表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴルフが出来ない魔王城  作者: 星狼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

ゴルフが出来ない日々

魔王城の謁見の間は、騒ぎの余韻がまだ残っていた。

割れた机の破片が床に散らばり、炎の燭台の火が弱く揺れている。

衛兵たちは壁際に控え、メイドたちは互いに顔を見合わせながら、静かに息を潜めていた。

そして、皆の視線が集まる先――バルバトスは、ゆっくりと深く息を吐いた。

周囲から声が聞こえる。


「先代が戻って来た……」


「バルバトス様が戻ってきた……」


「これでこの国は必ず良くなる……」


拍手が、ぽつぽつと始まった。

やがて、それは謁見の間全体に広がり、温かく、しかし力強い音となる。

バルバトスは周囲を見回し、照れくさそうに頭を掻く。


「もう、ホンマに勘弁してくれ。ワシ、もう隠居したいんねん……せやけど、本当、皆、うちのバカ息子のせいですまんかったのぉ……?隠居撤回や。このボケのやらかした責任だけはワシが取らんと……」


セバスチャンは静かに一歩進み出る。

燕尾服の裾を軽く払い、バルバトスに向き直った。


「バルバトス様。バルバトス様にはその責任があります。大きな力を持った者には大きな責任が発生します。そして、それを正しい道に導けるのは、バルバトス様です。私もこの命が尽きるまでお供します。さぁ、この国を導きましょう」


バルバトスは苦笑いを浮かべ、肩を落とす。


「ホンマ、ま〜た、ゴルフ出来へん生活やわ……」


セバスチャンはすぐに表情を引き締め、衛兵の一人に視線を向けながら言う。


「早速ですが、バルバトス様。現在、勇者軍が霧の谷の付近にいます。明日には霧の谷に突入する模様です。現在我々の軍が、霧の谷で迎撃するように待機しております。」


バルバトスは目を丸くし、慌てて手を振る。


「おい待ておい待て。何やっとるねん!?キュレムタウンで、どえらいことになっとるんやぞ!?今、そんな事したら、また関係性悪くならんか!?」


セバスチャンは即座に頷き、衛兵に指示を飛ばした。

「その通りでございます。おい、そこのお前。今すぐ部隊に伝えて来い。戦闘中止だ!」


衛兵は力強い敬礼をする。

「はっ!了解です!」

そして走る。


バルバトスは顎に手を当て、考え込む。


「待てよ待てよ?逆にチャンスか?これ、逆にチャンスか……?勇者軍って事は、それなりに地位あるやろ?って事は、和平交渉のチャンスか!?」


セバスチャンは素早く反応する。

「和平交渉の準備は出来るか!?料理だ!料理を準備しろ!明日には勇者軍がやってくるぞ!」


メイド達が元気よく答える。

「はい!かしこまりました!」

そして走る。


バルバトスは頭を抱え、ため息を一つ。


「もう、何処から手をつけていいかわからんぞこれ……とりあえず、キュレムタウンとは今すぐにでも和平交渉しなきゃアカンやろ……?」


セバスチャンは宰相に視線を移す。

「宰相グロス!即座に和平交渉の準備を進めろ!」


宰相グロスは穏やかな笑みを浮かべて答える。

「かしこまりました!」

そして走る。


謁見の間は、再び活気づき始めた。

衛兵たちは動き出し、メイドたちは厨房へ急ぎ、宰相は書類を抱えて歩き出す。

バルバトスは王座の脇に腰を下ろし、疲れたように目を細める。


物事を解決するには、力が必要な事もある。

しかし、力だけが全てではない。

言葉の力が必要になる事はある。

そして、バルバトスの力は衰え始めているが、まだ言葉のパワーは失われていない。

ゴルフの出来ない日々がまた続く事になりそうだ。


炎の燭台の火が、静かに揺れていた。

魔王城に、新しい朝が訪れようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ