14話 ゴールデンウィーク
部活に入って3週間、4月が終わりスマホの日付にも5月と書かれる様になった。
さて最初のエリアボスを倒しフライとギルドを作る事をきめ今後のujでの計画を立てた僕は、今現実で地獄の修練を積んでいた。
時はゴールデンウィーク。それは5月の頭にある日本社会における連休イベント。ある者は家族と旅行にいき、ある者はたまの休日を家で穏やかに過ごす者もいるだろう。
だがしかし僕ら学生取分け運動部に所属している僕らの剣道経験が無くとも熱心な顧問は別の捉え方をしていた。授業が無い分土日同様の多めの練習時間をゴールデンウィークに入れられるじゃんと、そして今に至る。
連日の稽古で腕を上げる事も辛くなってきた3日目の昼頃、ショウちゃんとお昼休憩で漸くあの重い防具から解放された僕達は道場前のスロープに座り校庭の方を眺めながらお母さんが作ってくれたお弁当を突いていた。
「くっそー、また負けたー」
「落ち着け。着実に成長してるし、このまま行けば近い将来お前は勝てる様になるよ」
30分前、防具の中で汗を大量に流しながらも更なる成長を求め、強強な先輩や同期の経験者に相掛かり稽古で打ち合い、ボコボコにされていた事を思い出し悔しがる僕にショウちゃんは焦らない様いい含める。
しかし、それを聞いても今年の全中予選の個人戦枠を本気で狙ってる僕からしたらショウちゃんの言う近い将来が、遠い物に感じる。まだまだ努力が必要だと現実は突きつけてくる様で焦燥感が、止まることを知らない。何かしないと不安なのだ。
「僕は、今勝ちたいの!!ってあだだだ?!」
弁当の中身を早く食べて終え自主練習をしようと勢いよく立ち上がると痛みで身体の節々から悲鳴が聞こえ、転げ回る。前の2日間のハードな稽古のせいで前身筋肉痛になっておりアドレナリンが出ないとまともに動けない情け無い状態になっている。
僕の痛みで転げ回る姿に近くで食べていた同期の部員達も男女関係なく笑ってくる。
ちくしょう。お前らだって体中筋肉痛の癖にゲラゲラ笑いやがって。って栗花落先輩にも笑われてないよな?
僕は栗花落先輩がいた場所をチラ見するが、少し遠くの場所で女性部員達と混じって小さなお弁当を静かに食べていた。
なんか好きな人に笑われるのよりも見向きもされない方が辛いな。そんな事を柄にもなく思いながら僕はそのまま道場前のスロープで寝そべりながら快晴の空を見上げる。
そういや、同じ剣道部なのに栗花落先輩と全然話せないなー。まぁ、先輩の周りは杉原(姉)先輩含め団結ひてガードが硬いから喋りかけずらいんだよな。
「翔 そろそろ昼休憩終わるからいくぞ」
「あ、うん」
そんな事をぼんやり考えているとそろそろ地獄の再演が始まる事を教えられ、僕は身体を労わりながらゆっくり起き上がる。
「さぁ、いっちょ揉まれますかー」
僕は礼をちゃんとして道場の中に入って行った。
3時間後、「はいミーティング終わり、今日の練習はこれで終わり各自モップ掛けをした後戸締りして職員室に鍵を返しにくる様に」
「「「はい!!」」」
ミーティングが終わり気が抜けた僕は、その場で倒れ込み、生きた屍とかしていた。何だろう夏の大会に向けて段々ハードになっていく稽古を全力で喰らいついていくと毎回こうなってる気がする。
「今日も1番気迫があったな宮地大丈夫か?」
「先生、完全下校までまだ時間ありますよね?」
「ん?あるがどうした?」
「掃除と戸締りやるので居残り練、やらせてください」
「せめて起き上がって頼んだらどうだ?」
「いえ、ちゃんと見てください!!」
「なんって?!五体投地だと?!」
僕のいつもの脱力具合に顧問の先生が近づき労いの言葉をかけてくる。だが、今日は午前から開始した為、平日より早く終わっており、まだ完全下校まで1時間以上あるのだ。周りと差をつけるなら絶好ののタイミングだ。
「土下座より上の頼み事はあるか聞いてきたから何かと思えば……」
「あいつ絶対Mだよ……」
周りから土下座より更に上の五体投地を繰り出した事も含め何やらドン引きされているが、強くなる為だ構うものか、五体投地は、崩れ落ちたら偶々近い状態になってたからやったが、かなりの効き目を発揮した。
「先生感動したぞ宮地!!お前の気持ちを組んでやりたいのは、山々だが、道場の鍵の戸締りを1年生にやらせる事は出来ないんだ。先生もこれから会議があるからのこれんのだ。すまんな」
「そんなー」
疲れてるのに僕の居残り練に付き合ってくれる人が居るわけないよなと、僕が落胆の意を示す為今度こそ完全なる脱力を披露したその時、救いの女神が現れた。
「あの、先生私も居残り練やってもいいですか?」
栗花落先輩の意外すぎる行動にこの場にいる全員が、驚愕の顔を晒すのだった。
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私栗花落皐月は感情を上手く表に出せない人間だという自覚がある。表情筋が死んでいるのかってくらい動かず周りの人に冷たい印象を与えてしまっている。
きっと私だったら私みたいな人間と友達になりたいだなんて思わないだろう。
だから私は周りの人に恵まれていて甘やかされているという自覚もある。
愛想が悪くても気にかけてくれる杉原達や、個性だと理解を示してくれた先輩。笑顔で応えてあげられずとも会えば必ず挨拶してくれる後輩。道場の晴剣館の人達もそうだ。私は本当に恵まれている。
しかし、だからといってそれに甘えてばかりではいられない。中学は良くとも高校、大学、社会へ進んで行った時、果たしてこの全てで理解を得られるかと聞かれれば答えはNOだろう。
今のうちに練習し克服しなければならない。当初の目標は、人並みの愛想笑いや挨拶ができる様になる事。今まで周りに許容されやって来なかった事を今からやるのだ凄い出遅れた感じがするのは否めない。
周りの人は遥か先にいて自分は一生同年代の子達と同じ様に笑ったり冗談を言える様になるのは10年以上かかるんじゃないかという不安もある。
だけど最近心の同志を見つけた。同じ部活で同じ道場の後輩の男の子だ。
彼は剣道の経験はなく中学から始める子達の内の1人だったけど、その子達の中で誰よりも貪欲で兎に角ガムシャラで暇さえあれば同級生の進藤君にアドバイスを貰いに行ったり素振りしたりしていてる。
朝練なんかは、いつも1番に来ていて顧問に早く来すぎだと怒られていたのをよく覚えている。
そしてその時顧問に言っていた言葉も
「僕は経験者の人に何年も出遅れてるから、少しでも早く来て竹刀を振らなきゃいけないんです。じゃないといつまでも追いつけないじゃないですか」
多分この部内で1番意欲がある子は彼だろう。だからこそ、遅れた物を取り返そうとする者同士として勝手に同志認定してしまった。
彼を見ていると私も頑張らないと!!と思わせてくれる。だからだろうか、彼が居残り練をしたいと言い出した時。手を貸したくなって手を挙げたのは
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