表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/46

家族の誓い

「断る」


 俺は首を横に振った。


「大人の都合で子供を振り回すのは可哀想だ。どうするかは本人の意志を聞いてからだ」


「クロは優しい子なの。悪戯に周りへ危害を加えるとは思えない。万が一の場合があったら、その時は――」


「俺とダイアナで、クロを護る」


 俺とダイアナは手を繋ぎ、正面からエイラを見つめる。

 俺たちの言葉を受けてエイラは――


「おまえたちなら、そう言うだろうと思っていたよ」


 苦笑を浮かべて緊張の糸を解いた。


「確かめるような真似をして悪かったな。だが、私にも立場がある。断られたからと言って、はいそうですかと引き下がるわけにはいかない」


「規則に縛られるのが嫌いで森を出たエイラが、まさかお役所仕事とはね。人間……いや、エルフも変わるもんだな」


「仕方ないだろう。エルフの女王ロリッサさまは絶世のロリなんだぞ? 名前からして反則だろう? そんな女王に猫なで声で『お願い。世界の危機を救ってニャン』なんてお願いされてみろ。濡れるっ!」


「濡らすな!」


 クロを寝かしつけておいてよかった。エイラの話を聞かせたらクロの知性が下がってしまう。


「とりあえずは神殿の調査を進めるべきだろう。儀式の件も憶測に過ぎないからな」


 そんなエイラの提案にダイアナが困ったように唸る。


「うーん。だけどあの神殿、ギルドの調査が入ることになってるのよね。相手と鉢合わせないために先に向かおうとしたんだけど」


「クロが熱を出して倒れちまったからな。すでに探索者(エクスプローラー)がパーティーを引き連れて出発してる頃だろう」


「それなら心配はいらん。ギルド経由で調査依頼を出したのは私だ」


「えぇっ!? あの依頼主ってエイラだったの?」


「ああ。これでも特級クラスの探索者(エクスプローラー)だからな。シズよりランクが上だ。敬うがいい」


「へいへい。特級さまはお偉いですね。靴でもお舐めしましょうか?」


「おまえ、そういう趣味があったのか。付き合うダイアナも大変だな……」


「ただの皮肉だよ! 俺はノーマルプレイしかしない!」


「ワタシはちょっと強引なのが好きだけどね」


「ダイアナさんっ!?」


 まさかの告白にツッコミを入れてしまう。

 そうか。それなら今度、ちょっとハードなプレイに挑戦してみよう。


「案内役も兼ねて村にいる高ランクハンターを募るつもりだったが、ちょうどいい。おまえらを連れて行こう」


「ワタシは残るわ。エイラなら精霊力(マナ)の感知もできるでしょ。クロの看病も必要だし」


「いいのか? あんなに調べたがっていたのに」


「正直、迷ったけど……」


 俺の問いかけに、ダイアナは苦笑を浮かべて天井を見上げた。


「今はクロのそばにいたいの。不安なときほど人肌が恋しくなるものだから」


「そっか……」


 ダイアナも母親らしいことを言うようになった。クロと接してるうちに母性が目覚めたのかもしれない。


「わかった。それなら私とシズで調査を行うことにしよう」


 エイラは頷くと、壁から背中を離して2階へ通じる階段へ向かった。


「今から遺跡に向かうと到着する頃には日が暮れる。明日の朝、改めてギルド前に集合だ」


「おいこら待て。どこへ行くつもりだ。その先は寝室だぞ。俺と一緒に寝るつもりか」


「なんだシズ。可愛い嫁さんがいるのに火遊びか? すまないがおまえは私の趣味ではない。10歳は若返ってから出直してこい!」


「出直すのはおまえだ! ドサクサにまぎれてクロに夜這いをかけようとしていただろ!」


「ドサクサになど、まぎれていない! ごくごく自然な流れだ! クロの身に何が宿っているかわからないんだぞ。身体の隅々まで調べる必要がある。せっかくなので朝までコースでお願いします。延長料金は前払いでどうだ!」


「どうもこうもない! いますぐ帰れ! この万年発情期のヘンタイエルフ!」


 俺はエイラの身体を抱きかかえると、遠慮なく外へ放り投げた。


 エイラは腕も確かだし、黙っていれば美人なのにな。

 天は二物を与えずとは、このことだろう……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ