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だから曖昧って嫌い

 



 遅れるからちょっと待ってて、と言われて、私はいつまで待てばいいんだろう。今回の〈ちょっと〉は滅茶苦茶長い。かれこれもうどれだけひとりでいることやら。私の〈ちょっと〉と彼女の〈ちょっと〉は違うのだと改めて思い知らされた気分。

 待つのは苦手でも嫌いでもないから特段つらくはないのだけれど、粗末に扱われている感じがして、テンションが急降下し続けていく。昨日の夜から楽しみだった反動がまたものすごい。トランポリンで火星まで飛べそうなくらい。

 おざなりだ、私はその程度の立ち位置なんだと思い知らされる。彼女にそんなつもりはなくても私はそう感じる。今は主観的かつ個人的な私の話をしています。しおしおに萎えてきているので神様は速やかに私に水を与えてほしい。精神への栄養をください。

 ため息しか出ない。〈ちょっと〉ってなんだ。私の〈ちょっと〉は五分からせめて十五分の感覚なのだけれど、彼女の〈ちょっと〉はそれの何倍にもあたるらしい。いつものことだと安易に了承などすべきではなかった。愚かな自分を殴りたくなってくる。ソシャゲもSNSの巡回も大して面白くないので、辞書アプリで〈ちょっと〉を調べてみようと思い立つ。暇つぶしの一環である。――少ない。それほど著しくない。少し。しばらく。わずか。ある程度――そんなことばかりで明確な基準がないのだとわかった。

 そうかと携帯端末を閉じた。辞書でも示されていないのならどうしようもない。

 行き交う人々を眺めてみても、その笑顔が憎い。流れに乗れず、待ちぼうけて取り残された疎外感だけを味わう。人間観察をしていても、大抵の人間は判を捺したようにほぼ同じで没個性だ。三度ほどまばたきをしたら邪魔な人波を裂いて、彼女がモーセのごとく来るのが見えたりしないだろうか。

 ……ただ、これだけもやもやと不安を溜めておきながら「ごめん、お待たせ」と彼女がようやく私の前に姿を現したとき、「大丈夫だよ」と私は返すと思うのだ。そんな罪悪感も何も持っていないような彼女を笑顔で許すはずなのだ。

 私は自分が何故そうするのか、彼女を咎めもせずに、さも平気だというフリをして見栄を張ってしまうのかわからない。

 誰か教えてほしい、待ち人がまだ来ない間に。

 ちょっと、泣きたくなってきた。




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