表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雲間の中に青空一つ

「今日の分の放送が始まるぞ!」

 父親の声に子どもたちや母親もテレビの前に集まる。そして一家は画面を食い入るように見つめた。

 一秒、二秒。

 不意に画面に色が付く。

 広く広く続く青い空の中では白い太陽が輝き、その下には青々とした草原が広がっている。

 緑の絨毯の向こうに見える黒ずんだ小山のようなものは朽ちた建物の残骸だろうか。

 そんな景色を映しながらゆっくりと映像が動く。そして地上を観測しているAIの言葉が流れた。

「このような清浄の地は増えています。地上の汚染濃度は順調に下がっています。皆様、もうしばしの辛抱です」

 その言葉が繰り返されるとともに徐々に映像が乱れ始め、やがて途切れてしまった。今日の放送が終わったのだ。

「もうしばらくしたら私たちもまた太陽の光を浴びれるのね」

「ああ。地上はいまロボットたちが洗浄をしてくれているからな」

 全世界を巻き込んだ戦争のあと、汚染された地上から地下に逃れてきた生き残りの人間たちは、毎日送られてくるロボットたちからの映像のおかげで希望を無くすことなく今日も暮らしていた。



 人々に生きる希望を与える放送が終わったあと、ロボットは再び地上の汚染を取り除く作業を再開する。

 死んだ大地には緑の気配などなく、黒く重い雲が常に太陽の光を遮ることで常に暗い。人間たちにあの映像のような本当の景色を見せることが出来るのはまだまだ先になりそうだ。

 遠くの空ではほんの少しだけ雲が切れて光が差し込んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ