17話 現実逃避2
現在僕は勢いよく始まった着せ替えショーが始まり現在3着目の浴衣のような、単衣の着物を装備させられ、女子2人に酷評されるという散々な目にあっている。
「これは、どうでしょうか」
「まぁ、悪くないけどこの髪色に合わないんだよねー」
「まぁ、着物ってこんな落ち着き深い感じを持たせるのにこの派手な髪色ですからねー合わねー」
「「あははは」」
このように散々な言われようである。だが、女子2人に服を選んでもらう。ゲームの中とはいえ自慢できることではないだろうか?その為大した不満はないが、1つの疑問が浮かんだ為聞いてみる。
「あの?2人はさっきからビジュアルで選んでますけど1番は、装備時の交換が重要なのでは?」
2人は此方を呆れた顔で『これだから男子は』みたいな顔を浮かべられる。えっ?間違ったこと言った?と混乱しているとリンナさんから有難い言葉をもらう。
「まぁ、これは持論だけどゲームでも現実でも確かに性能は大事、だけど1番はそれ着てて気分が上がるかどうかでしょ。」
僕には衝撃が走ったそうだ。言われてみればそうだ。現実でも性能だけを追い求めた服は確かに存在するだが、一眼見ただけでオシャレな服が沢山あるのは、性能だけで服の優劣が決まらないという証拠だ。
自分の気分が上がる服を買う。これは1つの真理かもしれないと、ゲームで出会ったこの灰色髪の少女に僕は心の中で敬意を表し全力で自分に合う着物を試着していった。
「毎度ありーーーーーー」
「結局、髪色に近い赤紫の着物に落ち着いちゃったね」
「えー、そんなに変かな?僕はこの帯とかお洒落なグレーな物になったからいいじゃんか」
数分後、3人で意見を出し合いギリギリの合格を勝ち取った装備。
胴装備、桑の単衣着物
装備の解説欄に製作者であるリンナさんの名前が記載されており、鬼武者が落とした着物を直し聖なる桑で浄化染した着物。
腰装備、灰帯
布に狼系の魔物の灰を塗し鍛造スキルを使った物。狙った獲物が逃さないという狼の意思が作用したのか装備中帯が緩むことはない。
おまけの草履
アクセサリー以上の価値はない。
設定細かいなと感心していると僕の装備もまだまだ弱っちいが、成長している事がステータスを見れば伺えた。
ーーーーーー
PN:キル
LV:13
JOB:戦士
500ゴル
HP(体力):40
MP(魔力):10
STM (スタミナ):28
STR(筋力):21
AGI(敏捷):13
TEC(技量):15
VIT(耐久力):13+35
INT(知力):8
LUC(幸運):10
スキル
・リジェクト
・スプリット
・スラッシュ
装備
左右:今は名も無き刀
頭:旅人のバンダナ+5
胴:桑の単衣着物+20
腰:灰帯+10
足:草履
アクセサリー:無し
ステータスポイント:45
ーーーーーー
僕の理想とするかっちょいい侍像に一歩近づいたように思う。そしてこの高揚感、彼女達の言葉を借りるなら上がるという奴だろう。
しかしどうステータス振ってけばいいのだろうか?僕は歩きながらその辺を隣を歩いているアンネロゼに聞いてみる。
「姉御」
「?どうしたの」
「結構ステータスポイント貯まったと思うんですけどどう振ってけば良いんでしょか?」
アンネロゼは、少し唸った後無難な回答とを提示した。
「ビギナーが色んな人からそういうのを聞いて全部を中途半端に上げて器用貧乏になったって話はよく聞くから全部を均等にあげる必要はないから注意しなさい。そうだなぁー、あんた侍になりたいんでしょ?なら筋力と技量を中心に上げたら?刀の武器は装備者の技量値を参照して斬撃特性に補正とかあるらしいし」
「成程、筋力と技量かーありがとう。参考にしてみるよ」
「うん。頑張んな!!じゃ、装備も整えた事だし早速次のエリアのモンスターでお披露目するよ!!」
「オッス!!」
アンネロゼの言ったナイトレラの先に広がるエリアにある未知に心踊らせナイトロードを軽い足取りで真っ直ぐ進んだ。
暫く歩いて、次のエリアの市壁の門まで辿り着いた所で何やら騒がしい事で僕等は眉を顰める。
「姉御事件の香りがしますね」
「事件に匂いはついてないから、プレイヤー同士の揉め事?迷惑だから別の所で喧嘩してよ。もう!!」
遠くて揉めてるぐらいにしか分からなかったが、門に近くと段々はっきり見えて来る。
何やら、1人の女性アバターのプレイヤーと3人の女性アバターのプレイヤーが揉めているらしく、NPCの門番もどうしたらいいのかタジタジになっており、中々にカオスと言っていい状況になっていた。
うわーあれだ女子同士の血みどろの罵り合いが展開されてる奴だ。ゲームでもそんなんやるか普通?もう現実でいっぱいやったんじゃん。
そう思ってあそこを横切るのやだなーと考えているとアンネロゼは、少しため息吐いたのちに足を血みどろの戦場に向ける。その心意気は素晴らしいが、僕は思わず正気なのか聞いてしまう。
「あれ?仲裁するですか?」
「他の人に迷惑だし、マナーは知っている人がそれとなく教えてあげるもんでしょ?」
「この人かっけー」
僕は取り敢えずアンネロゼの後ろについて行く。僕等の接近に気付いたのか、揉めた4人も喧嘩をやめて此方を見る。
「何あんたら?」
「冒険に出ようと門の前に来てみたら、門の近くで喧嘩してる人がいたから五月蝿いし、迷惑だから仲裁してあげようと思って」
「はぁ?!余計なお世話なんですけど?」
「まぁ、まぁ何にキレてんのか知らないけど、落ち着きなよ」
「全身唐辛子コーデは、黙ってろよ」
アンネロゼの挑発的な態度に、美形なのに煽り度高い返しをしてきた3人組みのリーダー格っぽい女性。僕は、お前も混ざってどうすんだよ?!と思いつつ宥めようと口を開いたが、思いっきり暴言をはかれる。
こいつ斬っていいかな?僕は刀を実体化させようか迷っていると、アンネロゼに肩に手を置き落ち着かせられる。
「じゃあ、そっちの子何があったか話せる?」
「そっちの3人が、女性同士パーティー組もうって誘って来たんだけど、3人とも明らかにネカマだったから。笑っちゃったらこう」
「オッケーわかった。もうそうへんにね。この人達PK待ったなしの顔してるから」
思い出し笑いしそうになった女の子をアンネロゼがストップかけてくれたお陰で、中身は男外見は美女がブチギレて暴れ出さずに済んだ。
僕はというとネカマという事に、思考がフリーズしている。中身男?!ちょまえっまじ?そういう楽しみがあるのか?!
色々と衝撃を受けているとアンネロゼが、「プレイスタイルは、人それぞれの自由それを笑っちゃダメ!!そういう知識やマナーを持ってないとこういう要らぬトラブルを発生させるから気をつけなさい」と理性を失っている3人に変わって注意した事で、笑っちゃった子も「…気をつけるようにする」と言った事で和解した。
美女3人もアンネロゼの注意を素直に聞いた女の子を見て落ち着いたのか冷静さを取り戻し、迷惑量だと僕とアンネロゼさんに薬草とポーションを幾つか分けて街の中に消えていった。
僕もそういう人間がいる事とマナーとか本格的に学ぼうかな、と思わされる事件だった。
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