父娘
ありとあらゆるゴミが高く積み上がった部屋だった。壊れた家電製品と散らばった衣類が土台となり、弁当のプラ容器を食べては捨て、ペットボトルを飲んでは捨て、そこへまた脱いだ服を放り込む。そして床が見えなくなったのだろう。玄関まで溢れている。
地方都市郊外の住宅街にある、古びたマンションの一室。近隣の人々に住民について聞くと口を揃えて同じことを言う。
親子が住んでいる。身なりの汚い年配の男が父親で、無職でいつも酒を飲み、社会性がなく町の嫌われ者。
長女はスーパーマーケットでレジ係員をしており、器量が良く、愛想も良く、看板娘でよく知られていた。
母親は他界しているという。次女と一男は知的障害があり、養護学校の高等部に通っている。
一家は長女が支えているのだろう。人と関わりを持たず、交友関係は誰も知らなかった。
室内は居住空間が狭い。一応、ゴミを分散させたのかリビングだけ比較的ゴミの山が低く、そこに布団が4つ並んでいた。
中央の2つだけが何故か汚れ方が激しい。
「お風呂に入ったの?」夜、長女の彩季が帰宅すると必ず、妹と弟に声をかける。2人とも衛生の概念がなく、いつも学校から帰るとそのまま寝転がっている。
脱衣場は無論、衣服を中心に埋もれているが浴室だけは彩季が毎日出勤前に掃除していた。
彩季は小柄で、大きな丸い瞼と丸顔が特徴的な可愛らしい容姿をしていたが怒ると怖かった。
妹の聡子、弟の正にとっては母親のような存在だった。湯を沸かして2人とも風呂に入れる。正は重度の精神遅滞により、まだ姉の成熟した身体を見ても、わけも分からず勃起するのみだった。
彩季も裸になり、後ろから弟にシャンプーとボディーソープをして浴槽に入れ、自分もその後シャワーを浴びて弟を先に出す。聡子が正の身体を拭く、という連携で風呂を済ます。
背丈からは想像できないほど大きく膨らんだ乳房、幅広く肉付きの良い垂れた尻、ふっくらとした太もも。
正がそれを眺めていることを彩季はまだ知らない。
父親の真司はいつも夜中に帰ってきた。彩季から小遣いをもらい、飲み歩きとパチンコをしている。
物音がする。酒臭い。野獣が入ってきたかのような悪臭と息遣いで彩季は目覚める。視線を感じる。
「お帰りなさい」
半身を起こす。
彩季はもうこの後、何が起こるのかを知っている。その瞳は人間を憐れむかのような、慈愛に満ちた光を帯びていた。




