圧
エルトルト家:500年前の戦争前からオロガルドの政界人を多く輩出する名家。エルトルトの人間は幼いころから「結果こそがすべて」この家訓を教えられている。
「イレーネ様,本日も勉強していきましょう!」
ーーあれから2週間がたった。定期テストまであと1週間エミールとイレーネは定期テストに向けて熱心に勉強に励む。
「本日はここまでにしましょう。」
「分かったわ。あんたは夕食の準備をしなさい。」
そういうと,イレーネは再びノートに視線を戻す。イレーネの目の下にはくっきりとしたくまができている。エミールは言葉をかけようとしたが,集中を阻害してはならないと思い,そのまま扉を開けた。
数十分後,エミールはイレーネを呼びに行く。
「イレーネ様,お食事が完成いたしました。」
「わかった,すぐに行くわ。」
イレーネがリビングに行くと,そこには思いがけない人物がいた。
「お父様!?」
「イレーネ,久しぶりだな。」
イレーネは驚きを隠せない。それも無理はないだろう。クラウスはこの国の首相,夕食を一緒に取ったことなど数えるほどしかなかった。驚きつつも,席に着く。終始,黙々と食べ進める三人だったが,クラウスが沈黙を破る。
「イレーネ,来週に定期テストがあるそうじゃないか?」
「はい,お父様。」
「我がエルトルト家の威厳を落とさないためにも,頑張りなさい。」
言い終わると,クラウスはナプキンで口の周りを拭き,自分の部屋に向かった。クラウスの背中から漂う威圧感が、まだ食卓に残っているようだった。
イレーネに視線を向けると,下を向きながら硬直していた。
クラウスに言葉をかけられ,イレーネにもさらに気合が入っていた。
テスト最終日を迎えた。
「本日はここまでにしましょう。」
テスト前最後の授業が終わる。
「そう,私はまだ勉強するからあんたは夕食の準備をしていいわよ。」
イレーネは再びペンを持つ。
「本日のご夕食なのですが…
若者に人気のイタリア料理店の出前にすることにしました。なので,少しお話しませんか?」
「はぁ?,私に庶民の店の出前を食べろというの?」
「イレーネ様は未来のオロガルドを引っ張っていく存在です。庶民の好みを理解するのも大事だと思いませんか?」
イレーネは少し間をあけた。
「いや,だまされないわ。あんたが手を抜きたいだけでしょ。」
「たしかにそうです。
ですが,準備や洗い物の時間が無くなれば,イレーネ様の勉強に付き合うことができる時間も増えますが…
やはり,私がお作りしましょうか?」
イレーネはエミールをにらみ
「…今回だけ特別よ。」
しぶしぶ承諾した。
「それでは,出前が届くまで勉強しましょうか?」
「そうね。ここなんだけど…」
「その前に,少し聞きたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
主人の言葉を遮る。
「なぜ,イレーネ様はそんなに努力をされているのですか?」
「簡単なことよ私がエルトルト家の人間だから。」
イレーネは下を向きながら続ける。
「小さいころから,私は父に褒められて育ってきた。でも,1年前テストで2位を取った時,態度が急変したわ。そこで私は気づいたのお父様は私の努力を褒めていたわけじゃない。私の取ってきた結果を褒めていたんだとね。」
「だから何としても,1位を取らないといけないの…
結果がすべてなのだから。」
イレーネはどこかさみし気な瞳で,エミールを見つめる。
「そうでしたか…。ただ私はあなたがどれほど努力をしたのか知っています。きっとイレーネ様なら,良い結果を出せると思いますよ」
イレーネは下を向いた。その頬をつたった雫が、静かにワンピースの胸元を濡らしていった。
ピンポーン
チャイムが鳴った。
「どうやら出前が届いたようですね。取りに行ってきます。」
その後二人は食事をとり,テスト前最後の追い込みを行った。
「イレーネ様,ここまでよろしいでしょうか?」
ふとイレーネの方を見ると,寝息を立てている。
疲れがたまっていたのだろう。
彼女の寝顔を見つめながら、エミールは心の中で静かに誓った――必ず、この努力が報われるように支え続けようと。
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