏の大学に進学した。
大学は実家から通うのは不可能ではないが、少々時間がかかる。また親父の方針により、最低限の支援を受けてだが、それを機に一人暮らしをすることになった。
学費以外は自力で稼いで生活していくことに不安はあった。だけど一人暮らしに憧れもあったので、俺はそれを了承し、大学近くのアパートに引っ越した、その日の夜のことだった。
「まさか、お前と大学が同じだけじゃなくて、部屋まで隣とはなぁ……」
「なんそれ? ウチが隣やイヤなん?」
あー、まー、俺の現状とは直接関係ないんだが、その時のことを思い出すと、どうしてもついでに思い出す記憶があるワケで。
同じ日に入ったであろう、隣の部屋の入居者に、俺は玄関先で挨拶を受けたんだ。
菓子折りも石鹸もタオルも蕎麦も持たずに来たその女。着ているのは洗いざらしのトレーナーにジーンズ、髪の毛は美容院に行くのを面倒くさがって伸ばしっぱなし。飾り気なんてゼロなのにモデル体形が補って余りある。黙ってれば和風美人で通るから、人気あるんだよなコイツ……
不満そうに唇を尖らせる女の名前は、三輪龍乃。父親同士が年甲斐もなく拳で語り合った末の、家族ぐるみの付き合いもあり、一〇年以上も腐れ縁が続いている、俺の幼なじみ。
幼なじみは幼なじみ。それ以上でもそれ以下でもない。血のつながりはないから姉でも妹でも従姉妹でもなく、ましてや彼女などではない。幼稚園から高校まで同じ場所に通い、同じクラスになったのは七割強の確率。そしてこれからも同じ大学の同じ学部に通うことになる。これを腐れ縁と呼ばずしてなんと呼ぶ。
ちなみに龍乃の親父さんも野球ファンで、こちらは中部地方から仕事の都合で転勤した人だ。俺の親父と思考回路は同じため、中部の人でまだよかったと思う。龍なんてカッコよくても可愛いイメージはない。星とかツバメなら女の子らしくてよかっただろう。でも野牛とか巨人とかハム戦士にちなんだ名前を考えたら、娘がグレてるかマッシヴになってる姿しか想像できないので、それよりはマシだと思う。
「大体このアパートは、ウチの叔母はんが大家やってるから、虎太郎もこの部屋、格安で借りれたんやろ?」
そしてどうでもいいが、生まれも育ちも大阪な俺より、生まれは違う龍乃の方が大阪弁がキツい。そもそも他所の人が考えるより、コテコテな関西弁しゃべる人はずっと少ないからな。
「それについては、龍乃の繋がりに感謝してる。そして同じ大学に行くから、同じアパートなのも納得しよう。だけど、なんで隣?」
「他の空き部屋はもう入居者が決まっとったから、ここしかなかったねん」
ここまで来ると、龍乃は腐れ縁を超えた存在のような気がしてくる。なんて呼ぶのか知らないが。
……『運命の相手』? あー、そーゆーのはナシでよろしく。
だから俺はため息をついてしまった。
「ウチが隣なのがイヤそうやね?」
「嫌というか……まだお前との腐れ縁が続くんだな、と……」
龍乃は悪いヤツじゃないんだ。それは重々承知している。
幼稚園時代には一緒に風呂に入って一緒の布団に包まってお昼寝してたし。
毎朝のように俺の家にやって来るから、小中高と一緒に学校に行ってたし。
毎年春先にチョコとクッキーを渡し合う仲だし。
同じ内容の弁当を作って一緒に広げていたことも一度や二度ではないし。
どんな人間かってのは、嫌になるほど知っている。
でも、勘違いする連中もいるが、間違えてほしくない。
小学生の時はお決まりのように夫婦ってからかわれたけど。
中学生にまでなったら、なんか公認っぽくなってたけど。
高校生になったら一週回って面倒なことになったけど。
龍乃が告白された時には、勝手に俺の名前を利用して断ってたけど。
それが原因で俺が嫌な目に遭ったことも一度や二度じゃないけど。
フラグはおっ立ててない。龍乃は俺の彼女じゃない。違うって言ったら、違う。そこ重要。
だからハッキリ言っておく。
「飯たかりに来るなよ」
「うぐ……」
やっぱり龍乃はそのつもりだったらしい。
俺は店を手伝ってたこともあるし、それ以外でも料理してるから、『普通にうまい』レベルは作る自信がある。
だけど龍乃は、壊滅的にヘタ。救いようがないほどに。自分で作った料理を自分で食べて後悔するほどに。
コンビニとかレトルトとか外食とか、手段は色々あるから、料理できなくても困らない現代日本だけど、それでよく一人暮らししようって気になったなぁ……とは思う。
「毎食なんて言わへんから!」
「ダメ」
「外食とかコンビニばっかりや、なんぼバイト入れてもお金厳しいの!」
「ダメ」
「缶詰ばっかりとかイヤなんや!」
「ダメ」
妥協したらズルズルと、龍乃はこの部屋に入り浸るようになるのは目に見えるので、そこはキッパリ言っておく。
尻にホクロがあることを知ってる仲だけど、いちおー相手はヨソんチの娘さんなのですよ。男の部屋に入り浸らせるのは、あんまり良くないと思うワケです。龍乃のお袋さんから『虎太郎くん、ウチの子、嫁にもらってくれない? でないと絶対に孤独死するから』なんて言われたこともあるけど、そして冗談とは思えなくて笑えないんだが、今以上に親密になるのはどうかと思うわけです。
「俺、風呂に入るつもりで湯入れてるから、もういいか?」
そんなわけで突っぱねようとしたのに、三輪さんチの娘さんってば。
「コタぁ……」
「うぐ……」
切り札を出してきたんです。出されてしまったのですよ。龍乃の必殺・上目遣いによるオネダリ。しかも幼なじみ故の昔の呼び方というオマケつき。
「…………はぁ~~~~」
結局は俺が折れるしかない。いつもそう。龍乃のこういう顔は弱い。
「……土日の晩飯だけ。平日は大学もバイトもあるから、帰りが何時になるかわからない」
「もう一声!」
「……平日は早く帰った時のみ」
「もう一声!」
「調子に乗るな」
「いたっ!?」
龍乃にデコピン一発くれてやって、その話は打ち切った。
「それじゃ、もういいな? 俺、これから風呂入るから」
「え~? 今日のご飯ないん?」
「引っ越ししたばっかりだったから、今日は俺もコンビニ弁当だったんだよ」
「ぶー」
「早く出て行かないと、今ここで服脱ぐぞ」
「わかったってば……」
まぁ、そんなことがあり、幼なじみ故の気安さで龍乃を追い出して。
俺は、引っ越して最初の風呂に入った。体も足も伸ばせるほど広くはないが、湯船に浸かってゆったりとした気持ちになっていて。
そしたらいきなり、底が抜けた。
「……………え?」
一人暮らしに相応しい、1Kの部屋についたユニットバスだ。当たり前だけど、溺れるほどの深さもない。気持ちよくて眠ったわけでもない。
なのに気のせいではなく、いきなり水中に引きずり込まれた。
「―――ッ!?」
なにかに足を掴まれた、という感じじゃなかった。足がつって溺れた感じとも違う。経験ないので想像でしかないが、超巨大な掃除機に吸い込まれたら、あんな感じだと今なら思う。
抵抗することもできず、湯船の縁を掴む間もなく、いきなり口元、そして鼻に水面が上がってきて、俺の体は沈んでしまった。
だけど次の瞬間、俺の体は宙に投げ出され、硬い床に叩きつけられた。
「いてっ!」
とはいえ、落下した高さは知れていたらしく、痛みは大したことはない。
それよりも驚くべきことがあったから、すぐに痛みのことなど忘れてしまった。
「……………え?」
そこは暗い屋内だった。ただしもちろん、自分の部屋ではない。
電球ではない明かりに照らされたそこは、壁も、天井も、柱も、全てが古びた石造り。広さは相当、小さな野球場くらいはある。天井も高いらしく、たいまつの炎では照しきれず、薄暗かった。
その広い部屋のほぼ中央。床に光る砂みたいな物で描かれた、複雑で大きな図形に、俺は横たわっていた。風呂に入っていたせいか、周囲の床が濡れていた。
「……………………………………………………」
そして真正面に、魔法使いの帽子とマントのようなものを身につけた女の子がいた。現代日本じゃハロウィンの時期にしかお目にかかれないような、とんがり帽子と黒くて長いマントでコスプレ中?
俺を見て……もう少し具体的に言うと、仰向け未満に尻もちついて倒れた、俺のM字開脚な足と足の間を正面から見て、固まってたけど。
「……へ」
その女の子は、口元と肩と拳をワナワナ震わせ、絶叫した。
「ヘンなモノを見せるなああああぁぁぁぁっッ!!」
「ムチャ言うんじゃねぇええええぇぇぇぇっッ!?」
理不尽さに思わず叫び返した直後、風呂に入っていたので当然素っ裸な俺の体を、グロス単位の衝撃が貫いた。
△▼△▼△▼△▼
そんな経緯があり、俺はこうして全く違う世界にやって来て、想像していた大学生活とは全然違う生活を送ることになった。
別な意味で衝撃的だった、この世界に来た日のことを、俺は今でも忘れることは出来ない。
できれば忘れるか、夢ってことにしたいけどな?
でも残念ながら夢じゃないんだよなぁ……
「なによ?」
俺の視線に気づいたらしい。その時の張本人・カシスが、食後の薬草茶のカップを持ったまま、見返してきた。
ちなみに、さすがに朝メシを食ってる間に、全員目が覚めたらしい。
「俺がこの世界に【徴兵】された時、カシスにボコられたのを、ふと思い出してな……」
言うとカシスは顔をしかめて言い返す。
「あれはコタローが悪いんじゃない……ヘンな格好でこっちの世界に来るから」
「文字通り裸一貫でやって来た俺を哀れめよ!?」
他の【召集兵】はそんな事ないのに。ちゃんと服着てるのに。場合によっては準備万端状態なのに。
なのに俺の場合は、神がかっているほど悪いタイミングだった。
だから拳を握り締めて叫びたい。
「せめてパンツはかせろよ!?」
「それ、強調すること……?」
「カシスはパンツ大事じゃないのか!?」
「いや、確かにないと困るけどね……? でも、もっと大事なものがあると思うわよ……? あと、あたしに文句言われても困るんだけど……」
うん、まぁ、俺をこの世界に連れて来たのは、カシスじゃないってのはわかってるけど。
「私も【徴兵】された時、パンツはいてませんでしたよ?」
そうおっしゃるアル姐さん。
いやそうですけどね? でもあなたがこっちの世界に来た時は、はいてなくて当然でして。
「ティアもパンツはいてなかったよ?」
そうおっしゃるチビッ子ティア。
いやそうですけどね? でもあなたがこっちの世界に来た時は、はいてなくて当然でして。
「カシスは?」
「はいてたに決まってるでしょ!?」
「完全無欠フォロー不可能にパンツはいてなかったのは俺だけか!?」
「も、朝からパンツパンツ言わなくていいから!」
赤い顔して怒鳴るカシスさん。実年齢的にはムニュムニュムニュなのに、いまだウブいこの人は、誤魔化すように手を叩いて、大声で全員に言い募る。
「はい今日のお仕事! 町内会から門の修理とその炊き出しに参加してくれだって! あたしとコタローが行くから、ティアとアルさんは家のことお願い!」
「へいへい」
「今日も一日、頑張りましょう」
「おー」
店長様のお言葉に、それぞれに気合を入れて、椅子から立ち上がる。
そして雑貨屋の一日が動き始める。