このあと事なきを得ましたが二度と悪ノリはしません
友達に「まだ行ってないのおまえだけだよ」とせっつかれて、慌てて先輩のお見舞いに行くことにした。
着いた病院の一室、先日事故にあって入院した先輩はベッドのリクライニングを上げ、上半身を起こして本を読んでいた。来訪に気づくと、その本を閉じ、張りのある声で挨拶をしてくれて。
怪我に巻かれた包帯やガーゼは痛々しいし、機械や何かの管が繋がれているのはわかるけれども、顔色もよく、元気そうでよかったと胸を撫で下ろす。
見舞い品として、テレビカードを渡すと感動したようにお礼を言われた。いっぱい使ってください。これ、入院には必需品ですもんね。
置いてあるパイプ椅子に腰掛けて、近況報告と雑談。来るのが遅くなったのを謝ったら鬱陶しいとばかりに鼻で笑われた。経過も順調みたいで何より。
そんな屈託のない会話の最中、先輩が外を見ながら、冗談交じりの声音と仕草で「あの木の葉っぱ、残っている最後の一枚が落ちたら自分は死ぬんだ……」とか下手な演技をするものだから。
「そんなわけあるかーい」と窓をスパーンと開け、手をうんと伸ばして、ちょうど一枚取り残されていたその葉をむしり取ってやった。
途端。
けたたましく鳴り響く機械音。読みかけの本がばさりと床に落ちた。
「センパイ?」と訊ねることも出来ないまま、頭の上にはエクスクラメーションマークとクエスチョンマークが乱舞。冷や汗を滝のようにかきながら「いやいや、そうはならないでしょう。でもなってますね、どうしたものか」と心の中で突っ込む余裕はあるようで。
もしかしたらぼくは罪に問われるのだろうか――――じゃなくて! 葉っぱ握りしめてる場合じゃない!
と、とりあえず、ナースコール!




