73「オマエら態度変わり過ぎじゃね???」
「ゆ、ゆゆ、勇者様!?」
これはカーティス。
「異界からの召喚。なるほど、発想のレベルの違いの根幹はそこでしたか」
とベネディクト。
「あの時の言葉は真実だったのですか……」
グレッグにはギルド襲撃した時に勇者って名乗ってたな。そういえば。
「まあ、聖剣泥棒な俺だけども、どうぞひとつよしなに」
と、俺が右手チョップを顔の前に持ってきて「よろしく」の意を示すと、
「世界を正すという志、まことの勇者様にしか持てぬものです」
おい、急に畏まるな。
「こちらこそ、いずれも脛に傷持つ身の上ですが」
「よろしくお願い申し上げます」
キミタチ、手首の関節外れてない? 掌返しすごくない? くるっくるやん。
はじめから素直に名乗ってた方が手っ取り早かったのか、ひょっとして。
「とにかく、そういうわけなんでよろしく!」
肩書って大事だな。
今までほぼ「職業:ならず者」状態だったし。
ま、それはさておき。
「ええと、話し戻したいんだけどいいスか?」
ギルド長たちは背筋を伸ばして傾聴の姿勢を取った。
「奴隷剣闘士――まあ大体は獣人だよね、彼らには仕事を紹介するつもりでいる。希望があればそれを支援するけど、基本的には自警団をやってもらうつもりでいる」
「武力、つまり軍隊を持つという意味ですか?」
カーティスの問いに俺は曖昧に頷いた。
「まあ、そうなるのかな。街の中の安全を護ることが第一。それから、外敵の脅威からも」
「外敵の脅威? 魔族ですか?」
「いや違う。西は気にしなくていい。むしろ敵は東だと俺は考えてる。シューキョーでまとまった小国連合だ」
あのメンヘラ女を崇め奉るような連中だ。まともじゃない。特に巫女長。
「それから最後に忠告だ。悪事は働くなよ。自分だけが儲けようと思わないことだ。その方が最終的な利益はデカくなる」
「肝に銘じます」
なんかすごく素直になったな。
やはり勇者の肩書か……。肩書で人を判断するなよ。もうどうでもいいけど。
「ところで、タクシ殿は何をなさるので」
「しばらくは大会組織委員会のアタマをやるけど、それもそのうち行政府に組み込む。その時にはフェイのオッサンあたりに責任者をやってもらおうと思ってる。獣人でも魔族でも、できる奴は評価する。そういうことだ」
「その後、タクシ殿は?」
「いや、俺はやることがあるから」
「やること、ですか」
グレッグは神妙な顔をした。こいつには拷問した時に話してあるからなあ。
「この歪んだ世界を変えるつもりだ。そのためのモデルケースなんだ、この中央自治区は。だから頼む、力を貸して欲しい」
俺は両手を膝について、しばらくの間、深く頭を下げた。
以下、次回! これでひと段落ってところかな。




