18話 現実逃避3
3人のフルダイブゲームの技術が起こした奇跡の存在を見送った。僕は取り敢えず今回の騒ぎの原因となったプレイヤーネームをユキと書かれている女の子の方を見る。
白い軍服風のケープポンチョに白のショートパンツを着た10代半ばの見た目の美少女は、居心地が悪そうにそのダークブラウンの瞳を自分の黒上に青のインナーカラーが入った髪にやり気まずそうにしている。
分かるよ。なんかやらかした後って自分から話切り出すの難しいよね!!
僕が親近感を感じていると見かねたアンネロゼが話を切り出す。
「取り敢えず許してもらえたみたいで、よかったね」
「はい、ありがとうございました」
「もう、無闇に人を怒らせるなよ」
「いや、唐辛子コーデは、なにもしてないよね?」
前言撤回やっぱ親近感なんて感じないわ、こいつ斬っていいかな?こういうズバッと言っちゃう性格なんだろうけどさ。言い方ってあるじゃん。
僕が剣を実体化させようとしてるとアンネロゼに頭を叩かれ止められる。
「それじゃあ私達はこれで!!」
「あ、はい」
「また会ったら今度は一緒に冒険できたらいいね。ほらアンタも挨拶ちゃんとする」
「顔と名前覚えたからいつかぶった斬ってー」
「馬鹿な喧嘩売ってないでいくよ!!」
僕は後頭部に本日2度目の叩きを喰らい、引きずられていく中でユキを斬る事を誓いながら僕は門を潜った。
「愉快な人達だったな」街の方からそんな呟きが聞こえた気がした。
されるがままに引きずられながら街道を暫く進む。10分間それが続いた後、漸く解放されたと思い背後を振り向くと森林地帯が僕の視界いっぱいに広がっている。
「森?」
「そう、エリア名は『フンバナ大森林』北から南にかけて広がるこの大森林は、山や洞穴なんかあって多くの素材が採取できる場所でもある。ナイトロードで生産職プレイヤーが多いのも自分で素材を豊富に取れる場所が近くに有るってのも理由の1つなの」
「へー」
地図で靡きの草原と比べてみても圧倒的に広いこのフィールド、フライくんと立てた夏休み前迄に王都に着くという計画がある為真っ直ぐ踏破する予定に変わりはないが、いつか時間が出来たらこの広いフィールドを探索し尽くしたいと思わされる。
「さっさといくよ」
「オッス!!」
初めてのエリアに感動していたら森の中に既に入っているアンネロゼからお呼びが掛かり僕も森の中に入っていく。
さぁ、このバージョンアップした僕の力を見せてやるよ!!
「おーーりゃーーー!!」
20分後僕のは、惚けた顔で眼の前で起きている戦闘いや、殺戮を眺めていた。
ことの発端はフライにも聞いていた職業とレベルの質問だった。アンネロゼは、『ああ、私のレベルは38で職業は重戦士だよ。そういえばまだ私の戦闘する姿を見せてなかったよね?うん!!今から見せてあげるからよくみておきなさい』
両手でハルバードを装備したアンネロゼが金髪を靡かせ、凄い満面の笑みで大木の間を縫うように走り抜け次々と目新しい猿型モンスターを殲滅していく。
お前なんなの?!ちょっと怖いんだけど?!いつものゴスロリ装備で想像出来ない戦闘繰り広げてんですけど?!
一種のファンタジーに面食らっていると彼女の心の叫びが児玉するように響き僕の耳にも聞こえる。
「聡太のバカヤローーーーーー!!」
そこで気付く。彼女はあの鈍感野郎のクソボケで溜まったストレスをこうやって解消するする為にハルバートを手に取ったのだと。
僕はもう彼女に喧嘩を売らないと心に誓い、結局今夜は彼女の無双劇を観てエリアな感じを掴むだけでログアウトするのだった。
翌日まだ日が高くない早朝、僕は青い顔をしながらエナメルに防具に竹刀を担ぎながら通学路を歩いていた。
そうなのだ。どれだけ愚痴を友達に聞いてもらっても装備を整えてもネカマの神秘に衝撃を受けても友達が、バーサーカーでも結局現実逃避にしかなっておらず僕が先輩に嫌われたという現実は変わらないのだ。
重い足取りで学校に向かっていると、途中で肩を叩かれて振り返る。
「うわっ。チャットを送られたから、知っていたけど酷い顔だな」
「…ショーちゃん」
「まぁ、昨日の先輩に嫌われただけじゃ判らないから最初から話せよ」
「…うん」
僕の青い顔色に泣き腫らした後も相まってそこそこな付き合いのショウちゃんにもドン引きされるつつも、並んで通学中の間昨日の居残り練で起きた事をショウちゃんに話す。
「取り敢えず。様子見だな」
「えっ?様子見?」
「ああ、話しを聞いた感じお前に落ち度は無いと思う。なら、何か意思疎通にすれ違いが起きた可能性が高いだろう」
「つまりまだ僕の初恋は、終わってないってこと!!」
「ああ、まだ確定したわけじゃないが、可能性はあると俺は思う」
「流石だよショウちゃん!!」
何この人イケメンすぎだろ。僕が女の子だったら見逃さないね。
その後、色々と2人で作戦を立てているうちに正門前に辿り着く。ゴールデンウィークは、学年問わず多くの学生が部活動で投稿してくる為、校舎のあちこちから既に楽器や人の声が聞こえてくる。
僕達は体育館を通り過ぎ、校舎を跨いだ先にある道場に向かって歩き出す。
まだ部活開始時間よりも40分以上早く僕達以外剣道部員は、誰も居ないはずだった。
「「……」」
「……おはよう」
「「…おはようございます」」
何度か目を擦って瞬きを繰り返してみても僕の両目には、初恋のクールで小顔の中唯一大きい気怠げな大きい綺麗な黒目、綺麗な黒髪ロングの美少女先輩が、モップを掛けている手を止めてこっちを見ている。
「取り敢えず俺たちもモップ掛けするか?」
うん、うん。僕は首を縦に振り同意する。2人して残りのモップを取り出し、3人でモップ掛けしながら僕が思った事は1つ。
何この状況?翔わかんなーい
待ち伏せて様子見する対象が待ち伏せている予想だにしない状況に続き一緒にモップ掛けしている現状に混乱しすぎて、僕は考えるのをやめた。




